庭の額紫陽花4



お前らの中には、近付いてはならん、という「注意」を無視して、、、、、

そう言いながら、「先輩」は、回りを取り囲んだ「一年坊主」の集団を

ジロリ、と一瞥した。。。。


まぁ、いい、俺の話を聞いたら、自然とあの「堤」に今の時期に近付

くもんは居らんようになるだろう。。。ふふふ


そういうと、何故か「先輩」は、Snoopy達3人組の方に視線を絡めて

来たのだった。





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06石楠花-3
 





ゴクンという生唾を飲む音が、あちこちでし出しすと、その先輩は、

一年坊主達の「」の中心で「ゴホン」と大きく咳払いをして、皆を

グルリと一瞥した。

 先輩は、小声ながら腹の底から絞り出すような、不気味な「声音

で、トツトツと話始めた。。。。

 

 「お前等も、薄々は聞いたりしてるだろうが、春先の温かい日には、

何故か水面 から靄が立ち上がり、夕陽が沈む頃になって靄が晴れ

ると、妖しい「唸り声」と共に水面が紅く染まって来るという言い伝えが

あるんだ・・・」


 そう話始めた「先輩」の横顔が、心なしか蒼ざめて行くような気がし

たのは、Snoopyだけでは無かった。


 浮かれ気分の一年達は、一様に互いの顔を見合わせると、再び「先輩

の話の行方を追おうとして、肩を寄せ合い、湧き起こる武者震いを互いの

身体でとめようとしていたのだった。。。



 

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薔薇のドーム
 



 Snoopyが、想い起した「話」というのは、同じ町の中学校の出身の先輩が、

 この高校で入った『歴史クラブ』の先生から仕込んできたものだった。

  

  入寮の前に「懇親会」という名目で開かれた、同じ町の出身者の集いには、

 「」に入っている先輩も、知人や親戚の家に「間借り」していた人もいたが、

 この高校の「歴史」をそのまま引き継ぐ「寮生」の方が幅を効かせていた。。。

  中学校の先輩達は、たった一年か二年違うだけなのに、何処か妙に大人

 びて見えていた。

 

  『お前等、入るとすぐに色んな「洗礼」を受けると思うけど、身体が慣れだした

 頃には「中間考査」もすぐに始まるし、うかうかするなよ~~、特に4月はさぁ、

 「女子寮」との花見もあるしなぁ~』


  おおお!!という「どよめき」が男子の輪の中で沸き起こった。

  『それから5月のGWの休みの前辺りになるとぉ、色々「カップル」が出来て、

 「」の裏の道から上がっていく「」んとこら辺でよぉ、デートが始まりだす訳よ』


  ニキビ面のその「先輩」は、すっかり色気付いていて、一年坊主達には、どっか

 眩しく見えていた。その先輩が、「浮かれ話」の途中で、急に声を潜めると、一年

 達に手招きして、輪を縮めて話を聞くようにと腰を屈めて来たのだった・・・・



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五月の薔薇-6
 



  Snoopyは、痺れる頭の隅で、あの頃に「」で友達になった仲間と

  一緒に来た時の事を想い起そうとしていた。。。



  ≪そうだ!あの時、跡を付けた「制服」の二つの影が、手を繋いで早

足 になって木立の向こう回り込んで行くのを『堤』の対岸で見た3人

   は、 目くばせをすると、右の方から接近する形を取りながら、二手に

別れる事にしたのだった・・・・


   Snoopyは、そのまま『』の縁に沿うように腰を屈めて近付き、後の

二人は、大きく迂回して、『』の右側のすり鉢状の小山の方から、

二人の行方を追う事にした。。。

   そこ迄、その時の「二人」の影の追跡に拘っていたのには、ちょっと

した訳が あった。。。≫


  ******************************


   ---そう、やはり「あの話」は本当なのかも知れない!!とSnoopy

  は思っていた。その「話」というのは、こうだった。。。




 



 気が付くとSnoopyは、草露の中に横たわっていた。


何時の間にか、心の中に響き渡る「」が遠ざかり、換わりにSnoopyの

頭の芯」を突き刺して来る夥しい「」の声が、頭蓋のなかで反響し始めた。


 その「響き」の重なりは、Snoopyから、総ての「聴力」を奪い取って行く。。。


ここに居る」 ここへ早く来てくれ・・・


辛うじて残された「思考」の片隅で、その『想い』の主が「虫の声」を切り拓い

て迫って来ていた。。。


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五月の薔薇-8


 Snoopyの目覚めた場所は、「戒壇話」に出て来る、あの「堤」に違いなかった。


昼間は、校舎の裏手を下った行くこの「」は、春先から夏にかけて、上級生

達の「逢引」の場所の一つになっていた。


 Snoopy達、一年坊主には、勝手に近付く事の出来ない「聖域」である。。。

それでも、中には「猛者」がいて、学校に慣れだした5月頃には、何人かで連れ

立って放課後に「探索」を開始したり、気の早い連中は、早速「彼女」?を誘い

出す場所に指定して、デートらしきものを「敢行」する者も出て来始める。


 夕暮れ時や、学校が休みのポカポカ陽気の日には、幾組みかの男女が、そ

の「」の周りを、互いを牽制し合うように、木々の間を縫って、自分達の「語ら

」の場を求めて動き回る。。。。


 校舎の崖下に位置する「」の一年坊主達は、初夏を前に、そわそわしなが

ら、その甘い「」を追跡するのが「日課」のようになっていたのだった・・・


磨涯仏3  



  ・・・・『ココに居る』  ココへ来てくれ』・・・・


 その声が、「」に響いて聴こえて来る方に向かって、自分の身体が、

深い「水中」を進むかのように、ゆっくりと重くて軽い四肢が、勝手に動

いて行く。。。


 「虫の音」も、「風のそよぎ」も感じられない。

無音」の濃密な空気が、辺りの景色を揺らめかしている。


 

 足が、湿った草々の間の「夜道」を掻き分けるようにして、確かめて行

く、その「感触」が無いのが少し不安であった。

 だが、前のめりに歩を圧し進めないと声の方向に近付いて行けない、

という「現実の課題」の前に、地面から浮き上がっているような自分の身

体への「違和感」は、退けられていた。




『ヴォ~~ン』『ヴァ~~ン』『わぁ~~ん』『おぉ~~ん』

 



 「」への「響き」が、どんどん競り上がって来た。

胸から、肩へ、肩から首へ、、、、そして、耳元から、「脳髄」の中一杯に

反響し合い、グルグルと旋回を早めて行く!!




 


 Snoopyの「身体」は、その「響き」の渦の回りを、

 

     ウンウン言いながら、回転し始めて行った。。。



              


              掲載写真は宿根木の歴史より



磨涯仏5  



 白い「」のように見えるモノが、上下左右に揺れながらSnoopyの這入っている

蚊帳」に近付いて来る。「胴体」は見えない。


 震えが来ているSnoopyには、眼に這入るモノが「恐怖心」という心の「小屋」で増

幅され、総てがあの「怪談噺」の「モノノフ」に関係付けられて仕舞う。。。


 

 オドロオドロしい「生首」のようにも見えるその白い物体から、突然ふた筋の光が

Snoopyの眼に差し込んで来た。

 

 「影」によって凹凸を付けた「ソレ」は、黒い斬バラ髪に覆われた「モノノフ」の蒼ざ

め、痩せ細った「面立ち」に見て取れる・・・・

 

 Snoopyの「」は、その「」から発する光の動きを

追う内に、「暗示」に掛けられたように、瞬きさえも失いかけていた、、、、


 

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    ====時間が、止まった====



 

 「モノノフ」の「」だけが、Snoopyの「」に直に響いて来る)))))))


          限られた「空間」さえも解き放たれ、

 

       Snoopyは何時しか、「」の外を歩いていた。。。




            掲載写真は宿根木の歴史より  




 磨涯仏2



 後ろに廻した両手で、辛うじて体を支えたまま、さっきから届いている啜り泣き

の「声」の方に向かって、Snoopyの総ての「感覚」が研ぎ澄まされて行く。

 

体は小刻みに震えたまま動かないというのに、何故だか心の中だけが、心臓の

拍動」と共にゆっくりと波打ち、自由にその「」を掴まえようとして動き出す。


 奥の「水屋」の方から、何かの「気配」が起き上がって来るのが分かった。


 電灯の明かりが消えて、辺りの「」に眼が慣れて行くに連れて、その啜り鳴く

ような「」はSnoopyの耳の中に仕舞い込まれて行く。

 替わりに、ぼんやりとした「視界」の向こうで、白っぽい物がふぅ~っと動いたよ

うに見えた。。。


 「蚊帳」の外から何かがこちらを見詰めているような気がしてならない。

カラカラに乾いた「」の奥に、無理矢理「唾液」を沁み出させて「クツリ」、と飲み

下してみる。

 Snoopyの「」の中がクッと広がると、あの啜り鳴きが戻って来た!





    『う、う、お、お、お~~~ん



  

         ・・・・不気味な「声」が、腹に響き始めた・・・・


              


             掲載写真は宿根木の歴史より  

カンゾウの花-3  



 部屋の障子の向こうから聞こえたその「しわがれ声」の主は、聞き覚えのある

部屋長」のような気がした。

 

 「???」

 

しばしの沈黙の後、思い切って「失礼しまぁす」と言って、障子戸を静かに開けた。


 蚊取線香の煙と匂いが充満した「蚊帳」の奥に、肩幅の広い男が背中を丸めて

座り、身体をゆっくり前後に揺らしている。


 「あ、あのぅ、○○先生は・・・・?」


 「部屋長」のように見えるその男は、こちらに背を向けたまま、右手で「蚊帳」の中

に入れというように合図して来た。。。


 Snoopyは一瞬、躊躇したが、えぇ~い、ままよ!)とばかり、意を決して「蚊帳」の

裾を捲くり上げた。


 その時、奥の「水屋」の方で、「ゴトゴト」という物音がして、一陣の生温かい「」が

吹き込むと、「線香」の煙が自分の方に吹き寄せて来た。Snoopyは思わず目を伏せ


 「ゴホゴホ!」 と、咳き込んでしまった。 

 (この時の「」は、蚊取線香のものではなかったのかも知れない・・・・?)

 

 ゆっくりと「」を上げると、何時の間にか「蚊帳」の中には誰も居ない。。。

 何だか、いやな展開になって来たな、とSnoopy思った。


 ふぃに、天井から吊り下げられた電球の灯りが消えた。


 「マ、マジかよ!!」 そう思う間もなく、何処からか、啜り泣くような

が聞こえて来た・・・・


 早くこの場から逃れようとして、立ち上がろうとしたが、「」がガクガクして力が

入らない。背中に「悪寒」が走り抜け、腕に鳥肌が立って行く。

 Snoopyの身体は「金縛り」にあったように動かなくなってしまった。。。


 

   

  ・・・・「本物」の「怪談」が始まりそうであった・・・・






            掲載写真はみなっちの海日記より

みなっち、花1  


 ぬるい「終い湯」に浸かって、チビッタ下着を取り替えたSnoopyは、

ホットする間もなく、「舎監室」へと向かった。


 カラカラと入り口の引き戸を開けたが、踏み込みの先の障子は閉

まり、ぼんやりとしたマメ球の灯かりがのように頼りなく見えている

だけであった。

 

   『先生、○○です。』

 

 そう声掛けをして見たが、中から応答は無かった。

 手洗いにでも行ったのか?とも考えたSnoopyは、その踏み込みの

薄暗がり」の中でしばらくじっと立ち尽くしていた。


 と、障子の向こうで軽い咳払い?のような声がして衣擦れの音と共に、

人がいる気配が感じられた。


 Snoopyは、妙な寒気を背中に感じながら、掠れた声で、もう一度

 

  『先生』

 

 と、呼びかけて見ようとした。


 その時、中から野太い声がした。

 

  


  

   『おぅ、入れや』・・・・・・???


 

         


          掲載写真はみなっちの海日記より