+ インシテミル【米澤 穂信】 | around the secret

+ インシテミル【米澤 穂信】

 初めての作家さんのミステリを読む時は、謎解き以前に作者の力量を推し量るのに手を取られてしまう。

 細部まで読み込んだのに、「実はそこまで考えてませんでした~」という噴飯モノのオチに出会った負の経験の為せる技。


 最初は主人公が「突出した能力もなく、受け身でボヘー、でも何故か運が良く、謎の美少女とご縁があってメリット受けまくるであろう」典型的なラノベ主人公(男)に見え、キャラが立つ前の応募者全員の志望動機や、暗鬼館という名称や、阿藤先生、伊藤先生、宇藤先生というチャチ臭さも手伝い、半ば消化試合で読み進めたが。


 途中で主人公が隠してた爪を出し始める辺りからは、電車乗り過ごすほど面白かった。ちゃんとミステリとして読み応えある。
 
 感情と私情だけで隙あらば事態を悪化させようとする若菜のウザさもミステリものにはお約束のキャラで、真実よりも安心を選ぶ渕さんの気持ちも共感出来る。


 ラストは犯人が主人公の性格を最初から計算に入れていた所にトキメキつつも、みんな生きてて欲しかったなぁ。譬えジエンドの後の部分だったとしても、安易な因果応報よりも背負って生き続ける方がズッシリくるから。


 それにしても何だろう、このハードカバーの可愛らしい装丁は。