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2006-05-23 11:51:28 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-10-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

五月の薔薇-1  

 


 全身の「浮遊感」と気だるい痺れの中で、「」だけはカッと開けさせ

られている。

 「」の奥底から、「何者」かが「自分自身」を見透かしているような気

がして、靖子は思わず「吐き気」を催していた。


 アキラが随分小さく、自分の下に見えている。

だが、良く看ると、アキラに組み敷かれているのは、見覚えのある花柄

の衣服の「」である。

 アキラがゆっくりと膝を割り入れて、黒髪の流れる「その女」の下肢を

広げようとしていた。

 その「情景」の意味するところが、靖子にはまだ「了解」出来ていかない。


 時折、黒い靄のような物が、時折靖子の『視界』を遮って漂って来る。

 靖子の「脳髄は、看させようとする自分の内部からの「」と、それを

遮る「黒い靄」の間で、バランスを喪いかけていた・・・・


 このままでは、「自分」の心と身体はバラバラになってしまう。。。

そう幽かに気づいた瞬間、靖子の「身体」はクルリと反転すると、一気に

落下し始めて行った・・・・・

2006-05-07 22:50:59 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-9-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

風車-3  



 ぽたり、と雫が落ちて来たような気がした。


 洋介は、憑き物が落ちたように、枯れ枝の中で覚醒していた。

身体の冷えが自分の汗の性である事に気付くのに、いくらかの時間

が必要であった。


 「キンキン」と鳴るあの音は、掻き消えていた。。。


 それは、自分にとってだけでなく、行動を共にして来た者達や、「

の「洞窟」の二人を初めとした、この半島の総ての人々に深く関わる

大切な「物語」を、幽かな「記憶」としてしか思い出す事が出来ない事

を意味していた。

 

 だが、洋介には「解かって」いた。

これから自分が進むべき「」の先に、自分の追い求めて来たモノが

現出」しているに違いない事を!!


 軋むような身体の「強張り」をほぐすように、腕を上げて背伸びをする

と、ゆっくりと立ち上がった。


 汗の雫が、つぅ~と背筋を伝わると、洋介は思わず身震いをした。

それは、洋介の「決意」と、これから立ち向かう「洞穴」の二人の「世界

への「恐れ」から来ているのかも知れなかった。。。

2006-05-01 23:29:31 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-8-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

06石楠花-1  


 靖子の右手の中で、握り締めた「木像」がどんどん「」を帯びて

来ている。


 「奔流」となったアキラの化身が、靖子の下半身を凌駕しようとして

来る。思わず、膝をきつく閉じようとしたが、靖子の半身は濃密な液

体の中で別の生き物のように浮遊し始めた。


 冷たく重い「感覚」の中で、自分の意思が届かないもどかしさが、込

み上げて来る。


 焼きつくような痛みと共に、その手が溶けて、「木像」と一体になっ

てしまうのではないか、そう思った時、靖子の「感覚」は遠のいてい

った。。。


 やがて、靖子の身体はゆっくりと宙に浮き上がり、「洞穴」の天井に

近付いて行った。


 ほどなく、靖子の身体はクルクルと旋回し始めていった。。。。



*****************************


 

 いつの間にか、川の中に浸かった自分が居る。


奔流」となった水の流れが、巨大な壁となって靖子の方に押し寄せて

来ようとしていた。

 靖子は、その大きな流れに抗おうとして、必死に手を伸ばして捉まる

ものを探した。

 川の中央には、何も見当たらない。目を四方に向けると、左手の方に

舟が繋がれているのが見えた。


 川岸に近いところにある船着場まで何とかたどり着こうとして、重い下

半身を動かそうとするのだが、脚の感覚無くなっていて思うように前に進

まない。


 あっと言う間に「奔流」に飲み込まれてしまった靖子の身体は、水の

渦の中で一気に沈み込み、また浮き上がり、グルグルと「旋回」し始め

ていたのだった・・・・



 

2006-04-03 21:57:23 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-7-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

公園の桜-1  


 

 洋介の前には、幾重にも重なるように、岬の「洞窟」や「洞穴」の

情景」が時空を超えて現れては消えて行った。

 その瞳はカッと見開かれたまま、閉じる事は許されなかった。


 洋介には、それらの「情景」の一つひとつが、岬の「歴史」の真実

である、と思われた。

 

 時代を超えて折り重なるように、今まさに展開して行く「情景」そ

のものが、岬の「洞窟」と「洞穴」の中の二組の男女によって、繰り

返されて行くことになる。。。


 抗うことの出来ない「」によって、そう深く「了解」させられていた。


****************************


           大いなる「」は、


    海の底から湧きあがるように岬へと接近すると、


崖下の「洞窟」から、「水の道」を通って一気に山の峰に向かい、


       その「思い」を遂げようとしていた。。。



         

       ――ウミは「」を恋求めていた――

2006-03-28 22:22:12 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-6-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

神木  


 洋介は、今、アキラや「源爺」のいう「アイツ」の意味が深く了解出

来たように思えた。


 キンキンと頭の中で鳴り響く音の次に何が現れて来ようとも、しっ

かりと受け止める他はない。洋介は、薄れ行く意識の中で僅かな「

杭」を打とうとして、もがいていた・・・


 「」と身体の僅かな隙間に入りこんだ「」は脳髄へと至り、その

」の内側から「禁忌の封印」を解き、時空を超えた「情景」として目

の前に投影させて来る。

 その圧倒的な「」のことを、彼らは「アイツ」と呼んだのではないか。

 残されたかすかな思力が、洋介にそう語り掛けて来ていた。


****************************

 
 洋介の目の前に、自分が見ようと欲しながら、本能的に目をそらし

て来た事が、否応なく「真実」として「展開」し始めようとしていた。

それを自分の意思では止める事が出来ない。

 何故なら、その「情景」こそが、自らが本源的に追い求めていた「

」であり、人々が封じ込めて来た「禁忌」に他ならないからだ。


 岬の人間達の「歴史」がもつ幾つもの「禁忌」が、今まさに解き明か

されようとしていた。。。


 
 


2006-03-25 23:08:17 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-5-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

檜の森  


 洋介は恐る恐る身体を起そうとして見た。

 痛みを感じていない筈の身体に力が入らない。腕を動かして

顔に降り掛かっている枯葉を取り除こうしたが、指先が痺れて

いて思うように身動きが取れない。


 このままここでじっとしている訳にはいかない。

 そう洋介が焦りを感じた途端、大きな「」が老木の枝の廻り

を渦巻いて幹の下へと駆け降りて来る気配に捕らわれて、洋介

の産毛が逆立った。。。


***************************


 洋介は、いつの間にか、「」を見始めていた。それは余りにも

鮮やかな「原色」の世界であった。


 「源爺」とその廻りに幾人かの人間が腰を下ろしている。

 どこかで見たような光景だった。

 そして、同じその場所に重なるように、ある「儀式」が取り行われ

ている。その「儀式」を「」となって見ているのは、他ならぬ「漁師

の若者」であった。


 洋介は、時間を超えて展開する「洞穴」の中の光景を、今、その

総てを重ね合わせて観ていた。いや、見させられているのかも知

れない。

 そうかすかに感じた時、洋介の「」の奥からキンキンという音と

共に抗いようのない、圧倒的な力が出現して来たのであった。。。

2006-03-10 21:06:53 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-4-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

hikari  



 「磨崖仏」のある「洞窟」への近道は、大岩と山の峰の両方を見渡せ

る場所で、岬の灯台が見える所に一際高く聳えるように立つ「老木」を

探すことから始めねばならなかった。


 山の夜道でその「老木」を探す事は洋介にとって至難の技であった

が、幸い月明かりと、灯台の閃光が大きな手助けになってくれるので

はと考えていた。

 もし、「源爺」の言う通りであるとしたら、その「老木」の懐にある割れ

目を廻り込んで進むと、「」の真上に続く道に出る筈である。


 洋介は、山道を登りながら、潅木の間から灯台の灯りを見つけよう

としきりに後ろを振り返った。

 何度目かに身をよじった時、灯台の「閃光」が垣間見えたような気が

した。

 その刹那、足元の枝につまずいてバランスを崩した洋介は、もんど

り打って山道を転がり、潅木の根元にしたたかに叩きつけられた。。。


 息をつまらせながら、背中に冷や汗の雫を感じた洋介は、月明かり

を塞ぐように枝を伸ばした「大木」を見上げている。

 不思議に身体の痛みは何も感じない。時間が止まったような場所に

自分の意識が捉えられたような気がした。


 その時、洋介は「老木」の割れ目に敷き詰められた、枯れ枝の中に

埋もれている自分を「発見」したのだった・・・・



             掲載写真はみなっちの海日記より
2006-02-22 01:05:21 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-3-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

海のくらげー1  


 

 靖子の頬に、幾粒もの水滴が流れ落ちて来ていた。


 おぼろげな意識の中で、それは、アキラの身体の「」のようでもあり、

」のようにも感じられた。


 だが、靖子の心の中では、「洞穴」の壁から沁み出して来た水が、あ

る「」と共に、自分達二人に迫り、何事かを成し遂げようとしている事

が、何故だかはっきりと知覚出来ていた。


 左掌の中の「木像」が熱を帯び出している。すると、アキラの身体も

どんどん熱く火照り、その「分身」が靖子の内側を刺激して来た。

 靖子は、アキラを受け入れようとしながら、激しく拒絶する身体の「強

張り」と闘っていた。

 それはまた、自分の中の忌まわしい「過去の影」との戦いを意味して

もいた。


 顎を上げて、「木像」を見ようとする靖子の「」が宙を彷徨って行く。

 靖子の「」には何も見えて来ない。いや、見ようとして「」を明ける

事を怖れる自分がいる。

 だが、靖子にとっての恐怖の「根源」は、何も見ようとしない自分の

脳髄」から何者かが映し出されて来るという「予感」に他ならなかった。


*****************************


 アキラの身体が僅かに持ち上がり、靖子の耳にその熱い息遣いが聴

こえて来た。次の瞬間、アキラは巨大な水の「奔流」と化して、靖子の中

に突進しようとして来た。


 靖子は思わず「木像」を強く握りしめていた。。。

 


         

         海中の掲載写真はみなっちの海日記より

2006-02-06 23:00:33 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-2-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

磨涯仏  



 大岩を後にした洋介は、月明かりを頼りに潅木の間を縫うように、元

来た「」を登り始めた。


 洋介には、折り重なった『伝説』の全貌が、ゆっくりと開けて見え出し

ていた。今、その『伝説』を創り上げて来た「」を溯ろうとしている。

 

 「祠」の奥の「洞穴」の二人が、「大いなる意志」の「」に翻弄されて、

どのようにしているのか気掛かりであったが、今は先を急ぐしかない。


 アキラと靖子に襲い掛かる「」は、もしそれが自分が考える『

の中の存在であるとしたら、必ずや二人にある「試練」を課して時空を

溯り、「木像」を奪い取って「水の道」を下り始めるに違いない。



 右側に、展望台が見え始めて来た。

自分の「役割」は、何であるのかを考えると、洋介は自然に足元から

「震え」がせり上がって来るのを、止められないでいた。


 もし「源爺」の話の通りであるとしたら、どこかで必ず「アイツ」の攻撃

を受けるだろう。、「洞穴」の二人に襲い掛かろうとする「」の矛先をか

わし、その攻撃に耐えて何とか「時間」が稼げるとしたら、自分には「

りの」しかない。

 その為には、「源爺」が自分に教えてくれた近道から、山の「洞窟」の

中へそっと這入り込み、「磨崖」の前に置かれている「祈祷のバチと

襷」を手に入れなければならない。


 そして、「洞穴」の二人を何としても「覚醒」させてこちらの世界に戻し、

木像」を手元にしながら、皆で「水の道」を一気に下って行く他にない。


 はやる心の昂ぶりを押えながら、大きく深呼吸をすると、明滅する灯

台の「閃光」に勇気付けられるかのように、洋介は力強く夜露に湿り出

した坂道を、足早に登り始めて行った。。。


                掲載写真は宿根木の歴史より  

2006-01-17 00:31:31 posted by snoopypapa

『マーメイドの伝説』第20章-1-

テーマ:森のウミ-『マーメイドの伝説』-

奥日光冬景色ー3  


 大岩の前で「覚醒」した3人は、それぞれの「体験」を、沈黙の中でしっ

かりと共有していた。

 どんなに「水の道」を下って行こうとしても、上に押し上げて来ようとす

る大きな「力」には逆らえない事を知らされてしまった。


 「源爺」は、力の無い声であったが、洋介を近くに呼び寄せると、ある事

を告げた。

 洋介は「そうか、良く分かった」と言うかのように、2,3度深く頷くと、よろ

めきながらその場に立ち上がり、両手を高く天に突き上げて仰ぎ見た。


 それから、芳江の側に歩み寄ると、

『何も怖く無い』からと肩に手を掛け、その目をじっと見つめて来た。


「自分はこれから、山の「洞穴」に戻り、アキラと靖子さんと共に此処へ戻

って来る。それまでここで「源爺」と一緒に待って居てくれ」

 

 芳江の手を取ってそう言うと、洋介は遠くを見る眼をしたまま、身支度を

整え出した。。。


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