「山番の小屋」の中で語られていった源三の「物語」は、「戦国時代」
に遡り、岬の町に伝わる『伝説』と『伝承の儀式』の背景と、その成り立
ちから始められた。
太古の昔から「隆起と「沈降」を繰り返し、「歴史」を寸断して来た地形
は、この半島と岬に、深い沈黙の「物語」を敷きつめていた。
火山性の脆い岩礁に出来た、幾つもの『海蝕洞』がある半島は、陸路
を絶ち、、出自が不明な民や、高度な知識と技術を持った者達が住み着
くことを許していた。
ただ、「海」だけが、生きる糧として共有されていたのである。
そして、 歴史の寸断と、『伝説』の継承は、「海」と「山」の間で幾度となく
繰り返されて行くこととなっていった。。。
「海難事故」の多発と、鎮魂の祭り、そして神々への祈りは、海を通して
繋がり始めたこの半島の民の間でいつしか「伝承」され、「部族」を越えた
交わりを欲するまでになっていった。
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岬の「洞窟」に漂着した、一艘の小船。その中に横たわる「武家の娘」の
怪しい姿態と、漁師の若者の話は、「源爺」によって「過去の物語」として
語られていったが、、この岬の「洞窟」の中で、今まさに時空を超えて起き
ようとしている事に「重なって」いた。
『伝説』は、「過去」として語られながら、優れて「今日的」な課題をその
底に内包している。。。
秘伝の『儀式』の容態も、「源爺」の鬼気迫る声音の中で繰り広げられて
行った。
その時、「源爺」達5人の居る「山小屋」を取り巻く大気に「妖気」が迫り、
その「大いなる意思」を貫こうとして襲い掛かって来た。。。
岬の『洞窟』に出現した、深い「意思」は、「水の道」を通って、山小屋の5
人を襲い、「祠」へと向かったアキラと靖子の二人に乗り移ろうとして来た。
アキラは、戦国の世の、岬の年若い漁師の目を持たされて苦悶し、傍ら
の靖子に取り憑いて来た、岬の岩礁に漂着した謎めく武家の女の、妖しい
姿に翻弄されようとしていた。
靖子はこの時、幼少時代の自らの「禁忌」を開示させられ、おぞましい父
の「顔」を目にしてしまう。
二人共、圧倒的な「力」の前にひれ伏して行く他にないように見えた。。。
洋介が岬の『伝承』に関心をもった一人として「源爺」に深く関わり、アキラ
と靖子を叔母の芳江と共に、この山小屋に連れて来る事になった切っ掛け
は4年前の「山小屋」の建替えと、夏の日に聞いた「源爺」の話である。
今、改めて4人に語られ出した「伝説」の話は、時空を超えてこの岬に現出
しようとする、「力」の本源に触れるものであった。
ミオと、信彦が岬の『洞窟』に誘われて出逢おうとした、その事もまた、
「大いなる意思」によって、二人の「事故での出会い」のはるか前から企
まれていた。
源三の「海難事故」での経験、アキラの『洞窟』での恐怖の体験、洋介
が気付き、解明しようとした『伝承』のこと、・・・・『伝説』の総てが、「過去」
であると同時に、今まさに岬の街を飲み込み、時空を超えて「現出」しよう
とする、「輪廻と転生の物語」そのものなのであった。。。
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――そして、今また、「源爺」によって発見され、
守り抜かれた「祠」の奥の「洞穴」の壁に
「アイツ」は沁み出すように現れ始めていた――