★# (続・マッスル・ショールズ)「パッチェス」「パッチズ」の訳詞~父から息子への遺言 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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★# (続・マッスル・ショールズ)「パッチェス」「パッチズ」の訳詞

【Patches : Japanese Translation】

訳詞。

昨日のブログで、クラレンス・カーターが歌う「パッチェス」について書いた。英語詞をそのままのせておいたが、やはり、何度か聞いているうちに日本語にしておこうと思い、今日はその訳詞をご紹介する。

やはり、この悲しい歌に悲しい曲調なのだが、最後にはこう希望みたいなものがあって、ポジティヴな気持ちにさせられる。これはいい。

ちなみに、日本語の表記は「パッチズ」が多いのだが、僕にはヒットした当初から「パッチェス」に聞こえる。つぎはぎのこと。パッチをつける、パッチをあてる、などと使う。ここでは、つぎはぎだらけの服を着ていた主人公がみんなから、「パッチェス(つぎはぎ君、つぎはぎ坊主)」みたいな感じで呼ばれている。まあ、ニックネームといえばニックネームか。

この曲はこんなストーリーだ。実によく3分少々に収められている。

~~~

Patches
「パッチェス」(ジェネラル・ジョンソン、ロン・ダンバー作)(クラレンス・カーター・歌)

アラバマの森の奥深くにある農場。
僕はそんなところに、生まれ、育った。
僕が着てたものはボロボロでつぎはぎだらけだったから、
みんなに「つぎはぎ(パッチェス)坊主」と呼ばれた。
パパにもそれをからかわれたんだよ。
でも、パパも一生懸命がんばっていたから、
実は僕がそう呼ばれることに心を痛めていたんだ。


僕のパパは本当に素晴らしい人間だった。
学校にも全然行けなくて、教育もなかったけど、
いつもシャベルを持って働いていた。

景気が悪くなっても、パパはやりくり上手だった。
畑仕事での雀の涙ほどの稼ぎで、家計をなんとかしていた。

だけど、人生の歯車がパパを地面にたたきつけたんだ。
何度か起き上がろうとしたけど、
そのたびに打ちのめされてしまった。

ある日、パパに死の床に呼び出された。
パパが僕の肩に手をかけ、目に涙を浮かべこう言った。

つぎはぎ坊主(パッチェス)、いいか、
わしゃな、お前をあてにしてるからな。息子よ、
家族のあとをよろしく頼むぞ。
すべてはお前の肩にかかってるんだからな。

それから2日後、パパが息を引き取った。
僕はその日大人の男になったんだ。
だからママに言った。
「僕、学校もう、行かないっ」
だけど、ママは「お父さんはお前を何があっても
絶対に学校に行かせることにしてたわ」ときっぱり言った。

だから僕は毎朝、にわとりにエサをやり、薪を割ってから学校に行った。
つらくてこんなことは続けられないと思ったこともあった。
ただただこの家から逃げ出したいと思った。
でもそのたびにパパが死の床で目に涙を浮かべ言った言葉が頭をよぎった。

つぎはぎ坊主(パッチェス)
わしゃ、お前を頼ってるんだ、息子よ
わしゃできる限りのことはやるからな
あとはお前が全力を尽くせ。

時は刻まれ、ある日激しい雨に襲われ
作物がすべて流されてしまった。
13歳だった僕は確信したんだ。
これから何が起ころうとも、この僕の家族を、
そして世界すべてを、僕が支えていかなければならないんだ、と。
僕も、ママも、みんなもこれからいばらの道が続くことがわかっていた。

これからまた、僕は毎日畑仕事に汗を流さなければならない。
なにしろ、生きていくにはそれしかないんだから。
僕は一家の主(あるじ)だった。
家族全員の人生が僕の肩にかかっていた。

毎晩、ママがお祈りしているのが聞こえてきた。
「神様、息子に朝を迎えられる強さをわけたまえ」と。

何枚もの暦(こよみ)がめくられ、子供たちはみな大人になった。
やがて天使がやってきてママを天国の家に連れっていった。
神様、泣いたよ、僕。
でもね、ずっとパパの声が耳元で響き続けてきたんだ、
だから今までがんばってこれたんだよ。

あの声のおかげさ。

つぎはぎ坊主(パッチェス)、
わしゃ、お前をあてにしてるんだからな、息子よ。
家族をしっかりまとめろよ。
息子よ、みんなお前にかかってるんだ。
僕にはそんなパパの声がいまだに聞こえてくる。

つぎはぎ坊主(パッチェス)、わしゃ、お前をあてにしてるからな。
わしゃ最善を尽くす、だからあとはお前に任せたぞ。

パパのささやきがいまだに僕の耳元で聞こえてくるんだ…

(訳詞・ザ・ソウル・サーチャー)

~~~~~

パッチェス Patches
Written by General Johnson, Rod Dunbar

I was born and raised down in Alabama
On a farm way back up in the woods
I was so ragged that folks used to call me Patches
Papa used to tease me about it
'Cause deep down inside he was hurt
'Cause he'd done all he could

My papa was a great old man
I can see him with a shovel in his hands, see
Education he never had
He did wonders when the times got bad
The little money from the crops he raised
Barely paid the bills we made

For, life had kick him down to the ground
When he tried to get up
Life would kick him back down
One day Papa called me to his dyin' bed
Put his hands on my shoulders
And in his tears he said

He said, Patches
I'm dependin' on you, son
To pull the family through
My son, it's all left up to you

Two days later Papa passed away, and
I became a man that day
So I told Mama I was gonna quit school, but
She said that was Daddy's strictest rule

So ev'ry mornin' 'fore I went to school
I fed the chickens and I chopped wood too
Sometimes I felt that I couldn't go on
I wanted to leave, just run away from home
But I would remember what my daddy said
With tears in his eyes on his dyin' bed

He said, Patches
I'm dependin' on you, son
I tried to do my best
It's up to you to do the rest

Then one day a strong rain came
And washed all the crops away
And at the age of 13 I thought
I was carryin' the weight of the
Whole world on my shoulders
And you know, Mama knew
What I was goin' through, 'cause

Ev'ry day I had to work the fields
'Cause that's the only way we got our meals
You see, I was the oldest of the family
And ev'rybody else depended on me
Ev'ry night I heard my Mama pray
Lord, give him the strength to face another day

So years have passed and all the kids are grown
The angels took Mama to a brand new home
Lord knows, people, I shedded tears
But my daddy's voice kept me through the years
Sing

Patches, I'm dependin' on you, son
To pull the family through
My son, it's all left up to you
Oh, I can still hear Papa's voice sayin'

Patches, I'm dependin' on you, son
I've tried to do my best
It's up to you to do the rest
I can still hear Papa, what he said
Patches...

~~~

マジック。

しかし、改めて訳してみて、そして、ゆっくり読んでみると素晴らしいストーリーだ。自分で読んでても泣けてくる。この物語が、ストーリーテラー、クラレンス・カーターの手にかかり(喉にかかりかw)、父から息子への遺言が見事なマジックを生み出す。

この「パッチェス」について、ちょっと調べていたら、なんと作家の村上春樹さんがこの曲を訳してエッセイを書いているという。アマゾンで探したら新書ででていたので、さっそくぽちってみた。いったい、どんな訳詞になっているか、いまから楽しみだ。

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下記ユーチューブで音を流しながら、もう一度訳詞を読んでみてください。

レコード版
http://youtu.be/IvfsfS6NVUc



ライヴ版
http://www.youtube.com/watch?v=-84fn58GTV0



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