森の泉

  


   「」への訪問者の方のために、「物語」の道しるべとなる

             『登場人物』をご紹介します


――カラー表示は岬の「洞窟」に深く関わる人々――


ミオ・・宇田川 澪(宇田川孝三、芳江の養女):外海の「岩礁」で孝三に発見された

信彦・・畠中 信彦(畠中義彦、由美子の養子):富士の「樹海」で由美子に出会う

 

靖子・・富永 靖子(富永京子の長女):信彦の恋人(イベントコンパニオン)


アキラ・国仲 晃:ミオ、洋介の同級生(ミオを追いながら、靖子に惹かれていく)

洋介・・・小林 洋介:アキラの幼馴染、宇田川芳江の甥(岬の町役場に勤める)


源爺・・大川源三:岬の漁師(海難事故で恐怖の体験をし妻子を亡くして山に籠る)

 佳世・・源三の妻:二人目を源三の事故のショックで流産、55歳で早逝する

 恭一・・源三の長男:古風な源三に反発して、岬の街を出たまま帰らない

 

孝三・・宇田川孝三:岬の漁師(ミオを岩礁で発見し、連れ帰って養女にする)

芳江・・孝三の妻:洋介の叔母(ミオの背後に海からの大きな「力」を感じる)


畠中義彦・・信彦の養父:ツア-コンダクター(樹海で由美子と信彦を助け同居)

畠中由美子・・義彦の内妻:樹海で発見した信彦の泣き声に自殺を思い留まる


富永京子・・靖子の母:靖子が小学4年の時、山梨を出て西東京で慶介と棲む

富永慶介・・靖子の義父:酒飲みだが、心根は優しい気の弱い男


有田良治・・靖子の実父:妻の京子に暴力を振るう(幼い靖子を犯していた)



       

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 「山番の小屋」の中で語られていった源三の「物語」は、「戦国時代

に遡り、岬の町に伝わる『伝説』と『伝承の儀式』の背景と、その成り立

ちから始められた。


 太古の昔から「隆起と「沈降」を繰り返し、「歴史」を寸断して来た地形

は、この半島と岬に、深い沈黙の「物語」を敷きつめていた。


 火山性の脆い岩礁に出来た、幾つもの『海蝕洞』がある半島は、陸路

を絶ち、、出自が不明な民や、高度な知識と技術を持った者達が住み着

くことを許していた。

 ただ、「海」だけが、生きる糧として共有されていたのである。

そして、 歴史の寸断と、『伝説』の継承は、「海」と「山」の間で幾度となく

繰り返されて行くこととなっていった。。。


 「海難事故」の多発と、鎮魂の祭り、そして神々への祈りは、海を通して

繋がり始めたこの半島の民の間でいつしか「伝承」され、「部族」を越えた

交わりを欲するまでになっていった。


******************************


 岬の「洞窟」に漂着した、一艘の小船。その中に横たわる「武家の娘」の

怪しい姿態と、漁師の若者の話は、「源爺」によって「過去の物語」として

語られていったが、、この岬の「洞窟」の中で、今まさに時空を超えて起き

ようとしている事に「重なって」いた。


 『伝説』は、「過去」として語られながら、優れて「今日的」な課題をその

底に内包している。。。


秘伝の『儀式』の容態も、「源爺」の鬼気迫る声音の中で繰り広げられて

行った。

 その時、「源爺」達5人の居る「山小屋」を取り巻く大気に「妖気」が迫り、

その「大いなる意思」を貫こうとして襲い掛かって来た。。。


 岬の『洞窟』に出現した、深い「意思」は、「水の道」を通って、山小屋の5

人を襲い、「」へと向かったアキラと靖子の二人に乗り移ろうとして来た。


 アキラは、戦国の世の、岬の年若い漁師の目を持たされて苦悶し、傍ら

の靖子に取り憑いて来た、岬の岩礁に漂着した謎めく武家の女の、妖しい

姿に翻弄されようとしていた。

 靖子はこの時、幼少時代の自らの「禁忌」を開示させられ、おぞましい父

の「顔」を目にしてしまう。

二人共、圧倒的な「力」の前にひれ伏して行く他にないように見えた。。。


 洋介が岬の『伝承』に関心をもった一人として「源爺」に深く関わり、アキラ

と靖子を叔母の芳江と共に、この山小屋に連れて来る事になった切っ掛け

は4年前の「山小屋」の建替えと、夏の日に聞いた「源爺」の話である。

 今、改めて4人に語られ出した「伝説」の話は、時空を超えてこの岬に現出

しようとする、「」の本源に触れるものであった。


 ミオと、信彦が岬の『洞窟』に誘われて出逢おうとした、その事もまた、

大いなる意思」によって、二人の「事故での出会い」のはるか前から企

まれていた。



 源三の「海難事故」での経験、アキラの『洞窟』での恐怖の体験、洋介

が気付き、解明しようとした『伝承』のこと、・・・・『伝説』の総てが、「過去

であると同時に、今まさに岬の街を飲み込み、時空を超えて「」しよう

とする、「輪廻と転生の物語」そのものなのであった。。。


******************************

  ――そして、今また、「源爺」によって発見され、

         

           守り抜かれた「」の奥の「洞穴」の壁に

              「アイツ」は沁み出すように現れ始めていた――

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 父と母の口論の端から、自らの出生の秘密の扉を開けた信彦は、
高校の卒業の記念の母の由美子との「会食」の中で、母の半生と
共に、今更のように深い「森」の中に居た自分の孤独を胸に刻む
と、母と父とに感謝しながら、心の中で「別れ」を告げていた。
 その時から信彦の爽やかな笑顔の奥に、深い哀しみのひかりが
潜み続ける事になったのだった・・・

 ミオの上にも産みの母とまだ見ぬ父の気配が押し寄せて来ていた。
艶めかしい息吹が押し寄せて、ミオの動悸が止まらなくなって来た。

  「決行」の時が二人に迫っていた。
 
岬の灯台の下で落ち合う約束が果たされる夜明けが来た。
母の芳江にとっても眠れぬ夜が来ていた。ある大きな「力」の前に芳江
はひれ伏し、その声に怯えたままミオの名を呼び続けながら、気を失っ
て行った。

 二人は人目を避けようとして別々の場所から『洞窟』を目指して行った
が、ミオは先にたどり着いて、信彦を待つ間に不思議な「モノ」が洞窟の
壁に浮き上がってくるのを目にして、吸い寄せられて行った。
 信彦は、『洞窟』を目指すのだが、足場の悪い道の先の「老松」のとこ
ろで足を踏み外して『洞窟』の真上の岩百合の中に倒れ落ちていった・・・

 靖子の携帯にアキラからの伝言が入って来た。ただならぬ気配に、靖
子は急ぎ、「岬の町」を目指した。

 一方アキラは叔母の芳江の市場での様子がおかしいことが気になり、
ミオの家を訪ねると、予感通りミオの家出に憔悴し切った芳江がそこに
居た。
 アキラはすぐにミオと信彦が『洞窟』を目指したことに気付くと、浜辺の
道を自転車で駆け抜けて行こうとペダルを強く踏み込んだ。

 やがて、ミオと信彦の「出逢い」の舞台となった『あの場所』に近付いた
時、またしても「白濁した世界」に絡め取られてアキラの身体は宙を舞っ
た。。。

 靖子によって浜辺で発見されたアキラは、肩で息をしながらも、怪我
の事は誰にも言わずにいるようにと懇願した来た。

 「海の家」で身体を休めたアキラの携帯が鳴った。幼馴染の「洋介」
からであった。芳江と共に車でこちらに向かうと言う。そして岬の
『洞窟』へは向かわずに、山番の「源爺」のところへ行こうと、アキラを背
負い始めた。

 「源爺」こと山番の源三は、過去に「海難事故」にあった経験を持っい
る。そして、幼い頃に『洞窟』で身の毛のよだつような体験をしたアキラは
「源爺」にとってミオの父の孝三と共に「アイツ」の事が分かり合える仲間
の一人であった。
 
 信彦は岩百合の中で覚醒すると、ミオの名を呼びながらゆっくり『洞
窟』
の奥へと入りこんで行った。

 大潮の日から2日目が『洞窟』に安全に行き着ける特別に日だと、
「源爺」は言った。そして、岩屋の磨涯仏にお参りを済ませると、ロウソ
クで作った「結界」の中に身を潜めながら、古来からの「伝説」の話を改
めて皆にし始めようとしていた。。。

 この「岬」の町の過去の成り立ちと、ミオが気付き、孝三とアキラが
目にしたモノの正体が「源爺」によって明かされて行こうとしている。

*****************************


  ――大潮の海が黒々とした波を盛り上げている。

        何者かが崖下の洞窟を目指して疾駆していた――
 


 
               そして、


          「森」に恋した海の思念が、

             風のコエとなって、      

         自らを解き放とうとしていたのだった・・・・
               
          

  
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   「夏の日」の彼方からこの物語は始められた。。。

 ―「森」はウミの母であり、ウミは森を恋焦がれている―

 海底からひとりの盲目の髪の長い美しい女が手にしっかりと過去
を握りしめて浮かび上がって来る。その女の行方が物語りの縦糸で
ある。
 ある夏の終わり、信彦ミオは海岸通りで運命的な出会いを果た
す。それは、ある深い企みによって起こされた「衝突事故」という
形で二人を引き逢わせることとなった。

 二人にはそれぞれに「出生の秘密」が隠されており、ミオは海の中
に出現した岩礁で漁師の父親に発見され、夫婦の養女として育てられ
て来た。信彦もまた、富士の樹海で母親に出逢い、その時のいきさつ
を聞かされていた。

 信彦とミオの二人を取り巻く人間模様はこの物語の横糸であり、紡
がれる織物のうねりの中に人間の生と性の深遠が垣間見えて来る。

 信彦の交際相手の靖子にも、華やかな外見の裏に以外な過去がある。
顔を知らない父親の像を追いつつ、少女の内に養父には性的な暴力を
受けていた。信彦との間に女としての安らぎを得ようとした矢先に、
「事故」にあった信彦の前に現れたミオという女性に心を魅かれ、魂を
奪われていく信彦の暗い顔に不安を覚えて行く。

 ミオにも、アキラという幼馴染がいた。アキラは「事故」の直接の
目撃者としてこの物語の交差点に立っている。
 ミオを見守りながら、信彦の見舞いに来る靖子にも接近し始め、不安
な影の動きを牽制しようとして必死になっていた。。。

 ミオの養母の芳江と養父の孝三にとって、美しく成長していくミオは眩
しいばかりの存在であったが、孝三が遠洋に出かけている間に起こった
あの「事故」の後のミオの変化に戸惑った芳江は、語り掛けてくる大き
な力の前にひれ伏すように、ミオに対してその出生の秘密を語り出して
いった。

 信彦の母の由美子の過去にも幾つかの人生の危機と転機が訪れて
いた。キャリアウーマンとしての自信に満ちたスタートは、上司との
不倫と身ごもった子供の流産によって脆くも崩れ、仕事上の失敗も重
なり富士の樹海で自殺ようと彷徨う中で、生まれたばかりの信彦に出
会うことによって命の再生の道を歩み始めるのだった・・・

 富士の樹海で二人を救い出すことになって行くツァーコンダクターの
義彦との出逢いがもうすぐ起きようとしている。。。

 ―髪の長い盲目の女は一度昇りつめた山の上から街へと降り立ち、
夜の闇に乗じて人々の心の内側へと忍び入ったのかも知れなかった―

 
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 *このblog掲載の幻想的な「海中の写真」は『みなっちの海日記』
  http://www2.ocn.ne.jp/~mina37/から転載させて戴いたものです。





 『マーメイドの伝説』は思いの他の長い展開を見せています。幾人
かの少数の「読者」の方々と共に、ここまで物語を紡いで来ました。

 登場人物達も、それぞれの言葉で「自分」を語ろうとし始め、「森」
の中も賑わって来ています。
 この辺で、辿って来た道を見渡し、「道しるべ」を作っておくのも
これからの「伝説」の行方を定めるためにも良いのではないかと考
えました。

 これからも、『マーメイドの伝説』の完結まで、お付き合い下さい。

 宜しく「尾根涯い」いたし