街に出て姿勢を見よう! 【037】 | 快足健康ブログ

街に出て姿勢を見よう! 【037】

前回、筋肉は重みを受け止める役割やエネルギーを生み出す役割と同時に、センサーとしての役割をはたしているということを紹介したました。

センサーとしての役割をはたしているのが、筋肉のなかに埋め込まれるように存在する筋紡錘という器官です。

筋肉のなかには、筋繊維という細長い細胞がたくさん走っています。筋肉の両端は腱と呼ばれるコラーゲン繊維になっているのですが、すべての筋繊維はこの腱の間を結んでいます。細胞といってもいくつもの細胞が合体してできる多核細胞でとても長くなっています。

筋紡錘は、この筋繊維のなかに埋め込まれた短いセンサー用の器官です。錘内筋繊維という短い筋繊維が走っていて、筋肉が引きの伸ばされると一緒に引き伸ばされます。錘内筋繊維のまわりにはたくさんの神経が絡みついていて、筋肉の伸びを感知し、脊髄に神経インパルスを送るようにできているのです。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】筋紡錘の仕組み


筋肉は、筋紡錘が引き伸ばされるとそのことを感知して緊張します。しかし、筋紡錘が緩んだ状態になっているとこのような反応が起こりません。身体がだらんとしているときのことを考えていただくとよくわかります。

逆に筋肉に力が入っている時は、筋紡錘そのものが緊張状態になって、極端に感度が高まり、筋肉がロックされた状態になります。力こぶを作った腕を引き伸ばそうとしたときの状態です。試みていただくとわかりますが、腕ががしっと固まってびくともしないはずです。

このような筋肉の生理作用が、さらに表層と深層の筋肉の役割分担のなかで、実際の身体の動きを作り出します。表層と深層の筋肉は、基本的な生理作用は一緒でも異なる意味を持ってきます。

たとえば背骨の歪みを生み出すうえで重要な役割をはたしているのは、おもに深部の筋肉です。

両者の違いをまとめてみると次のようになります。

表層筋
   表層にある
       多関節筋(たくさんの観察をまたぐ)
       速筋成分を多く含み、瞬発力富むが疲れやすい

深層筋
   深層にある
       単関節筋(単一の関節をまたぐ)
       遅筋繊維を多く含み、瞬発力に欠けるが有酸素化で持続的に活動できる

つまり、表層筋は、日ごろわたしたちの意識に上る身体動作と対応しているのに対し、深層筋は、個々の関節の物理的な変化に対応していて、わたしたちの意識に上りにくいといえるでしょう。要は、関節がずれないように保持している筋肉なのです。

深層筋が緊張するとどうなるか。本来あるべき歩行のリズム、身体の重みを受け止める受動運動をうまく発動できなくなるのです。

下の二人の方を見てください。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】受動運動の乱れと歩行動作01


お二人とも右足が地面から離れた状態にあります。左脚単脚支持の状態です。本来なら、右側の骨盤が下がって低い位置にくるはずですがそうなっていません。

これにともなって次のようなことが生じます。

①左脚の外側の腸脛靭帯は、骨盤傾斜を引き起こし身体の重みを受け止め、利用することができません。
②右側の大腰筋が十分に引き伸ばされず、下肢を引き上げるエネルギーを蓄えることができません。
③左下肢後面のハムストリング筋が十分に引き伸ばされず、足をけ上げる力が低下します。
④総じて左下肢の筋肉に蓄えられた弾性エネルギーが発揮されないまま熱にかわりバンプアップを起こす(=太くなる)。

見ると二人とも右手に荷物を抱えています。当然右半身に力みを生じます。筋紡錘が緊張して筋肉をロックし、身体の重みを受け止めにくなります。上に掲げたことは、たんに荷物によってもたらされた一時的な状態なのかもしれません。

しかし、だれもが実感としてご存知のように、ふつう荷物を持ちやすい側はどちらか一方にかたよっていて、ほっておくと右ばかり、あるいは左ばかりで荷物を抱えてしまうことが多いはずです。

上に掲げたことは荷物による一時的な現象としてではなく、それ以前からかなりの一貫性を持って身体にインプットされていて、日常動作によってますます助長されてしまうということが多いのです。

こういった身体の傾向性は、基本的に身体のこわばりとしてあらわれてきます。

これを読み取るためには、背骨(脊柱)全体の表情に注目することが大切です。その出発点は、首の傾きを評価することにあります。次回は、このあたりのことからご紹介してみます。

(つづく)

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