そらねこカフェ・店主ゆぎえみ・そらねこ会ブログ

そらねこ会は、『今ある命を大切に、不幸な命は増やさない』をコンセプトに活動している猫ボランティアチームです。


日々の思いを書いてます。


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そらねこ会メンバー、こみちゃんちのジェームス君が亡くなったってメールがきました。



「ジェームス、もう頑張らなくていいんだよ、苦しまないでって、そっと撫でながら言ったら、少しだけ頭をもたげたけど、

会社から帰ったらクウクウって眠っているみたいで、だけどもう動かなかった」



いつもマイペースでのんびりとしていたジェームスは、こみちゃんに甘えることもめったにしなくて、それどころかあんまり触らせてもくれなかったそうです。

だけどジェームスはこみちゃんが大好きだったはず。


照れながらいつも見てて、スリスリのタイミングを計ってたジェームス。


えへドキドキ
おれ、ジェームス!
不器用さって。







具合が悪くなってから、初めて沢山撫でさせてくれたジェームス。



こみちゃんを独占してるのは不可抗力であって、わざとではない....

そんな言い訳を他のチビたちにしながら、パタパタパタパタパタパタって、
嬉しくて嬉しくて、
短いしっぽをつい振ってしまったジェームス。




「ありがとうね。
大好きだったよ。
今度生まれてきたら、また、うちの子になってね」



こみちゃんは、庭のぼたんの木の下に、ジェームスのお墓をつくるって教えてくれました。


うん、花に例えたら、ジェームスはでっかくて丸いぼたんの花以外考えられないよね。


ジェームス、お疲れさま。



一緒に過ごしてくれてありがとう。







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秋にうさぎが死んだ時、綺麗な満月の夜でした。

だから月に帰ったんだと本当に思っています。



このうさぎは、ある日突然、私の庭に居たうさぎです。

うさぎと暮らすことは初めてだったし、野生のうさぎなのかペットだったのか、性別も何もわからなくて戸惑いました。


部屋の中に入れると嫌がり、動かなくなって食事もしなくなるので、外に出しました。


大屋さんに許可をとってから、土の上にすのこを敷きました。

犬用のケージで囲い、庭で暮らしてもらっていました。

夏は涼しく、冬は暖かくするように心掛けはしましたが、雨が降ったら心配で、暑ければ心配で、寒ければまた心配でと、夜中には必ず外に出ました。

おかげでこの2年の間は、流れ星を沢山見ました。

その割には一個も願いを唱えられなかったけど、今までで、こんなに夜空を見あげたことはなかったように思います。

花も、木も、草も、土も、月に照らされている時、いちばん香ると思います。

音が無くて、風が止まって、 明るい時には気付けなかった淡い香りや、根っこの方の香りが、びっくりするくらいしてくる。


そうすると、不思議なことに、昼間に見落としてしまった人の言葉の意味や、気持ちの裏の思いなんかが、ふあーって、香りに乗ってやってくることが沢山ありました。


『ああ、なんで気付けなかったんだ!』

『あたし、なんてこと言っちゃったんだろ』

とか、うっかり声に出したりして。


そんな時うさぎは、真夜中の訪問者である私に対して、迷惑そうに足を鳴らしました。

ダンタンタンタンって。


反省することが圧倒的に多いけど、
もちろん嬉しい思いに気付く時だってあったから、そんな時は儲けものって感じで小躍りしたり。
ダン!
タン!
タン!
タン!


うさぎを真似て、ちょっとステップを踏んでみたこともあったくらい。

もちろん手は腰です。


ダンタンタンタン!


私は夜中に何度もこの音を聞きました。



うさぎがだんだん私に慣れてきてくれた頃、もっと大きな囲いの中に放すことがありました。


室内犬を遊ばせる用の、広げると3畳くらいのスペースが作れるサークルがあります。

土に直接置きました。


うさぎはすごく喜んで、日だまりの中でしばらくゴロゴロした後で、いつも穴を掘りました。


うさぎは掘った土を丁寧に自分で片付けるんですよ。

両手で雑巾がけするみたいに押していって、離れた所に山を作るの。

それからどんどん穴を掘って、すっぽり入っちゃって、心配した私が穴の入り口をコンコンとすると、大慌てで顔を出します。

真っ黒なフサフサの毛が泥だらけになって、すっごーくかわいたかった。

穴を掘るってことは習性なんだと思うけど、それほど固執することもなく、しばらくすると自分のいつもいる小屋に戻りたそうな素振りをするから、サークルの扉を開けてやると、うさぎは一目散に戻っていきました。

そうしてそんな日は、こっそり夜中に覗いても毛布にくるまったまま、びくともしないで眠っていました。


私はしばらく月を見たり、時には曇った空を見上げたりしてから自分の布団に飛び込みました。


うさぎははっきり言って手がかからなかった。

忙しい時は構わなかったし、犬や猫みたく、大したアピールもしないし。


満月の夜、うさぎが静かに月に帰った時はあまりに呆気なくて、

『うーちゃんバイバイ』って日記に書きました。

それで終わり。

私の日常に大きな変化があった訳でもなく、うさぎが居たことを知ってる人はあんまりいなかったし、うさぎの話しもしなかった。




うさぎが居た時はスーパーの野菜コーナーを良く覗いたぐらいです。

パセリが大好きだったから。

キャベツの一番外側の葉っぱが箱いっぱい棄てられているのを見て、もったいないなって思ったくらい。

散歩していて、クローバーの群生を発見するとポケットに詰めて帰った。

それも大した変化じゃない。


うさぎが居た時は、大工さんちを覗いては、木材の端切れをもらって帰った。
なんかかじれる物を入れないと歯が伸びちゃうって聞いたから。

大工さんに差し入れした鯛焼きを誉めてもらったことがあって凄く嬉しかった。

『お姉さん、違いがわかるね』って言われて。

それは私のお気に入りの鯛焼き屋さんのだったから。



それからうさぎが居た時は、タンポポを良く探しました。

茎から乳の出る草は喜ぶって聞いて。

冬でも咲いてるのを見かけると、恐れ多くて摘めなかったけど、タンポポって一年中見かける強い花だと思いました。





ある日突然庭に来て、大して構ってあげられなかったうさぎ。

アピールもしないけど、夜中の空を一緒に見てくれた。

うさぎが居なくなっても、何にも変わらない。


本当に何も変わらない。


もうじき年が明けていくだけでした。

それなのに、暖かかった昨日、近所の小さな女の子が、台所から持ち出しただろう銀のザルいっぱいにクローバーを摘んでもってきてくれました。


『散歩してたら見つけたから』って。

クローバーの中にはタンポポの茎も少し入っていました。


そういえばずっと前、この子にうさぎの話をしたことがあったかもしれない。


『秋にね、死んじゃったんだよ』って言ったら、すごくすごく寂しそうに、頷いてくれました。



私のうさぎを気にしてくれてた私以外の人がいて、それもこんなに小さな女の子が、うさぎの大好きな草を覚えててくれて、いっぱい届けてくれたことが嬉しくて、しゃがみ込んで泣いてしまいました。



私はずっと泣きたかった。

だからすごく泣いた。



悲しいことが沢山あって、辛いことと戦ってる友達が沢山いて、だから空を見上げた時には必ず頑張ろうねって呟いていました。



段々夜中の空は見なくなった。

見るのが苦しくなってきた。

うさぎが居なくなった時、糸電話の糸がぷつんと切れたみたいに、私の声が届かなくなりました。




ずっと泣いてても、女の子は黙ってそばにいてくれました。

困っていたんだと思います。


私は恥ずかしくなって、部屋に入って鼻をかんでから、もう一度お礼を言いました。


『うーちゃんのこと、覚えててくれて、ありがとうね。クローバーもタンポポも大好きなんだよ』


女の子は黙ってまた頷いてくれました。




手を繋いで彼女のうちまで送りながら、私は久しぶりに、空を誰かと見上げました。


........................................................................



時々、沢山の人達の届かなかった沢山の思いが、ふあふあと舞っているのを見付けて苦しくなります。


受け止め切れなかった自分を恥じてみたり、器の小ささを詫びてみたり。



震災以来、猫が死んだとかうさぎが死んだとか、そんなことを悲しんでいることが申し訳ないように思っていました。

でも人間らしい普通の気持ちを捨ててしまうことはとても切ない。

私は私らしく頑張っていくしかないんだって思います。

女の子が思いださせてくれました。


結局、力を入れても抜いても、私の行き着くところはこれしかない。

がんばる。
私らしくがんばる。
それしかないです。



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児童養護施設の職員である友人と会って来ました。

ちょっと打ち合わせを兼ねて、お茶。


デパートの端っこにある小さな店は透明なガラス張りです。
そこから、彼はぼんやりとキャラクターのお店を見ていました。





「あそこのタオルは200円だった」



昨日、施設の子供が万引きで補導されたと言いました。



離婚して父親と暮らすようになったその子は、新しい母親から日常的に虐待を受けていたそうです。

誕生日に、離れて暮らす実の母親からワンピースが送られて、それを大切に隠し持っていたところを実父と継母に見つかって取り上げられました。


実父はワンピースを持って、実母宅へ怒鳴り込みました。

小さな彼女も連れてです。


殴られながら謝る実の母を彼女はただ黙って見ていたそうです。




それから実父も加わり、継母の彼女への暴力は増していき、見かねた近所の方の通報で彼女は施設に保護されました。



わずか10才だった彼女は言葉を失っていたそうです。


季節外れの格好で、人混みの中を歩くその子の事を、幾人もの大人が見ていました。



言葉を失う前に、彼女の心は何も見えなくなっていたと思います。


大切なワンピース。
その為に殴られる母と、その為に増す自分への暴力。


何を道しるべにするべきか、大人にだって見当がつかない!

季節外れの装いは、感覚を失ったシグナルなのか、それとも体の痣を隠す為のものなのか。


問いただす資格は誰にもない。





彼女の万引きは繰り返されてしまうそうです。




私の友人は彼女の事を叱れないと言いました。

勿論、万引きは良くない事なのは誰だって知っている。

そんな事は当たり前です。


友人は、
ただただ、言葉を失っているその子に同じ姿勢で接するそうです。



今まで1人で頑張って偉かったね。


先生ならきっと駄目だった。


本当に頑張ったね。

だけどもう1人じゃないから。


それからもう誰も君を叩いたりはしないから。





日曜日、沢山の人が行き交う街。


雑踏の中から、覗き込むような、彼女の瞳を見つけた気がして、私は時々振り返ってしまいます。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




取材として、沢山の子供と接してきました。


先生、周りの大人、
親。


どんな事情があろうと、ここまで子供を傷つけることに、何の理由も通用しない。

私はそう思います。



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カチカチカチカチ



スネアドラムの縁を叩く、リムショットです。


体に響くバスドラムも、クラッシュシンバルも使わずに、彼は規則正しい静かな音を鳴らし続けていました。

こんな小さな音で、Rayさんにも届いているのだろうか。。。


私は少し不安になりました。

Rayさんは、胸の前で両手を組んだ姿勢のまま目を閉じていました。


カチカチカチカチ

カチカチカチカチ



その時、あっ!と思いました。


細かく静かなリムショットのリズムが、床板と壁を伝い、さざ波のような振動になって体に響いてきたのです。

規則正しいエコーのように、音が音を巻き込んで、胸のあたりに入ってきます。

何これ!

すごい!

Rayさんの体が小刻みに揺れています。
組んだままの指が小さくリズムをとっていました。





彼の手が止まりました。

ギターがイントロを弾き出して、ベースが音を重ねる頃には、またバスドラムが響き出していました。


少し切ない歌詞を載せた軽快な曲は、彼らのデビュー曲でした。

胸の中がキュンキュンなって、私もなんだか懐かしく、センチメンタルな気分になってきました。

好きな人を思ってみます。

名前をちょっと呼んでみました。


キャ~音楽って素敵!!!

恋ってすばらしい!!!

はっっと横を見ると、呆れ顔のRayさんと目が合いました。

だけどそんな事は構いません。

私は最高に気分が良い!!

最高に素敵な初恋の「それから」を目の当たりにしたのですから。



『彼はやっぱり伝えるのが上手い』


Rayさんの綺麗な手が、私にそう告げました。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





雨に濡れて緑を増す木々を、美しいと感じるのは、濡れない場所から見ている時です。


朝日に輝く雪の中に立って、冷たさを感じずに、白さを眩いと言える時間は、それ程長くはないはずです。


だけどきっとそれぞれの抱える思いは、それぞれが乗り越えるしかないんだと思います。

ただ、あなたが切ないと思う時も、あなたが幸せを感じる時も、あなたの気持ちに寄り添いたい。

いつかあなたからもらった言葉。

今度はあなたに贈りたいです。



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『冬は寒いから嫌い』

『そお? 窓の景色が変わるじゃない?
だから私は好きだよ、冬』

『暖かい部屋から見てるからだよ』

『そっかな? 雪はきれいだと思うよ。真っ白で、朝日が当たるとキラキラしてて』

彼女は前を向いたまま、ゆっくり手を動かしました。

『手がかじかんで上手く動かないよ。寒くて辛いだろうってわかっても、頑張ろうねって返せない』

彼女は声も出さずに泣いていました。

私は黙って泣き止むのを、側に立って待っていました。

いつだってそう。
私は傍らにいるだけです。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



『ねえ、お願いなんだけど。付き合って欲しい所があるの』

そう言って、かなり年下の友人であるRayさんが、上目使いに私を見ました。

綺麗な目だなぁ。

私はいつもながら、ふぅっと見とれます。

珍しく、彼女は少し照れくさそうにしています。

そして、ぶっきらぼうに渡されたのは、インディーズの、ロックバンドのコンサートチケットでした。

Rayさんは若くて美しく、バリキャリな編集者です。

かなり根性がある。

そうです、ぐうたらな私には死語に近い、『根性』というものがあるのです。

Rayさん綺麗ねって褒めると、『努力してますから』と、しれっと答えます。

長い髪はいつもサラサラだけど裾だけくるんって巻いてます。

白い肌に形の良いパーツが収まっています。


いつでも流行りのポイントを押さえた、清潔感のあるお洒落をしているRayさん。

私に好きな人が出来たら、紹介をもっともためらう女性です。

だけど彼女なら、とられちゃっても諦めがつくかもしれない。
なんと言っても、彼女は完璧な努力家であり、強くしなやかな心根まで持ち合わせた、私の理想の女性だからです。


彼女は耳が聞こえません。

初めて会った時、手話の出来ない私に、「なぜ手話を習わないんだ!」と言った高飛車さが気に入って付き合いが始まったように、Rayさんはいつでも強気に攻めます。

彼女は手話だけでなく、身振りや手振り、筆談や読唇と、あらゆる手段を使い、とても自然に会話をします。
それは、彼女が人に気を遣わせない為に編み出したわざであり、どれだけ大変であったかは計り知れない事ですが、お陰で私は、何不自由なく、Rayさんとの会話を楽しむ事ができているのです。

しかし、あの日の彼女の申し出に、私は一瞬戸惑いました。

ロックのコンサートです。

了見の狭い私は、耳の不自由な彼女を、音楽というものから無意識に切り離していた事に気が付きました。

『私が行ったらおかしい? 相変わらず閉鎖的な偏見が抜けていない人ね』

携帯画面に、数秒で文字が打たれます。

『そうじゃないの。急にどうしたのかと思っただけ』

あたふたと言い訳をする私に、Rayさんは、言いました。

『このバンドのドラムがね、ほら、前に話した、私の初恋の彼なの』

懐かしそうに、そしてとても大切そうにRayさんは言いました。

そうか...
彼のライブだったんだ。

以前、Rayさんは話してくれた事がありました。
意外と遅かった初恋の話。

その彼の、単独初ライブであるのなら、行かないわけには行きません。

Rayさんの初恋、それは、Rayさんが聾学校に通っていた、中学2年生の事でした。

Rayさんの生まれ育った街では、毎年秋に区民運動会が開かれます。

年配の方から就学前の子供まで、世代を問わずして参加できるこの運動会は、伝統があり、街の一大イベントです。

そして、中でも10歳から15歳の子供達で争う騎馬戦は、種目の中でも花形で、大いに盛り上がる競技でした。


『私、耳は聞こえないけど、目が良いのよ。それに動体視力が優れているの。だから騎手をやりたかった』

彼女は得意気に話します。

『でもね、音が聞こえないからね。。。気配は感じるんだけど、やっぱり仲間の指示が聞こえないのは不利ね。 沢山の目には叶わない』

大将一騎とその他に6騎がひとチームとなり、赤と白に別れて戦う14騎の騎馬戦は、観戦者達の声援に混じる指示も、重要な戦力となります。

『後ろから来てるぞ!』

『もう一騎来てるぞ!』

『逃げろ』

『右だ!左だ!』って。

いくらRayさんが俊敏でも、確かに不利かもしれません。

しかし、区長さんと体育役員さんが、そんなRayさんの気持ちを汲んで、両チームに1人ずつ、『指揮官』なる者をつける事にしてくださったのです。

ある程度まで馬に近づいて、騎手の耳となり、もうひとつの目となって指示を出せる役で、総監督といったところです。

これが設けられた事で、その年の騎馬戦は一層もり上がり、運動会開催前から何度も、作戦会議が開かれました。

その結果、敵陣である白組は笛を使いました。

ピー 逃げろ
ピピ 後ろ

だけど、どの馬に対して出している音なのかまでは伝わらず、結局は口での指示に、大観衆はほのぼのと大笑いだったそうです。

紅組、Rayさんチームの『指揮官』は、Rayさんの乗った馬だけの『耳役』として役割が絞られました。
そして、この『耳役』をかって出てくれたのが、同じ年である、Rayさんの初恋の彼でした。

何度か行事で見かけた事はあっても、話した事はない彼でしたが、すぐに打ち解けました。
彼を含め、馬になる少年達と何度も打ち合わせをしたそうです。

『普通校の子と毎日会うのはいい刺激になったわね、まあまあ楽しかった。彼は剣道をやってたから、なかなか機敏な動きをしてくれたわね』

あくまでもRayさんは上からです。

Rayさん達は、サインを決め『耳役』の動きに合わせる練習をしました。

それは毎日行われ、とうとう当日を迎えました。

馬に乗ったRayさんは、周りに気を配りながらも彼を見ます。
馬になっている少年達は彼から目を離しません。

スタート!

カードを横に滑らせるように、Rayさんは相手の騎手の帽子を落としました。

彼の左手が大きく円を書きました。

後ろから来ています。

右手が垂直に上がりました。

Rayさん達は左に移動します。
打ち合わせ通りです。

彼の両手が上がりました。

Rayさんの乗った馬は真っ直ぐに走り出しました。

彼の手が降りるとピタリと止まり、動きに合わせて方向を変えます。

まるで彼の振る手に操られているようだったとRayさんは言いました。

帽子を取られたり、馬から落ちたら整列して座ります。

広い騎馬戦のステージには、相手の大将とRayさんの2騎だけが残りました。

ここからは一騎打ちです。

耳役の彼は、Rayさんに向かって、腕を曲げて力こぶを作る仕草をしました。
それから自分の胸をこぶしで叩きました。

ーガンバレー

『嬉しかった。それから気持ち良かった。私ね、あの時、耳が聞こえないなんて忘れてた。声が聞こえた気がしたもの』

やっぱり時々は、コンプレックスが頭をもたげると彼女は言います。

どうにもこうにも辛くなって、気持ちがあらぬ方向へ向いてしまう時は、あの日の事を思い出すそうです。

馬になってる少年の足に、力が入るのが分かったあの時。

サイドを支える少年の唇が『落ちるなよ』って動いたのが見えたあの時。

『観戦している人達の掛け声が、振動になって伝わってきて、私のコンプレックスはぶっ飛んだ』

顔を真っ赤にしながらRayさんはそう言いました。


敵陣の大将はひとつ年下のすばしっこそうな少年です。

Rayさんの馬は、相手の隙を見付けるように、弧を描きながら回り込みますが、それは相手も同じです。

お互いに、ぐるぐるぐるぐるぐるぐる。

不意に、耳役の彼の右手が上がり、つられたRayさんは、とっさに左へ体を引きました。

その時です。

相手の騎手に、一瞬隙が生まれました。

Rayさんの言葉を借りると、

『鶴が羽で掃いたようだった』と。

少し言い過ぎな感もあるけど、鶴の羽に掃かれた敵陣の大将の帽子は、ヒラヒラと舞い落ちて、大きく歓声が上がりました。

敵も味方も総立ちです。

Rayさんと敵の大将はガッツリ握手をしたそうです。
(私的にはこの子が好き!)

Rayさんの耳役の彼は、両手を大きくあげてからガッツポーズを作り、Rayさん達に走り寄りました。

Rayさんも、馬になっていた少年達も、飛び跳ねながら彼を迎えたと聞きました。

だけどRayさんには彼しか見えてなかったはず。

あの日、あの時、あの瞬間、彼女は彼に恋をしたのです。





ライブ当日は現地で待ち合わせました。
ホールは小さめでしたが、満席でした。
前から5列目、中央左よりの席からは、ドラムのポジションが良く見えます。

一瞬ステージが暗くなり、再び明るくなりました。

ドンドンドンドンドンドン

バスドラムが響きました。
会場の板を伝って足もとから、体に届きます。


ズンタン! ズズタン!

スネアドラムが入りました。


トコトコトコトコ

ロータムが可愛らしく響きます。


スティックを握った彼の両手が大きく振りかぶり、クラッシュシンバルが鳴り響いて、ボーカルが歌い出すと、客席は総立ちになりました。


背筋を伸ばし、細かいリズムを刻んでいる彼は想像とは違い、線が細く、背の高い青年でした。

まあるいメガネをかけていて、ゆったりとした白いシャツを着ています。

ドラマーって言うより、文学青年みたい。。

Rayさんは微動だにせず、彼を見ていました。


数曲が終わり、また照明が落ち、スポットライトがドラムの彼だけを映しました。

静まり返ったステージの中、彼がスティックを振りました。

カツカツカツカツ

カツカツカツカツ


スネアドラムの縁を叩く、リムショットです。


体に響くバスドラムも、クラッシュシンバルも使わずに、彼は規則正しい静かな音を鳴らし続けていました。

こんな小さな音で、Rayさんにも届いているのだろうか。。。


私は少し不安になりました。

Rayさんは、胸の前で両手を組んだ姿勢のまま目を閉じていました。


カツカツカツカツ

カツカツカツカツ



その時、あっ!と思いました。


細かく静かなリムショットのリズムが、床板と壁を伝い、さざ波のような振動になって体に響いてきたのです。

規則正しいエコーのように、音が音を巻き込んで、胸のあたりに入ってきます。

何これ!

すごい!

Rayさんの体が小刻みに揺れています。
組んだままの指が小さくリズムをとっていました。


彼の手が止まりました。

ギターがイントロを弾き出して、ベースが音を重ねる頃には、またバスドラムが響き出していました。


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お世話になっている動物病院に、怪我をした猫が運ばれてきました。


怪我....

怪我というには、その状態はあまりにひどく、居合わせたド素人の私でさえ、お手伝いをすべき状況でした。



誰でも気軽に動物病院にかかれるようにと、安価で、まるでブラックジャックのような驚く程の腕前を持った先生が、ひとりでなさっているものですから、度々こんな場面に出くわします。


それにしても、直視できない程、酷い状態で、若い男性のウインドブレーカーに包まれた茶色の猫は、交通事故にあってしまったようでした。


か細い息。

先生の懸命な処置。


私は先生の指示に必死に従うのですが、それでも上手くは立ち回れず、先生は苛立っていました。


3時間の手術でしたが、私にはもっと長く感じました。


フーっと大きく息を吐いて

「終わりました」って先生が言って


私の体はカチンコチンで


時計を見たら4時でした。


午後の診察の時間です。

ブルーの手術着から白い診察着に着替えて、先生は病院の待合室の電気を付けました。


次々と、病気や怪我をおった動物を抱えた人が入ってきます。

私は自分の用事を済ませ、そっと病院を出ました。


体痛い。
お腹すいた。
だけどすごかったな。


なんだか満ち足りた気持ちでした。





茶色の猫はガッツ君と命名され、長く入院していましたが、保護した男性が連れて帰りました。

ガッツ君はとても人慣れしているので、彼が預かりながら、里親さんを探すこととなったのです。


先生も病院のブログに載せてくださいました。


そして私たちも、仲間や知り合いに連絡をし、ガッツ君の幸せの為に動き出そうとした頃です。


先生のブログに、ガッツ君を保護した男性からコメントが入りました。



以下コメント全文です。



《3本足になってしまった猫を預かっている者です。

閉鎖された工場跡地で暮らしている猫、数匹に毎日餌をやっています。
○○動物病院さん(先生の病院)で保護方法をご指導いただいて、避妊去勢手術を始めたころ、この子がいないことに気付きました。

心配していた5日めのある夜、ヨタヨタのボロボロになって、這うように、僕のそばまで来ました。足が折れて骨が出て、内蔵も尋常でないことが一目でわかる程ひどく、それでも僕の足元まで這ってきました。
そのまま○○動物病院さんに運んだ時はもうだめだと思いましたが、そんな中でもゴロゴロ言って僕の手の中で生きようとする力を感じたのを覚えています。
この5日間どんな思いで耐えてたんだろと思うと切ないです。
○○動物病院さんでは献身的に良心的に良くしていただき、2度の大手術にこの子は良く耐えたと聞きました。

先生のお陰で生還できました。ありがとうございました。

また工場跡地へ戻すことはできないのでうちへ連れて帰りましたが、三本足で歩き、トイレもきちんとやり、食事をして、嬉しそうに僕を見る姿に感動しました。

生きたい生きたいと頑張ってきたんだと思います。
だからこの子は、家族とも相談した結果、僕が自宅で面倒みることに決めました。

○○先生、ブログに載せてくれてありがとうございました。
我が家に来て一夜明け、今朝は良く頑張ったなと撫でてやり、この子に見送られて職場に向かいました。

工場跡地には置き去りにされたと思われる猫がまだ数匹います。
生き物が置きざりにされることの危険性と恐怖と心細さを思うといたたまれず、毎日、どんな日も通っています。これからも365日通うつもりです。

避妊去勢手術もまだ全部終わっていません。
懐いているのだから里親をつけてあげたい子もいます。

どうか力を貸してください。

いつも弱いものが犠牲になりますが、置きざりにされたり、捨てられたり、こんな猫が全国他にもまだまだいることに、心が苦しいです。


先生、命を救ってくださりありがとうございました》





里親探しを一時中断して、私たちは考えました。

人と動物と時代とまた人と、
繋がりってこんなことをいうんだろうなって。



関わらせてもらえたことが自分の肉となったことを実感して、ひどく嬉しく思いました。


先生、ガッツ君、保護してくださった小林さん、本当にありがとうございました。









でもさ、あの日手術のお手伝いをした時、うまく立ち回れなかった私(ド素人)にさ、先生(ブラックジャック)が、手術の手袋(ちょっと血みどろ)叩きつけなかったっけ?
よけたけど...。



『もういい!
自分でやる!』

とか言って!!!!!!!


あれ気のせい?



まあ、今回は許して差し上げてもよくってよドキドキ







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子猫との出会い
保護理由は様々ですが、願いはすべて同じです。

幸せになってもらうしかありません。


友人、知人、みんなでなんとかすれば、今のところなんとかなってきました。



ねこといえど、性格は多種多様です。


元気な子もいれば、おとなしい子も。
人見知りの激しい子も。

保護理由によるケアも必要ですが、そんないろいろを全部そっちのけで、

この、チビのよたっぷりは、ベスト3に入るのではないか! と思わせる程のイタズラ元気っぷりでした。


イタズラ元気ナンバーワンのくせして、初めは結膜炎、風邪などに頻繁にかかり、頻繁に通院。

里親さんを心配させてました。


優しい里親さんご一家は、元気過ぎても大変だけど、大人しくても心配だって。


ともあれ、今は大らかに見守ってくださる、里親、きみちゃんちのチビとして、幼児期を元気に過ごしております。


きみちゃん、ご家族の皆様、
本当にありがとうございますドキドキ
これからもよろしくおねがいします



《里親さん名》きみちゃん
《子猫名》チビ

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話は変わりますが、
きみちゃんがお仕事で、チビをつれて来れない時、きみちゃんのお父様(ちょっと強面、昭和の父ちゃん風)がチビを病院に連れてきてくださいました。

「こいつはよたでよたで」と笑ってましたが、入院になっちゃった時、帽子を外して、深々とお辞儀をされました。


「どうかチビをお願いします」って。


帽子を外すって、以前は当たり前の光景だったのに何か新鮮で。


こちらも「お預かりします」って、神妙にお辞儀をしました。



空のかごを抱いて帰って行くきみちゃんちのお父様(ちょっと強面、昭和の父ちゃん風)をチビが不安そうに、目で追っていたのが印象的でした。



ああ、チビは本当にきみちゃんちのチビになれたんだなって。


じんわり嬉しく、あったかい気持ちになりました。




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野良猫が 車にはねられて、道路の端っこに飛ばされました。

猫は、なんとか歩いて草村に入りました。

痛かったし 苦しかった。

だけど 物心ついた時から一人だったし、

いつも人に追っ払われてたから
寂しくはなかったんです。


意識が薄れ始めた時、
ザッザッって音がして、誰かが草村を歩いて来ました。


猫は逃げなきゃって思ったけど
もうそんな力はありませんでした。


ただ、最後の力を振り絞って、シャーって威嚇の牙を剥きました。



脱いだカーディガンにくるまれて、猫は病院に運ばれました。

獣医さんは言ったそうです。


「安楽死させてあげましょう。もう無理だ」


彼女は頼みました。

「なんとか助けてあげてください」


「やれる処置もあることはあります。
ただ、費用がかなりかかるけど 大丈夫ですか?」




残念な事に、彼女には余分なお金はなかった。

呼吸さえも弱くなる猫を抱いて、彼女はアパートに帰る事しかできなかったそうです。



猫をそっと撫でながら、彼女はずっと泣いていました。

猫がかわいそうな事もあったけど、猫一匹助けてあげられない自分の不甲斐なさが悔しくてならなかった。

後で彼女はそう言いました。

彼女は泣けて泣けて仕方なかった。

だけど、その時ふと、撫でる手を止めました。


猫の呼吸がなんだか整ってきた気がしたからです。

人肌に温めた牛乳を口元に持っていったら舐めたから、慌てて病院に電話しました。


「お金はなんとしても用意します。
だから処置をしてください」




あの日から野良猫は
シャーって名前がつきました。



私は今 その友人の自宅兼仕事場にいます。


前足の曲がった、つぎはぎ後の残るグレーの猫。

私達が年を重ねた分だけ、シャーも年を取りました。
彼女のそばで取りました。

シャーを膝に載せて、彼女は休んでいます。
少し疲れてしまったようです。


そんな彼女に私はコーヒーを淹れます。

私がお客様なのに。

だけど私はコーヒーを淹れるのがとても上手いから仕方ありません。


猫はゴロゴロと甘えて 彼女を見ています。


あんなに泣いてくれたから、生きてみようって思ったんだよね。

石を投げられる事はあったって、
可哀想にって、泣いてもらったのは初めてだった。

だから威嚇の牙を引っ込めて、生きる力に使ってみた。


生まれて初めて人の愛情を知った猫は
同時に寂しい感情も知ったはず。

意地悪な私は彼女に言ってやりました。

知らなきゃ
寂しくなんてなかったのに。


「大丈夫、もう決して離さないから」


シャーは彼女のそばで彼女といっしょに生きています。


かけがえのない存在。


あなたがいるから、私は幸せ。


ありがとうね、シャー。
これからもよろしくキラキラ

彼女がシャーをゆっくりゆっくり撫でました。




知らなかったら楽だったのに・・・


人はそんな感情が沢山あります。

知らなければらくだった。


知らなければ楽しかった。


大切な思いであればあるほど、それは苦しく切ない時もある。


「だけどね、生きていく限り、知り続けた方がいいんだよ」

友人が言いました。

「受け皿が小さくて 抱えきれなくなったらこぼして歩けばいい。
必ず誰かが拾うからね」





ここでは日々感じた沢山の思いをいっぱい拾って、いっぱいこぼして歩きたいと思います。




拾っていただけたら嬉しいです。

一緒にこぼしていただけたら嬉しいです。








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