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フェルメールは17世紀に活躍したオランダ,デルフト出身の画家です。おそらく日本で最も人気のある絵は,次の「真珠の耳飾りの少女」ではないでしょうか。




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この絵は,オランダのハーグにあるマウリッツハイス美術館に展示されています。私がこの美術館に参った時には,この絵の前でしばらくたたずんで,離れられなかったことを覚えています。



実は,マウリッツハイス美術館が大規模な工事を行うことになり,それに伴いこの絵の貸し出しが行われ,2012年には日本で見ることができるそうです。きっと大混雑となることでしょうけれども,是非今度は日本で見に行きたいと考えております。


マウリッツハイス美術館には,17世紀を中心とした多くのオランダの古典的な絵が展示されているのですが,どの絵にも当時の生活が生き生きと描かれており,その当時の社会で精一杯生きていた方々の姿を,絵として21世紀の人々が見ているということ自体に感激したことを覚えています。



フェルメールの絵は30数点しか現存しておりません。そのいずれも繊細で素晴らしいものです。オランダのアムステルダム国立美術館に所蔵されている次の「牛乳を注ぐ女」も,とても繊細で素晴らしい絵ですね。



フェルメールについては,世界中に残されている全ての絵を実際に美術館で見た様子が,写真付きでまとめられた朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』(集英社新書ヴィジュアル版,2006年)が発行されています。「フェルメールと共に世界を巡る」という,とてもうらやましい経験をまとめた,とても面白い本ですので,ご関心をお持ちの方はお読みください。





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さて,オランダのハーグには,国際司法裁判所と国際刑事裁判所があります。国際司法裁判所は,例えばフランスが太平洋で核実験を行おうとしているのを,環境悪化を理由として,オーストラリアとニュージーランドがその差し止めを求めるなど(核実験事件国際司法裁判所1974年12月20日判決),国と国の間の訴訟が行われる裁判所です。現在の所長は日本人の小和田恆氏です。




国際司法裁判所の裁判官には,現在の小和田氏だけでなく,田中耕太郎氏,小田滋氏の日本人が歴任されています



小田滋氏は,1976年から2003年までの間,27年間にわたり国際司法裁判所の裁判官を務められました。核兵器の使用・威嚇が国際法上違法ではないかについての勧告的意見を出すことがWHOと国連総会からめられた1996年の事件において,国際司法裁判所は「核兵器の使用は一般的には国際法の規則に反するが,国家の存亡にかかわる自衛の極限状態においてはこの使用が合法か違法かを確定的に判断することはできない」と判断しました。



この勧告的意見が出される際には,日本人の小田滋裁判官の判断が注目されましたが,小田滋裁判官個人の立場としては,この勧告的意見を出す要請に答えることそのものに反対というものだったそうです。日本人であることと,独立した裁判官としての立場との間で悩まれた経緯が,裁判官退官後に出された著書で書かれていますので,引用させていただきます。



小田滋『国際法と共に歩んだ六〇年 学者として裁判官として』(東信堂,2009年)346頁以下



「この事件の最終段階での合議の際に私は悩み通しでした。私としてはもちろん核兵器使用が合法などと言うのではありません。しかし,こうした私の立場が日本では判ってもらえずに非難の矢面に立たされるだろうことは予測できましした。表決の瞬間まで迷い抜いたのです。裁判官会議での上席裁判官としての私のヴォートの順番はほとんど最後ですが,しばらく時をおいてやっと私が『ノー』と言った時に各裁判官の間でどよめきが起こりました。私が『イエス』を言えば八対六で可否同数は避けられたのです。」



小田滋裁判官は,司法権としての国際司法裁判所が,政治的な側面の強い判断をどこまで行うべきか,という観点から,勧告的意見への回答を行うべきではない,との立場に立ったものでした。このお話は,裁判官の独立,社会の意見と個人の意見との関係について,とても示唆深いものだと思うのです。











さて,上述しましたフェルメールの絵は,お話しましたように世界中に30数点しか残されていない貴重なものですので,しばしば絵が盗難に遭ってきました。盗まれた絵がテロリストの取引に使われたこともあるのです(フェルメールの絵の盗難と社会的な背景についてまとめられたものに,朽木ゆり子『盗まれたフェルメール』(新潮選書,2000年)があります)



実は,1990年にボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から,フェルメールの次の「合奏」という絵が盗まれ,現在でも行方が判っていません。




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この「合奏」は,今どこにあるのだろう,という点については諸説があるのですが,朽木氏によりますと,とても有力な証拠があるそうなのです。『芸術新潮』2008年9月号(新潮社,2008年)84-85頁掲載の朽木ゆり子氏の記事「盗まれたフェルメール」を一部引用させていただきます。



「1990年3月17日深夜(18日未明),ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館で起こった美術品窃盗事件は,当時も,そして現在でも史上最大の絵画盗難事件である。フェルメールの『合奏』,レンブラントの油彩画2点とエッチング1点,ドガの小品5点,マネ油彩1点など,盗まれたのは合計13点。被害額は,現在の貨幣価値で3億ドルとも5億ドルとも言われている。



この事件の不思議な点は,美術館の守衛2人が犯人2人(変装していたが)を目撃しており,事件直後は手がかりも十分に見えたのに,すべてが行き詰まってしまったことだ。すでに窃盗罪は時効。FBIは絵の所有者への追訴免責を表明しており,作品の返却につながる情報提供者には500万ドルの報奨金が支払われる。にもかかわらず,有力な情報はなく,盗まれた絵が戻ってくる可能性はまったく見えない。



一つだけ,非常に信憑性の高い情報提供者とのやりとりがあったことが,数年前に明らかになった。


1994年4月下旬,ガードナー美術館は1通の手紙を受け取った。この手紙の書き手は,盗まれた絵画の特徴や盗難に関する法律の国際的違いなどに精通しており,犯人と近い関係者の可能性が高いとされた。絵の返還仲裁の見返りとして要求されたのは,現金260万ドル,そして窃盗犯と絵の持ち主に対する追訴免責。そして『もし美術館が取引に興味があるなら,5月1日付けのボストン・グローブ紙の外国為替欄で,リラ・ドルの変換レートに1という数字を挿入せよ』と書いてきた。そこで,美術館と警察は同紙に要請し,指示どおり実際のレートの少し前に1という数字を挿入した。


翌週,美術館は2通目の手紙を入手した。内容は『美術館が取引に興味を持っている点はわかったが,警察・FBIなどが積極的に動き出したことに憂慮している』というものだった。書き手は,下っ端仲介者の逮捕を狙うようなら絵は返ってこないだろう,と脅した。さらに,この交渉が続かずに終わったとしても,絵の在処のヒントとなる情報を美術館に提供するとも約束したが,それっきり連絡は途絶えた。・・」




さて,朽木氏によりますと,実はこの手紙の中には,盗まれた絵は「絵が盗品だと知らない買い手が,法的な所有権を主張できる国」に保管されている,という一文があったそうなのです。



実は日本の民法には,動産の即時取得という規定があります(民法192条,1

93条)。動産取引の安全を保護するために,動産(不動産に対する概念です。絵も動産です。)の売主が真の所有者ではないことを知らなかった買主は,その動産の所有権を有効に取得することができる,というものです。



民法192条

「取引行為によって,平穏に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する。」



民法193条
「前条の場合において,占有物が盗品又は遺失物であるときは,被害者又は遺失者は,盗難又は遺失の時から二年間,占有者に対してその物の回復を請求することができる。」



上に記載しました日本の民法193条では,その動産(絵)が盗まれたものであった場合には,その真の所有者からの返還請求を特別に認めているのですが,それも,盗難から2年経過すれば請求ができなくなるのです。(2002年に,文化財の不法輸出入等禁止条約[ユネスコ条約]が批准に伴い日本にも効力が生じたことにより,盗まれた国の返還請求期間は10年となっています)。その結果,盗難から2年経過することで,購入時には盗品と知らなかった買主は,その絵の正式な所有者になることができるのです。



そう,ひょっとすると,フェルメールの「合奏」は,日本にあるのかもしれないのです。




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