川柳で 韜晦もする 年の功


しばらく、川柳でものを語ろうと思います。


たいしたことが語れるわけでもないでしょうが。


技術論を川柳にするわけにはいきませんので、マジな論述もしていくつもりです。


なお、職業柄、HPを設けておりますのでご参覧いただければと存じます。


 従前よりのHP  → http://miwa-sokuhan.com/ (2017/03/01 リニューアル)


 新たに設けたHP → http://www.eonet.ne.jp/~geiji/



1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>
2018-02-22 13:27:46

大江舜著『団塊絶壁』新潮新書

テーマ:読書生活

団塊の世代がいよいよ70歳台に移行しだして、

いろいろな問題が論じられている。

 

しかしながら、さまざまな論点というものは、

実は、「既に予め予告されてきていた事態」なのであって、

特に目新しい論理というものが提起されているわけでもない。

肝腎の団塊世代というものが、

この種の書物を読んで何かの参考にするかと言えば、

本そのものを読まなくなっているから、

何か「覚悟」が出来ているとか、

何か「段取り」が構想されているとか、

「後始末」が幾分かでも心掛けられているとか、

そんなことは等閑にされたまま、

全く何もなされなきままに、無為に日々が過ごされているわけなのである。

 

「右を向いても左を見ても、真っ暗闇じゃぁござんせんか・・・」(傷だらけの人生 by 鶴田浩二)

1970年代を象徴する東映ヤクザ映画が、

その後に続く団塊世代のエトスを予め獲得していたのではないか?と思えるのである。

 

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-02-14 17:31:20

西郷どん:NHK

テーマ:職人暮らし

何やら訳の分からないドラマになってきている。

 

渡辺謙さんの登場シーンは本格時代劇の雰囲気が醸し出されるのだが、

それ以外は、底の浅いギャグ・ドラマの佇まい。

 

私の個人的な、全く私的な好みでいうと、

大河ドラマというものは、

登場人物によってその「時代」を語らせよ、と思っていいるのだが、

幕末の、あの薩摩藩で、

男女平等思想を抱く女性というものが何かを語り得たのかどうか、

私は懐疑的だし、

何か現代思想に引き付けて台詞が構成されるというのは、

アナクロニズムというよりも、むしろ、イデオロギー劇に堕ちてしまう。

 

登場人物のすべてが、

非常に栄養状態が良好な、むしろ、メタボ気味なのだが、

これでは、幕末の下級武士や郷士といった連中の困窮や、

農民の飢えと圧政の下での虐げられた苦衷というものが表現できていなくて、

(まぁ、そんなことを言い出すと、きりがなくなるのだが)、

昔、日本テレビ系の「シャボン玉ホリデー」で、

ザ・ピーナツ演じる娘が、ハナ肇演じる寝たきり老人に対して

「おとっちゃん、おかゆができたよぅ~」という台詞が思い起こされて、

頭の中を駆け巡り、

「西郷どん」すべてがギャグになっているんだと、そう見たりしている。

 

登場人物が多すぎるというか、

西郷家の家族全員を登場させないと成り立たないのか、

明治の元勲の若かりし頃を漏れなく描かないといけないのか、

明治維新150年という巡り合わせを踏まえて、

江戸幕府や朝廷の公家たちの主要な人物も漏れなく登場させないといけなくなるだろうから、

公平・中立なスタンスを採らないといけないNHKとしては、

全員漏れなく台詞を持たせて登場させろと言うことになりかねない。

 

つまり、

明治維新史を「薩・長史観」から語るということに異論が多く提起されだしている現在だから、

その点をどう配慮していくか、あるいは無視していくか、

こういった点が改めて問われたりするのである。

 

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-02-12 14:01:15

ハサミゲージの製作公差の問題

テーマ:ゲージ屋の仕事

ハサミゲージの製作公差について

 

[1]一般的なJIS規定による製作公差の決まり方

 

 例えば、φ82  0/-0.04 を例に採ります。
 この場合、ゲージの製作公差は、
    通り  基準寸法:82.000   製作公差:-2.0μm~-8.0μm
        止り    基準寸法:81.960   製作公差:+3.0μm~-3.0μm  となり、
 実際の製作寸法は、それぞれの製作公差の最小値の、
    通り  81.992
        止り    81.957   となるよう、製作します。

 

[2]嵌め合いの関係にないワークの製作公差の考え方

 

 JISの規定によるゲージの製作公差というのは、穴軸の嵌め合いの関係にあるものの互換性を保証するためのものですが、そうではなくて、「寸法規格の上限値(最大値)を超えてはならず、下限値(最小値)を下回ってはならず」、つまり、規格寸法範囲内にあるようにコントロールすべき場合があります。

 

 具体的には、上記の例に基づくと、 
    通り  基準寸法値:82.000   製作公差:0~-3μm
        止り    基準寸法値:81.960   製作公差:+2μm~0
  つまり、最大値81.997~最小値81.962の範囲内でワーク寸法をコントロールすれば、当該ワークの仕上がりは規格に合格すると判断されるわけです。
 (JIS規格規定での嵌め合いの場合は、最大値81.992~最小値81.957の範囲内でワーク寸法をコントロールしますから、最悪の場合、ワーク寸法値が81.958となっている場合、これを「合格」と判断してしまうわけです。)

 

 このような場合のゲージ製作公差の決め方に何かルールがあるというわけではありませんから、ワークの製作許容差の範囲内で、出来るだけ不合格品を出さないように、ワークの加工工作精度等の条件を勘案して定められます。

 

[3]ゲージの製作公差の決まり方とゲージの製作実務

 ゲージを製作する場合、どういった寸法値で仕立て上げるかが問題になりますが、ゲージの製作公差がどのように定められているかによって手間が掛かるとかの問題は生じません。ユーザー様の側で適式に製作公差を指定・指示いただければ便宜です。

 

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-02-09 08:25:28

語り遺しの記(10) 定盤ラップの技法

テーマ:語り遺しの記

定盤ラップというのは、

作業台上に据え置いた定盤をラップ工具として、

その定盤上で、加工すべきワーク面を摺り合わせて、

ワーク表面を平滑に仕立て上げる技法である。

 

ハンドラップの場合は、

ワークを固定して、

そのワーク表面をラップ工具で摺り合わせて加工するものであるから、

定盤ラップの場合とは丁度真逆の関係になるが、原理的には「等価」である。

 

定盤ラップに取り組む場合、

ラップ工具としての定盤を準備しなければならないのだが、

鋳物製定盤を採用するのが先ず一般的である。

 

表面を平滑に仕立て上げた鋳物製定盤上に、ラップ砥粒とラップ油を混和したものを摺り込む。

鋳物製定盤上にある凹凸の凹部分にラップ砥粒粒子が嵌り込んで、

その砥粒粒子が固定砥粒となってワーク表面をラップするというメカニズムなのだが、

そのため、ワークの表面加工の成否はラップ定盤の表面の仕立て上げレベルに左右される。

 

鋳物製定盤を製作する場合、

その表面を平面研削盤で研削加工するのだが、そのままでは表面の面粗度が粗すぎる。

そのために、定盤表面の面粗度を平滑にするためには、GC砥石で摺り合わせて平坦度を上げていく。

ラップ定盤として活用する場合、その表面仕立ては、ごく僅かに中高に仕立て上げないといけない。

どの程度に中高にしなければならないかは、定盤ラップを行う際の作業者の作業スタイルによる。

通常、定盤ラップといえば、jその定盤の平面度をワーク表面に写し取る作業だと理解されがちだが、

従って、ラップ定盤の表面は厳密に平面となるように仕立て上げられなければならないとみなされがちなのだが、

そういう定盤仕立てをすると、ラップに際してワーク表面の側に「丸味」を生じて、平面の実現が難しい。

 

仕立て上げられたラップ定盤上に、ワークが焼き入れ工具鋼の場合、

ラップ砥粒(#3000・WA)とラップ油(スピンドル油)を混和したものを、アルカンサス砥石で擦り込む。

アルカンサス砥石を使うのは、

アルカンサス砥石表面にWA砥粒粒子が刺さり込んで、それ以上刺さり込めないと、

残余のWA砥粒粒子が鋳物製定盤表面の凹凸の凹穴に均一・均等に嵌り込ませることが出来るからで、

アルカンサス砥石自体が鋳物製定盤表面を研磨するというわけではない。

このアルカンサス砥石の働きは、後で述べる燐青銅製定盤+ダイヤモンド砥粒の場合でも顕著になる。

 

「空ラップ」という技法がある。

技法というには大仰なものなのだが。

「空ラップ」というのは、定盤ラップの最終段階として、

定盤上に残留しているラップ砥粒やラップ油をよく払拭して、

その定盤表面でワーク表面を軽くラップすると、

#3000WA砥粒を使っていても、ほとんど鏡面に近く仕上げられるという作業をいう。

鋳物製定盤の表面それ自体にワーク表面に対する鏡面加工能力があるのではないかと、

そういった「誤認」を招いたりするのだが、

ことの実相は、

鋳物製定盤上の凹凸の凹に嵌り込んでいるラップ砥粒粒子の切り刃の突端が、

僅かに定盤表面上に頭を出している状態がワーク表面に対して作用しているためで、

厳密な意味で「空ラップ」になっているわけではない。

 

鋳物製定盤をラップ工具として活用できる場合というのは、

実用的には、#3000WA砥粒を活用する場合がその限度であろうと考えている。

 

いっそう微細で精密な定盤ラップというものを考えると、

ダイヤモンド砥粒の活用ということに行き着く。

ダイヤモンド砥粒にはさまざまな粒度のものが用意されているが、

3μm以下の微細な砥粒を使う場合には、鋳物製定盤では不適と考えられる。

そのため、「燐青銅製定盤」を用意する。

 

この場合のラップのメカニズムというのは、

燐青銅製定盤の場合は、鋳物製定盤のような表面凹凸がないから、

燐青銅製定盤表面にダイヤモンド砥粒を直接に刺さり込ませて、

その刺さり込んだダイヤモンド砥粒が固定砥粒ラップとしてワーク表面に対して作用する。

ダイヤモンド砥粒を定盤表面に刺さり込ませるためには、アルカンサス砥石を使う。

ダイヤモンド砥粒を刺さり込ませての固定砥粒ラップというと、

定盤表面の砥粒保持力が問われるのだが、

このような場合、「銅」とかの比較的軟らかな金属がよく採り上げられるのだが、

ラップ定盤とするには、あまり芳しいものとは言えないと考えている。

ラップ工具(研磨工具)として、遙か以前から活用してきている素材なのである。

 

燐青銅の厚板というものは非常に高額になるから、

3mm程度の薄板を購入してきて、

鉄材を土台にしてそこに燐青銅板を接着剤で貼り付けて定盤にすると安価で済む。

燐青銅製定盤の表面仕立てには、鋳物製と同様に、GC砥石で仕立て上げる。

 

燐青銅製定盤の威力・効用というのは大きなものがあって、

ワーク表面がブロックゲージ表面と確実にリンギングするといったレベルに仕立て上げることが可能になる。

なお、理屈の上で、

リンギングする程にワーク表面が仕立て上げられるということは、

定盤表面とワーク表面とがリンギングしてしまって、

ラップ作業が出来なくなるのではないか?と考えられそうなのだが、

定盤上に刺さり込んでいる砥粒粒子の特記によってワーク表面が「浮かされている」わけだから、

ラップ作業に際して、定盤面とワーク表面との間でリンギング現象が生じるというわけではない。

 

定盤ラップという技法では、

ラップ作業それ自体は単純な労務でしかないように見られがちだが、

その前提に、定盤表面というものがいかに仕立て上げられなければならないかという点に、

かなりの実務的な経験の蓄積を要する。

 

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-02-07 09:05:32

語り遺しの記(9) 鏡面ラップと量子力学的世界観

テーマ:語り遺しの記

「鏡面ラップ」というと、

普通の用語例では「ワーク表面でのラップ痕が判別できない程に平滑であること」をいうのだが、

私らの世界では、鏡面ラップで仕立て上げたワーク表面同士がリンギングする状態を云う。

言い替えると、

鏡面ラップ仕立てをした表面同士は必ずリンギングを伴うものであり、

リンギングをしない表面というものは、

いかに仕立て上げられていても、単に磨き上げられただけということでしかない。

とは言え、鏡面ラップが出来なければ、その先のリンギングする表面というものは実現され得ないから、

 

ただし、鏡面であるという状態と、リンギングするという表面性能とは、実は相補的なものであって、

鏡面に仕立て上げられていなくとも、その段階で、リンギング力が生起するという事態があるわけで、

例えば、#3000程度で仕立て上げられた表面が相互に密着力を生起するということは認められるわけで、

つまり、ワーク表面の面粗度とその平面度というものがリンギング力の根源になるということが示唆される。

 

リンギング力が生起すると云うことが舗装されているものというのは、

私らの生活圏にあっては、ブロックゲージ表面がそれに該当する。

従って、ブロックゲージ表面に相当するワーク表面をいかに仕立て上げるかが、

ラップ技能者の技能目標になる。

 

ブロックゲージの国産化に初めて成功したのは、戦前での故津上退助氏の功績であるのだが、

その表面の加工技術というものはもちろん公開はされていなかったようで、

そのような鏡面ラップ仕立てがどのようにして可能になっているかという加工技術と、

その結果としてのリンギングという現象はどのようなことが意味されているかという物性論とが、

戦前・戦中での確軍需工場でのゲージ場で話題にされていたそうである。

当時の軍需工場でのゲージ場には、

ヨーロッパから輸入された光学検査機やブロックゲージも配置されていたそうで、

それらを駆使しての議論が盛り上がったそうである。

 

結論を云うと、

リンギング力というのは「原子間引力」の表れであって、

二つの面の間には何の挿雑物もなく、何の凹凸もなく、相互に接着していけば、

その両面間に原子間引力が働くということだろうという仮説であった。

 

私たちが立っている物質界というものは、

「強い力」と「弱い力」、「電磁気力」と「重力」という4つの力で構成されており、

個々の原子はプラスの電荷を持つ原子核とマイナスの電荷を持つ電子とで構成され、

電磁気的にはニュートラルなものとなっているから、力として作用しない。

(こう言いきれるのかどうかが疑問があるのだが)

残るのは「重力」であって、

リンギング力というのは吸着力(引力)であるから、

二面間には重力が作用していると考えざるを得ない。

しかしながら、他方で、

物質が物質として形づけられているのは、結晶構造に見られる如く、一種のエネルギー状態であるから、

引力という力の作用と、エネルギー状態というものが相乗的にリンギング力として現れるという考え方も成り立つ。

 

現代物理学の知見に基づいた議論はこれからも可能だろうが、

戦時中のあの時代において、

ゲージ場の徴用工たちが量子力学的世界観の入り口に立とうとしていたことは認めないといけない。

 

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-02-06 14:03:25

なるほど、この世は悪意に満ちている

テーマ:職人暮らし

書店の雑誌コーナーなどでは、

日本株は30000円を目指すとか、仮想通貨は絶好の投機対象だとか、

とにもかくにも、

資金を投ずれば誰でも儲けが得られるとばかりに煽ってきていたのだが、

どこの誰かは分からないが仮想通貨が丸ごとぱくられたり、

株式市場では市況が泥沼に急落したりして、

投機に走った善男・善女は為す術もなく茫然自失に陥らざるを得ない。

 

いつか来た道というか、いつか見た光景と言うべきか、

お気の毒な情況と言うほかない。

といっても、

こんな物言いも、昔からこんな機会には常に語られてきたわけで、

あれもこれも、何を今更と、黙ってやり過ごすにしかずといったところか。

 

 

 

 

いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2018-02-01 09:25:00

語り遺しの記(8) ハンドラップという技法

テーマ:語り遺しの記

ハンドラップという技法は、かつてはゲージ製作技法として特有の意義を持つものであって、

旧帝国陸海軍の造兵敞でのゲージ場や専業メーカーにおいて技術・技能が積み上げられたのだった。

ゲージ製作技法として「この方法しかない」「この方法でのみ製作可能である」と教育訓練されたから、

一義的に、言わば権威的に移入された技法体系であったと言える。

その一方で、各地の軍需工場に設けられたゲージ場に徴用工が集められ、

さまざまな経歴を持つ職人たちが衆知を集めて改善に取り組んだ結果、

「上からもたらされた技法」に対して、「下から編成された技法」が並立されることとなった。

何しろ、「上からの技法」は困難な特殊技法であって、適応が難しい。

ハンドラップ技法にはさまざまなバリエーションがあり得て、さまざまな未来への可能性を持つものであったのだが、

主流派・正統派という技法が承認された段階で、

ハンドラップ技法とはこういうものであると一義的に限定され、権威づけられたのだったが、

そうは言い切れるものではないのであって、

同じ結果を実現でき得る技法というのは複数成立し得るのであるから、

その複数の選択肢から最も目的適合的な方法を選択するという姿勢が求められる。

しかしながら、「この方法が唯一無二の絶対的なものである」というスタンスでなければ、

実務的な製作業務の遂行や、後継の教育・育成が出来ないから、

「ハンドラップ技法とは、ハサミゲージ製作の唯一可能に特化した技法である」と自己規定するに至ったのであった。

 

私のスタンスとしては、このような多数派・正統派の自己規定による限りはその後の発展が見失われ、

自己閉塞に陥ったと見ているし、

徒に煩瑣な超絶技巧を誇るといった隘路に陥ったと見ている。

 

以上のような現状を踏まえて、ハンドラップ技法の「再構築」を心掛けたのだった。

 

ハンドラップ技法を構成する要素として、遊離砥粒ラップ/湿式の場合、

(1)ラップ砥粒の種類と粒度

(2)ラップ工具の材質と表面性状

(3)ラップ油の油性

(4)ラップに際しての加圧力

(5)ラップ加工の際の速度

(6)ラップの被加工物の物性、

という諸点が摘示出来る。

 

(1)のラップ砥粒の種別には、WA、GC、cBN、ダイヤモンド・・・といった市販のものが活用される。

焼き入れしたSK工具鋼に対しては、WAが最も有効で、コストも低廉で済む。

ただし、その有効性は、ラップ工具として鋳物を採用している場合で、

WA砥粒が有効なのは#400~#4000程度と考えて良い。

GC砥粒を使うと、#6000~#8000程度にまで可能となる。

 

(2)のラップ工具として、鋳物製を採用するのが専らであるのだが、

原理的に、ラップ工具表面がラップ砥粒を保持でき得るかどうかが決め手になるから、

#4000を超えるような微細な砥粒を使う場合、鋳物製では不適で、

いわゆる人白砥石を使えば解決する。

人白砥石を採用したのは、入手が容易で比較的廉価で済むという利点があるからで、

表面の砥粒保持力という点から言えば、人白砥石以外にも選択の余地と幅はあるだろう。

 

(3)ラップ油の油性については、

ラップ加工に際しての加工面の「潤滑」という必要性に着目しなければならず、

油の種類には夥しいものがあるから、

必ずしもスピンドル油にこだわるべき筋合いでもない。

 

(4)の加圧力の問題については、

加圧力を高めればラップ砥粒のワーク表面への切り込みが深くなり、

加圧力を軽減すれば切り込みが浅くなり、

砥粒の切り刃をワーク表面を擦過させるに留めるという芸当が可能だと期待されたりもするのだが、

必ずしもそうとは言い切れない側面もある。

ハンドラップ技法の場合、一定の範囲内で、この加圧力を加減できるという点がラップ加工の精度を決定づける。

 

(5)のラップ速度の問題は、

ハンドラップの場合は手作業であるから、手の運動速度以上にはラップ速度は上がらない。

そんな限定された速度でラップ加工が可能になっているということは、

この技法でのラップ効率が非常に高いということを意味しているわけで、

実は、ハンドラップ技法ではない機械ラップの場合の稼働速度という点に注意が払われるべきことが示唆される。

 

(6)のラップの被加工物の物性という点は、

従前の多数派・正統派の技法では、

焼き入れした(HRc60~62)のダイス鋼に対して全く通用し得ないという点でその限界が露呈される。

 

以上の点に対して、固定砥粒ラップ/乾式の場合は、

(1)ラップ砥粒の種類と粒度       cBN砥石(粒度で#400~#20000)

(2)ラップ工具の材質と表面性状    ラップ砥粒=ラップ工具=cBN砥石

(3)ラップ油の油性             乾式ラップだから。ラップ油は使わない

(4)ラップに際しての加圧力        加圧力は、同じく手作業だから、同じ

(5)ラップ加工の際の速度                  ラップ速度は、同じく手作業だから、同じ

(6)ラップの被加工物の物性、            SK工具鋼のみならず、ステンレス鋼やダイス鋼に対応できる

 

ここではCBN砥石を特記しているのだが、

WA砥石やGC砥石であって構わないのであって、理屈は全部に通底している。

一見して分かるように、固定砥粒ラップ/乾式という技法は従前技法と比べても、おおよそ簡便化されている。

 

砥石の研磨力はその表面性状で決定づけられるから、

固定砥粒ラップ/乾式の技法の有効性(ラップ加工の加工効率)は、当該砥石の「目立て」の具合で決まる。

この「目立て」の技法が確立されることに伴って、

ハサミゲージの仕立て上げに要する全工数が決まってくる。

 

以上のこと事によって、私にとっては、従前よりの多数派・正統派のハンドラップ技法というものは意味を失い、

つまり、正統か異端かの区別は意味を失い、完全に超克されたものと考えている。

 

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-01-30 09:21:45

語り遺しの記(7) ハサミゲージの営業スタイル

テーマ:語り遺しの記

ハサミゲージの発注に際して、特に材質指定がなされないケースが多い。

これは、当該ゲージ・メーカーが標準的に製作しているゲージ仕様に委ねれば、

信頼に足る品質のものが最も経済的な価格で提供されるだろうという期待があってのことだろうが、

ゲージ・メーカーに側でも、特に材質を明示することもない場合が多いようである。

 

特別なユーザー要求として、

材質としてSKS3、総焼き入れ、表面処理として黒染めが指示される場合があって、

それに加えて、サブゼロ処理が要求されている場合もある。

ゲージの耐摩耗性を重視し、表面発錆を防止し、併せて、寸法形状の経年変化を防止すべしという、

そういうスタンスが明示されているのである。

 

しかしながら、このことによって何が解決されているかを考えると、

SK工具鋼によるゲージ製作では余り根本的な改善が図られるとは考えにくく、

従って、これらの付加的な処理に対応できるならそのまま求めに応じればよく、

(コスト・アップの点はそのままユーザーに転嫁できるから、メーカー側の不利益はない)

ユーザー要求を充足できるゲージ・メーカーというものは頼れる存在なのである。

 

これらのユーザー要求に対して、

ダイス鋼製にすれば付加的処理も全く不要だと逆提案すると、

ユーザー要求をそのまま実現しない(できない)メーカーであると断ぜられるのがせいぜいで、

これこれの要件を満たしたSK工具鋼製ゲージを購買手配しろと任ぜられた担当者が、

ダイス鋼製を購入するべく決断はとても出来まい。

そもそも、ダイス鋼製ハサミゲージ製作を標準とするメーカーが存在しているという事態が、

常識的には有り得ないとみなされているから、

何か誤魔化されたという印象すら抱くようである。

 

そういった経過を踏まえつつ、

ゲージの発注に際して、特に材質の指定もなく、付加的処理の指定も特になされていない客先に対して、

当方の標準材質としてダイス鋼製を提供していますと、いわば「押し掛け」で提供している。

それが成り立つのは、

SK工具鋼(SKS3/SK3)製のハサミゲージの場合とまったく同一価格で提供するからで、

このことでクレームをつける客先というものは有り得ない。

 

ゲージ業界での価格決定原理というのは、

原則的に「コスト積み上げ方式」に基づくものであり、

そこに、同業他社との競争やユーザー側の享受するべきメリットを加減して決定されるのだが、

ダイス鋼製がSK工具鋼製と同一価格で提供できるはずがないというのが従前からの「常識」になっている。

そのため、ダイス鋼製ハサミゲージの提供に際しては、

それは営業戦略的なダンピングだと不信を招きそうなことであったにしろ、

そのスタンスを今日現在まで維持してきたわけだから、

ダイス鋼製ハサミゲージの価格はSK工具鋼製と横並びに出来るという原則が信頼されて、

今度は、逆に、SK工具鋼製はむしろ無駄に高価格にされているのではないか?という疑念を生む。

その疑念は正しいのである。

 

ハサミゲージ製作の一般的な技法である遊離砥粒ラップ/湿式の技法は、

修得するに長期の修業を要し、継承するにも著しく困難をきたしているのだが、

その結果の高価格というものは、

ゲージ・メーカーにとっても過大な利潤を獲得できるということにはなっておらず、

いわば「生業(なりわい)的なレベル」から超脱できないことになっている。

遊離砥粒アップ/湿式の技法の「宿痾」といえるものが現在に至って露呈していると言える事態なのである。

ダイス鋼製ハサミゲージと、その製作技法である固定砥粒ラップ/乾式の技法の圧倒的な競争力は、

その競争力というものが実証問題であるから、いっそうの努力は必要なことになっている。

 

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-01-29 08:09:16

語り遺しの記(6) 固定砥粒ラップ/乾式の技法

テーマ:語り遺しの記

ハサミゲージの製作のルーツを辿ると、

陸海軍の造兵敞のゲージ場や、軍御用達のゲージメーカーで製作されたのだったが、

当時の製作技術がどのような段階にあったかは、現在からは想像しがたい。

SK工具鋼が潤沢にゲージ製作に供給されていたとは考えにくいから、

S45CやS55Cレベルの焼き入れ可能な鋼材で製作されたと考えた方が実態的だったろう。

その当時の基準的な製作技法として、

鋳物製ラップ工具+WAラップ砥粒という、遊離砥粒ラップ/湿式の技法が権威的に確立されていたようなのだが、

旧い教科書等を参照すると、当時のラップ砥粒として酸化鉄(紅殻)や酸化クロム(青粉)が例示されているから、

WA砥粒が提供されていたかどうかはよく分からない。

WA砥粒を採用すると、一般的な焼き入れ鋼や炭素工具鋼に対するラップ加工はかなり容易だから、

昭和40年代頃、S45C1やS55Cで製作されたハサミゲージというものを耳にすることもあったから、

当時のJIS規定で、ハサミゲージの素材規定として、

SK4相当もしくはそれ以上の材質で、焼き入れ硬度HRc58以上という規定は、

「標準」を明示することによって粗悪品を淘汰するという趣旨が読み取られるべきものと言えただろう。

 

ハサミゲージの製作技法として、

WA砥粒を用いた遊離砥粒ラップ/湿式の技法で対応できることは確かなことなのだが、

「対応できる」「製作可能である」ということと、経済的な採算ベースに乗るということは別問題で、

各メーカー独自な工夫や改善が図られた。

もっとも、その工夫や改善によって、ハサミゲージの製作技法が難しくなりすぎて、

その技術・技能の継承がほとんど不可能か、長期に亘る修業を要するという事態に至っている。

 

私らではどうししてきたかと言うと、

遊離砥粒ラップ/湿式の技法での最終仕上げ代を最少限に留めるべく、

その下拵えとしてWA砥石を使っての砥石ラップの技法を採っていた。

砥石ラップで下拵えをするということは、砥石ラップで最終仕立て上げが可能だということを意味するのだが、

砥石ラップでは、最終仕立て上がりの精度条件に不足し、

砥石表面の目詰まりの解消に煩瑣な手間を要するといった欠点があって、

最終的には、どうしても、遊離砥リュラップ/湿式の技法に依らざるを得ない。

以上の経過を辿って、固定砥粒ラップ/乾式(砥石ラップ)と遊離砥粒ラップ/湿式の技法は、

ハサミゲージ製作技法として、「併用」することで最も有効な工程手順が確立できたと言えるのだった。

 

遊離砥粒ラップ/湿式の技法の「上限」というものは、言うまでもなく、鏡面ラップが実現できるか否かになる。

遊離砥粒ラップ/湿式の技法に依ると、

遊離砥粒の切り込みによってラップ工程が進められるから、どうしてもラップ痕が残る。

そのために、ラップ砥粒の粒度をどこまでも微細なものにしていかなければならないから、

ラップ砥粒を統御するべきラップ工具表面の面性状が問われることになり、

つまり、遊離砥粒ラップ/湿式の方式を徹底していけば、その「限界」というものが顕現してくる。

従前技法では、焼き入れ可能鋼材(炭素工具鋼)に対して乃ラップ加工は可能であっても、

適用可能領域はその範囲に留まるに過ぎないということなのである。

 

ハサミゲージに対するユーザー側からの要求として、

「防錆」と「耐摩耗性」の向上ということがある。

例えば、ハサミゲージが対応すべきワークが、

焼き入れしたクロム鋼で研磨仕上げを行ったものであるという場合、

その表面は加工砥石の性状が反映されて、微細な凹凸が一種の刃物として作用し、

ハサミゲージ表面を損耗させるのである。

焼き入れクロム鋼(ワーク)と焼き入れした炭素工具鋼(ゲージ)とで表面を摺り合わせれば、

炭素工具鋼側の方が損耗するであろうことは容易に想定できる。

従って、このような事態に対しては、

耐摩耗性がいっそう強化されたダイス鋼の採用が考慮されるべきことになるのだが、

そのための技法として、

cBN砥石を用いての固定砥粒ラップ/乾式の技法に依る以外には無いことが分かる。

金型の製作技法との共用性という技能テーマである。

 

cBN砥石を用いての固定砥粒ラップ/乾式の技法に依れば、

その技法が適用可能なゲージ材質として、

SK4/SK3/SKS3といったSK工具鋼のみならず、

SUS420J2といった焼き入れしたステンレス鋼に対しても有効で、

当然なことながら、対象材質を問わない有効性を発揮する。

鏡面ラップも簡単に実現されるから、技能の限界というものを余り意識せずに済むのである。

 

固定砥粒ラップ/乾式の技法というと仰々しいのだが、

要するに、cBN砥石の使いこなし技能に集約される内実であるに過ぎない。

砥石の使いこなしという技法は人類史と共にあった程の古い歴史の経過を背景にしているから、

改めて修得するとなると、実は、非常に容易なのである。

従って、ゲージ業界の内部からのみ技術・技能の継承が可能だと考えるまでもなく、

他業種からのゲージ製作技法への参入が容易に可能となるだろう。

 

新しい酒は、新しい革袋に収めないといけない。

 

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2018-01-28 16:31:35

語り遺しの記(5) 技能世界を考える三段階説

テーマ:職人暮らし

ハサミゲージの製作技法というのは機械化・自動化が全く不可能な手作業に依っている。

従って、その技術・技能そのものの評価判断について、あるいは、技能承継に際して、

何がどうかといった論点を立てることも難しいとされている。

 

こういった場合に、私が依拠している方法論的視座というものは、

いわゆる「宇野理論」での「三段階説」である。

 

「原理論」として、ハンドラップ技法の心身問題、ラップ加工の原理といったものが考察され、

「段階論」として、技法が歴史的にどのように展開されてきて、何が克服されるべき課題となったかが考察され、

「現状分析論」として、ハンドラップ技法がこの社会で占めている社会経済的な位置取りを考える、

・・・というように、一応の区分を設定する。

もちろん、社会科学でもなく、理工学的なエンジニアリング論でもなくて、

単に、思考経済的な「枠組み」を設定するといった程度なことなのだが、

職人の技能世界といった、言わば「経験と勘」で語られる状況から一歩進み出て、

全体像の構成と構造が明らかにされることによって、改善されるべき方向性が明確にされる。

 

私が手掛けた仕事というのは、

遊離砥粒ラップ/湿式の技法から固定砥粒ラップ/乾式への技法展開と、

それを促した、SK工具鋼製からダイス鋼製への転換ということに尽きるのだが、

これによって何がもたらされたかと言えば、

戦中・戦後において一貫してゲージ製作の「コア技法」としてあり続けや遊離砥粒ラップ/湿式の技法が、

その歴史的な使命、あるいは、存在意義を喪失したということであり、

従前技法に縋っている限り、その未来はないという「現実」である。

その意味では、抱いた危機感」には強いものがある。

 

社会科学の学的使命というのは、

来るべき未来を必然として理解し把握するべきものであったはずなのだが、

いつの間にやら、世界を因果の連接と把握する「システム思考」とやらに呪縛され、

因果の連接として理解する限りは、現実への埋没しかもたらされない。

昨日までの如く、明日からもこのまま継続していくという思考である限りは、

現状の打開は量的な拡大でしか出口がないという発想に帰結するから、

「自社で製作出来ないならアウトソースすれば解決する」ということになり、

それで何とか凌いで行くという話になってきている。

 

私らゲージ仕上げ職人には、

もっとなすべき課題に直面しているであろうし、

もっと果たせるべき役割を担っているだろうと考えるのだが、

このまま私ら団塊の世代がこの社会から引退していけばそれぞれの技能は消滅する。

消滅させても構わない、何も残す必要もない、と割り切る考え方もあるのだが、

そんな考え方も当然あり得ると踏まえつつ、

残るものは残るべき必然性をそもそも有していたと考える必要があるだろう。

 

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。