○ロナルド・ブルーナー・ジュニア、プリンスについて語る (パート1) | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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○ロナルド・ブルーナー・ジュニア、プリンスについて語る (パート1)

 

【Ronald Bruner Jr. Talks About Prince (Part 1)】

 

プリンス。

 

2000年以降、すでに50回以上さまざまなアーティストのサポートで来日をしているというロスアンジェルス音楽シーンの売れっ子ドラマー、ロナルド・ブルーナー・ジュニア。ジャズ・ドラマーだが、R&B、ヒップホップ・アーティストたちとの交流も多い。一足先に人気となっているベース奏者、サンダーキャットの実兄でもある。

 

今年自分名義で初のCD『トライアンフ』を出し、50回以上来日していながら自分名義としては初ライヴを行った。公演前日の2017年5月25日(木)渋谷HMVでのプロモーション用トークショーに行ったところ、「(多くのサポートをしてきたが)今までで一番印象に残ったアーティストは誰か」という問いに「プリンスだ。彼との話は山ほどある」と答えた。その時は誰もそれ以上のつっこんだ質問をしなかったが、元々「ソウル・サーチン・レイディオ」用にインタヴューする予定だったこと、また、「レスト・イン・パープル」も近づいていたこともあり、インタヴューではプリンスについてフォーカスして聞き、動画も撮って「レスト・イン・パープル」でも紹介することにした。インタヴューは2017年5月28日(日)、丸の内コットンクラブでのライヴ前。僕はライヴ自体は26日(金)にブルーノートで一足先に観ていた。

 

ライヴ・レポートはこちら↓

 

ロナルド・ブルーナー・ジュニア~爆発するドラム @drummaboiblue1

2017年06月06日(火)

http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12280889620.html

 

ライヴ前なのでインタヴュー時間は30分弱。10分程度プリンスの話を聞き、残りで「ソウル・サーチン・レイディオ」用コメント、インタヴュー、その他、というイメージで臨んだのだが…。

 

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RBJ。

 

ロナルド・ブルーナー・ジュニア(Robert Bruner Jr.)のことをプリンスは、その頭文字からRBJと呼んだ。RBJは、趣旨を告げるとカメラに向かって話し始めた。

 

「ハロー、今日は最初に僕がプリンスと出会って初めて仕事をすることになった話をするよ。以後、彼とは素晴らしい関係を築けたんだ。プリンスのことは大好きで、リスペクトしている。一緒にプレイすることができて感謝している。彼も僕のことを気に入ってくれたみたいで、『僕は彼のダイアモンド・ベイビー』と言ってくれた(笑)」

 

プリンスの元で仕事をすることになったきっかけ。

 

「あるときベース奏者の友人から電話がきた。(たぶん、2012年の11月頃と思われる)彼女が言うには『あなた、プリンスから電話があるわよ。私があなたのことを話したら、プレイを聞いてみたいって』。僕は『ああ、わかった。(電話してくれるのは)いつでもいいよ』と伝えた。するとそれから1時間後くらいに、プリンス本人から電話が来た。彼は『明日、ミネアポリスに来られるかな』という。スケジュールを見て、『OK、行けるよ』と答えた。それで翌日ミネアポリスに行った。(空港には)いい車を用意してくれ、ホテルも準備してくれて、そこにチェックインした。だけど、それ以来、何も連絡が来なくなったんだ。で、僕はそのホテルの部屋に一週間缶詰になった。連絡は何もなく、家に戻るフライトのチケットもない。一体いつになったら連絡があるのかな。もう明日あたり、自力でLAに帰ろうかと思っていた。そう考えたとき、テキストメッセージ(メール)が来た。『明日午後1時、ホテルの下に来てくれ』(笑) 『OK、行くよ』と答えた。この時点でけっこう僕は頭に来てたんだ。(一週間もほったらかしだったから) 翌日時間になると、下に車が迎えに来てくれ、そのままペイズリー・パークに連れていかれた」

 

「バンドのメンバーは何人か知っていたので、スタジオでだらだら時間をつぶしていた。プリンスのアシスタントが、『もうすぐプリンスがここに来る』と言った。僕はその時点で、プリンスは僕について、知り合いからの情報で少しは知っているだろうが、それほど詳しくは知らないだろうと思っていた。なにしろ、そのペイズリー・パークで会ったそのときが、プリンスが僕のパフォーマンスを見る初めてだったからね」

 

左からランディー・エマタ(k)、RBJ(d)、The Soul Searcher、マシュー・テイラー(b)

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フラストレーション。

 

「ペイズリー・パークについて1時間くらい経ったかな。そして2時間が経過した。3時間経過した。だが彼は来ない。僕はまたもうホテルに戻ろうと思った。もうほんとにフラストレーションがたまっててさ。するとそう思った瞬間、プリンスがやってきた。腕で挨拶をして、ハグをして。プリンスは言った。『RBJ(ロナルド・ブルーナー・ジュニアの頭文字、プリンスは彼のことをこう呼ぶ)、君と会えてうれしい、君のプレイが聴けて嬉しい』と」

 

「プリンスは僕に尋ねた。ビリー・コブハムの『ストラタス』(という曲)を知っているか。やってみないか、と。僕は『もちろんできるよ』と答えると、『本当にできるのか、本当か』という」

 

スペクトラム 「ストラタス」収録

ビリー・コブハム

ワーナーミュージック・ジャパン (2014-06-25)

https://goo.gl/EsfggU

 

「ストラタス」楽曲

https://www.youtube.com/watch?v=5aw2rM0w-pc

 

プリンスはそれまでにもこの「ストラタス」をライヴ、特にジャム・セッションなどでやっていたようだ。それで、2013年1月にミネアポリスのダコタ・ジャズ・ハウスでのライヴでも、これをやろうと考えていた。実際、演奏された。

 

 

RBJが続ける。

 

「僕はプリンスが僕の人生であらゆる音楽を聞いていたことを知らないだろうと思っていた。(プリンスは僕が『ストラタス』など知らないだろうと思っていたとRBJは感じていたのだろう) そして、僕たちはみんなでその曲を演奏し始めたんだよ。プリンスはドラムソロの前に行くヴァンプ(ブリッジ)の部分をやり始めた。それで、僕は完全に狂ったように、ドラムソロをやってみせた。曲がドラムソロで終わるんだが、僕の派手なソロが終わった瞬間、『わかったじゃあ、明日会おうな』と言ってギターを放り投げてその場から瞬時に立ち去って行ったんだよ。そうして知り合いとなり、以来ベスト・フレンド(親友)となったんだよ」(笑)

 

つまり、この演奏を見て、プリンスはロナルド・ブルーナー・ジュニアは使えると思ったのだろう。ある意味、「ストラタス」のドラムソロを見せた瞬間、彼はプリンスのオーディションに合格したわけだ。

 

ちなみに、ロナルド・ブルーナー・ジュニアのドラムスは、これまでの系譜だとデニス・チェンバースのような流れを汲むもので、とにかく叩く、激しく派手に叩くスタイルだ。

 

プリンスが「ストラタス」のようなジャズ作品を普通に聴き、カヴァーしてプレイしているところが実にいい感じだ。

 

(この項続く)

 

ロナルド・ブルナー・ジュニア~トライアンフ (現時点で日本盤のみ)

https://goo.gl/oqvXQu

 

ENT>Bruner Jr., Ronald

PRINCE>Bruner Jr., Ronald