弁護士作花知志のブログ

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昨年から大きく報じられていた,将棋連盟による所属棋士に対するコンピューターソフトの不正使用疑惑を理由にした出場停止処分について,その後内部の調査委員会が設けられて調査が行われた結果,不正行為はなかった,とされた事件は,1月18日付で将棋連盟の谷川会長が責任と取って辞任する事態となりました。

 

 

 

 

昨年,この問題が報じられた当時に書きました「将棋連盟と疑わしきは罰せず」でもお話しましたように,この一連の出来事についての報道を拝見して,法律家として驚きを感じているのは,「不正があった疑いがある」とされた棋士の方は「不正をしていない。」と主張し,将棋連盟の調査でも不正があった確実な証拠を得たわけではなかったにもかかわらず,その疑いを持たれた棋士の方に対して,挑戦者として決まっていた竜王戦と,さらには昨年末までの対局を認めない処分が課された,ということです。いわばそれは,「疑わしきを罰した」処分であったわけです。

 

 

 

 

ところが,その後設けられた内部調査委員会の調査により,そもそも不正行為の存在の理由とされた「長時間の離席」の事実なども認められなかった,ということが分かったのです。それは,最もあってはならない結論であり,子供達から年配者に至る多くの方々が夢を抱くあこがれの存在である将棋連盟がこのような判断をしたことを,とても残念に感じています。

 

 

 

 

「疑わしきは罰せず」の法原理は,「この世に完全な人は存在しない」という,人類が長い歴史を経てたどり着いたとても悲しい現実を前提にしたものです。人が完全でなく,判断に過ちが生じる可能性がある以上,適切な証拠による確実な事実を把握した上での処分ではなく,不確実な証拠による憶測に基づく処分が行われることは,判断に誤りが生じる可能性がある,ということを意味することです。それは,私自身も将棋を愛する一人としてあえて申しますと,「どんなに将棋が強い人であっても,完全な人ではない」ことを意味しているのです。

 

 

 

 

さらに申すと,今回の処分は,疑いを持たれた方としてはせっかく得ていた竜王戦の挑戦者としての地位を,その意思に反して団体として奪った,ということを意味しています。プロ棋士にとって竜王戦のタイトル挑戦は,まさに「自ら選択したプロ棋士という職業の遂行であり,究極の夢の1つ」であります。それはまさに,「基本的人権」である,ということができるはずです。

 

 

 

 

今回行われた処分は,その基本的人権を団体の多数決で奪う,というものでありました。それは,「社会には,多数決では奪うことができないものがある。それが基本的人権である。」という,人権思想にも反するものであったように感じています。

 

 

 

 

多くの方が夢見る存在である以上,その夢を壊すようなことは決して行ってほしくない,と思います。内部調査委員会の結論としては,不正行為は存在しなかったけれども,今回の処分は非常事態でやむを得なかった,というものであった,と報道されていますが,その結論は裁判所を拘束するものではありません。今後,この事件がどのように社会で解決されるのかを,法律家として注目していきたいと考えています。

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