吉岡正晴のソウル・サーチン

ソウルを日々サーチンしている人のために~Daily since 2002


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★マイケル・ジャクソン学~「ヒューマン・ネイチャー」

【Michael Jackson-ology~Human Nature】

性(さが)。

マイケル・ジャクソン学ががぜんおもしろくなっている。昨日(2009年12月12日付け)、大西さんが「ヒューマン・ネイチャー」をアップした。「ヒューマン・ネイチャー」は、直訳で「人間の性(さが)」。僕はまだこの歌詞を精査してはいなかったので、これを機にじっくり読んだり、調べてみたりした。こうした歌詞に対する訳詞は、正解がひとつだけではない。さまざまな解釈がなされるところがおもしろい。郷太さんもおもしろい解釈をしていた。まずこの二つの説を基本に話を進めてみたい。

大西さんの訳
http://mjwords.exblog.jp/9413260/

西寺郷太さんの説 (フルヴァージョンの訳ではありません)
http://musicshelf.jp/?mode=static&html=special38/page4

この「ヒューマン・ネイチャー」は、元々グループ、トト(TOTO)のメンバー、スティーヴ・ポカーロが書いた曲。彼は、自分の娘ヘザーが学校で何か嫌な事があり、そのグチを聞いたことをヒントにサビの部分、「Why, Why, Tell 'Em That Is Human Nature / Why, Why, Does He Do Me That Way」を作った。彼は娘のために作ったと言っている。

同じトトのデイヴィッド・ペイチが作ったデモ・テープの最後にポカーロ作品のこの「ヒューマン・ネイチャー」が入っていた。このテープは、クインシーの元に送られ、クインシーとロッドが聴いたが、ペイチの曲はクインシーが気に入らず、最後に入っていたポカーロの曲を気に入った。だが、歌詞が完全にはできていなかったので、クインシーは職業作詞家でカーペンターズをはじめ多くの実績があるジョン・ベティスに残りの作詞を依頼した。もちろん、クインシーはそのとき、ベティスにサビの部分がどのようにして出来たかは、簡単な説明はしているだろう。

そして、出来上がった作品がアルバム『スリラー』で「ビリー・ジーン」の次にアルバムB面3曲目に入る。

従って元々最初の「なぜ、なぜ、彼は私にそんなことをするの?」は、ポカーロの娘ヘザーが、たとえば同級生の男の子に何かいじめられたかして、「なぜ、彼はそんなことをするの?」と単純に思い、その答えとして「なぜなら、それが人間の性(さが)だから」となったものと思われる。

そして、次に、職業作家のジョン・ベティスは、おそらくクインシーからこのサビ部分は生かして、前後のストーリーを作ってくれ、と頼まれたのだろう。そこでいろいろマイケルのことを思いながら、歌詞を書き上げた。

全体的なトーンは、孤独な主人公(=マイケル・ジャクソン)がふとネオンの煌くビッグ・シティーにふらりと出てみたいと思う。そこで街のストレンジャー(女性)に出会う。そして、その女性と一晩過ごしたいと夢見るのか、過ごすのか(ここは不明)、いずれにせよ大都会の喧騒の中の孤独な主人公というイメージが浮かび上がる。

マイケルは、かつて「自分は有名だが、夜ふと寂しくなって街にでて誰かと話したくなる」と言った。孤独なセレブというのは歌になる。

Human Nature
written by Steve Porcaro and John Bettis
sung by Michael Jackson

[1st Verse]
Looking Out
Across The Night-Time
The City Winks A Sleepless Eye
Hear Her Voice
Shake My Window
Sweet Seducing Sighs

外を眺める。
夜の時の向こうを。
消えることのない街の光が瞬く
街の喧噪が響き、(注1)
窓を震わせる。
何と甘美で魅力的な囁き。(大西さん訳)

ここの導入部は第4ヴァースと対をなしている。大きな都市に住む主人公の様子だ。

夜、窓の外を眺めると
大都会のネオンは消えることがない
街の喧騒が窓を震わせ
甘い誘惑のため息が聴こえてくる
(吉岡訳)

[2nd Verse]
Get Me Out
Into The Night-Time
Four Walls Won't Hold Me Tonight
If This Town
Is Just An Apple
Then Let Me Take A Bite

ここから出して、
夜の向こう側に。
今夜は四角い部屋の中にいたくない。
もしこの街が
本当にただのリンゴだったら(注2)
一口かじらせてよ。(大西さん訳)

この「今夜は四方の壁から抜け出たい」というのが、ひとり孤独でアパートか何かにいる主人公が街に出たいことを示す。マイケルの前作アルバム『オフ・ザ・ウォール』も、「壁から抜け出す」だった。以前からそうした気持ちがあったのだろう。マイケル作品(これは歌詞はジョン・ベティスだが)には、いつもなんらかのつながりがあることが多い。アップルは、ビッグ・アップルからニューヨークを連想する人が多い。ニューヨークでももちろんいいが、ニューヨークに限らず、どこかの大都市、たとえばロスアンジェルスのダウンタウン、あるいは、サンセット・ブルヴァードあたりでもいいかもしれない。

夜の街に飛び出したい気持ちなんだ
今夜はこの小さな部屋(=四方の壁)にはいたくないんだ
もしこの街がおいしいりんご(=誘惑の街)なら、
僕も一口、味見してみたい
(吉岡訳)

そして、コーラス(サビ)。

[Chorus]
If They Say -
Why, Why, Tell 'Em That Is Human Nature
Why, Why, Does He Do Me That Way
If They Say -
Why, Why, Tell 'Em That Is Human Nature
Why, Why, Does He Do Me That Way
I Like Livin' This Way
I Like Lovin' This Way

もし彼らがなぜ、なぜと言うなら、みんなに言ってくれ、
それが人間の性(さが)なんだ、って
なぜ、神は僕にそんな風にするんだ
(なぜ神は僕を街に飛び出させようとしているのか=なぜ神は僕に味見させようとするのか)
そういう風に生きていくのが好きなんだ
そういう風に愛していくのが好きなんだ
(吉岡訳)

ここのコーラス部分は、街を味見してみたいのか、なぜだ? なぜなら、人間の性だから、という流れだ。なぜ彼は僕を街に飛び出させようとしているのか、と問う。この彼は大西さんの解釈通り神で行ってみる。

そして、いよいよ、主人公は街に飛び出して行く。

[3rd Verse]
Reaching Out
To Touch A Stranger
Electric Eyes Are Ev'rywhere
See That Girl
She Knows I'm Watching
She Likes The Way I Stare

手を伸ばして、
知らない人とも触れ合えたら。
街には光が溢れている。(注4)
あの子(街)が見えるだろ。(注5)
彼女(街)は僕が眺めてるのを知っている。
僕が見つめる様を気に入ってくれている。(大西さん訳)

僕はこのElectric Eyesをぎらぎら光る欲望のようなものとしてイメージした。街には欲望がうずまく。そんな欲望がぎらぎらしている様だ。もちろん直訳的に都市のネオン、街の光でもある。そして、ストレンジャー(知らない人、街行く誰か)に出会いたいと思う。

手を伸ばし、ストレンジャー(未知の人)と触れ合ってみる
ネオンがあちこちで輝く街
あの女の子を見てごらん
彼女は、僕が(彼女を)見つめていることに気づいてる
彼女は、僕に見つめられまんざらでもないんだ
(吉岡訳)

最初、ひょっとすると、僕は、このガールがいわゆるストリート・ガール(娼婦)ではないかとも思った。たとえば、ドナ・サマーが「サンセット・ピープル」や「バッド・ガールズ」で描いたような状況にいるガールだ。ただ、マイケルが歌う場合を考えると、必ずしもセックスに直接結びつく娼婦ではないかもしれないとも思う。一晩中話を聴いてくれるただのガールかもしれない。そこは解釈に余白がある。

(コーラス)繰り返し

[Chorus]
If They Say -
Why, Why, Tell 'Em That Is Human Nature
Why, Why, Does He Do Me That Way
If They Say -
Why, Why, Tell 'Em That Is Human Nature
Why, Why, Does He Do Me That Way
I Like Livin' This Way
I Like Lovin' This Way

もし彼らがなぜ、なぜと言うなら、みんなに言ってくれ、
それが人間の性(さが)なんだ、って
なぜ、神は僕にそうさせるんだ
(なぜ神は僕に女の子をナンパさせるのだ)
でも、そういう風に生きていくのが好きなんだ
そういう風に愛を交わすのが好きなんだ
(吉岡訳)

つまり、ストリートで女の子をナンパしてしまった主人公が、みんなからなぜそんなことをするんだと問い詰められる。すると、「人間の性だから」と答える。娼婦を買うことをとがめられ、その言い訳として「人間の性」と答えることはありうる。一方、このHeを神と捉えるのも解釈のひとつとしてはある。なぜ娼婦を買うなんてはしたないことを、神は僕にさせるのか、ともとれる。それとそもそものヘザーへのメッセージがここに入っていることもある。

そして、その女の子とどうなるのか。次の第4ヴァースがおもしろい。

[4th Verse]
Looking Out
Across The Morning
The City's Heart Begins To Beat
Reaching Out
I Touch Her Shoulder
I'm Dreaming Of The Street

外を眺める。
朝の向こう側を。
街の鼓動が脈打ち始める。
手を伸ばして、
彼女(街)の肩に触れる。
あの道に立つことと夢見ているのさ。(大西さん訳)

どうやら、女の子と知り合い、どちらかの部屋か、あるいはホテルの部屋にやってきたようだ。ここは僕と大西さんの解釈はちょっと違う。

朝、窓の外を眺めると
街の喧騒が始まっている (街の鼓動が脈打ち始める)
そっと手を伸ばし彼女の肩に触れる
僕はそんなストリートでの出来事を夢見る
(僕はあのストリートを思い浮かべる)
(吉岡訳)

I'm Dreaming Of The Streetのラインが僕もちょっと迷うところ。これは、「ストリートで女の子をナンパして、うまくいった、また今晩あのストリートに戻ってみたいと夢みている」のか、あるいはまったく逆に、「ストリートでナンパしてアパートに行き、朝を迎える」、そんな行為自体を夢見ているのか。後者の場合は、実際は声もかけず、ナンパもしていない。そうできればいいなあ、と思いつつ、街を彷徨う、誰かストレンジャーと知り合いたいと思うが、主人公はシャイだからか、それができない。そうしたことができればいいなあ、と夢見るという状況だ。マイケルのキャラクターだと後者に思えるが果たしてどうだろうか。

郷太さん訳の場合、ここでのガールを娼婦かそれに近いものとして捉えているようだ。いわゆるストリート・ガールだ。大西さんは、この彼女を街全体の擬人化として捉えている。彼はこの曲を、娼婦と主人公として捉えると、ここで描かれる「ヒューマン・ネイチャー(人間の性)」自体が「セクシュアル・デザイアー(性的欲望)」となり、その解釈はちょっと無理があるのでは、と言う。

サビ(コーラス)の部分は、おそらくポカーロは、単純にそのまま直接的な意味で書いた。いじわるする男の子がいる、それも彼の「ヒューマン・ネイチャー」と。そして、ジョン・ベティスが前後にストーリーをつけ、たとえ街の誘惑に屈したとしても、それも「ヒューマン・ネイチャー」だとした。どちらの「ヒューマン・ネイチャー」も、ある意味真実なのだ。そして、この世界にはありとあらゆる「人間の性」が溢れている。

ひとつの曲を巡ってあれこれ解釈がでてくるのはなかなか楽しい。

この歌詞の場合、ポカーロに聞いた場合とジョン・ベティスに聞いた場合、解釈に対してふたつの答えがでてくる可能性がある。そして、どちらも、正解なのだ。だからひとつの答えではなくなる。そこがおもしろい。ジョン・ベティスとポカーロに詳しく聞いてみたくなった。

■ 「ヒューマン・ネイチャー」試訳 (まとめ)

ヒューマン・ネイチャー
ジョン・ベティス、スティーヴ・ポカーロ作

夜、窓の外を眺めると
大都会のネオンは消えることがない
街の喧騒が窓を震わせ
甘い誘惑のため息が聴こえてくる

夜の街に飛び出したい気持ちなんだ
今夜はこの小さな部屋(=四方の壁)にはいたくないんだ
もしこの街がおいしいりんご(=誘惑の街)なら、
僕も一口、味見してみたい

もし彼らがなぜ、なぜと言うなら、みんなに言ってくれ、
それが人間の性(さが)なんだ、って
なぜ、神は僕にそうさせる?
(なぜ神は僕を街に飛び出させようとしているのか=なぜ彼は僕に味見させようとするのか)
そういう風に生きていくのが好きなんだ
そういう風に愛していくのが好きなんだ

手を伸ばし、ストレンジャー(未知の人)と触れ合ってみる
ネオンがあちこちで輝く街
あの女の子を見てごらん
彼女は、僕が(彼女を)見つめていることに気づいてる
彼女は、僕に見つめられまんざらでもないんだ

もし彼らがなぜ、なぜと言うなら、みんなに言ってくれ、
それが人間の性(さが)なんだ、って
なぜ、神は僕にそうさせるんだ
(なぜ神は僕に女の子をナンパさせるのだ)
でも、そういう風に生きていくのが好きなんだ
そういう風に愛を交わすのが好きなんだ

朝、窓の外を眺めると
街の喧騒が始まっている (街の鼓動が脈打ち始める)
そっと手を伸ばし彼女の肩に触れる
僕はそんなストリートでの出来事を夢見る
(僕はあのストリートを思い浮かべる)

もし彼らがなぜ、なぜと言うなら、みんなに言ってくれ、
それが人間の性(さが)なんだ、って
なぜ、神は僕にそうさせるんだ
(なぜ神は僕に女の子をナンパさせるのだ)
でも、そういう風に生きていくのが好きなんだ
そういう風に愛を交わすのが好きなんだ

(訳詞・ソウル・サーチャー吉岡正晴)

■ 「ヒューマン・ネイチャー」は、『スリラー』のB面3曲目でした

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