「職業は何ですか?」
パタゴニアに暮らし始めて1年。ここで暮らしていると、結構この質問に出逢う。
当たり前か。
地球上の何処で暮らしていても、この質問に出逢わない場所なんてそう無い筈。
誰でも何かのプロとして生きてる。
40歳になって改めて、自分は何のプロになるのかを考えてる。
何のプロになりたい?
ホテルに泊まる時とか、息子達が通っている保育園で職業を書く場面に出逢う。
ぼくはそんな時、
"escritor"
って書いてる。
書く人。つまり作家。
えーーーーーっ?!
あんた作家だったっけ?
とこれを読んでくれている友達は思うだろうな。
ぼくもこれを書く度に、ちょっと後ろめたい気分。
「本出してるの?』
「一冊だけね。」
一冊だけ本を世に出した作家。
いいじゃないか。
これから世界的なベストセラーの本を出す事になるかもしれないし。
可能性は無限大。
ぼくたち家族が住んでいるここ、ラフンタ村には新聞も無く、お店にいっても紙媒体は一切売ってない。
本屋なんて勿論無い。あ、そうそう、やっと今度、図書館が出来る。
ということで、作家なんて言うと、相当な文化人みたいに思われるらしく、皆、ふーーん。とちょっと一目置いた感じになる。と勝手に思ってる。
ということで、ぼくは作家だ。
言葉に嘘が無いように、いつかまた、本を書いてみたい。
それ以外にもやりたいことがある。
商事会社。
山小屋で、雄大な景色を観ながらドラム缶風呂に浸かっていると、色々とアイディアが浮かんで来る。
大学を出て、6年間商社に勤めて、4年間世界を放浪して、6年間「地球を歩く、木を植える」活動をしてきた。
パタゴニアに移住する前、小樽に住んでいた時の自分の肩書きは「環境活動家」だった。
この「肩書き」ってものが何なのか。自分の肩書きは何なのかってことを考えてる訳だけど、家族でパタゴニアに移住して、40歳になり、いよいよ人生の大事なステージに突入して、ここらで本気で自分の肩書き、職業を考える時に来た。
で、商事会社の話。
ドラム缶風呂に浸かりながら考えた。今、山の暮らしであったらとっても便利なもの。
それは小型の水力発電機だ。
昨年末から始まった山小屋での電気無し生活。
やってみて始めて分かる発見がたくさんある。
その内の一つが「電気の有難さ」を体感出来ること。
今は畳一枚分ほどのソーラーパネルで55アンペアの車用のバッテリーを充電。それが我が家唯一の電力だ。
これだと、パソコンを一日に二時間程度使うのがせいぜい。
それはバッテリーの性能(そもそもカーバッテリーは家の電源として使うものじゃないし)とか、太陽光パネルの大きさとか、その土地の日照時間とか、色んなことが影響してくるわけだけど、こんなに真剣に「電気」について考えたことは無かった。
今までの人生では家にコンセントがあるのは当り前だったし、その供給量を考えることも勿論必要無かった。
でも実際にカーバッテリーが唯一の電力源となると、使える電気製品は限られて来るし、そうなると、どんな電気製品がどの位の電力を使うのかなんてことがやたらと気になり始める。
戦後の日本で三種の神器と言われたテレビ、洗濯機、冷蔵庫。冷蔵庫や、特に洗濯機を使おうと思うと、相当な電力が必要で、カーバッテリーではその電力をとても賄えない。
ということで、電線の無い山小屋で洗濯機を使うというのは相当にハードルが高い。
でも僕らは21世紀に生きてる。
解決策はあるはず。
で、ここ、チリ側のパタゴニアは世界有数の温帯雨林帯(因みに日本も温帯雨林帯)で、年間の降水量が半端でない。
特に冬の間は雨が多い。
ってことで、これからが冬本番のパタゴニア、いい感じに連日の雨模様。
で、山小屋のすぐ近くにも小川が流れてる訳だけど、この小川の水力を電気に変えることが出来れば永続的に電気がおこせる。特に日照時間が少なくなり、水量が増える冬の間は尚のこと。
そこで調べてみると、工業国の日本には流石に立派な小型の水力発電機、マイクロ水力発電機がある。
これを使って大自然の中で、自然の力でしっかりと電気を創り出して、バッチリ文明的な暮らしをしながら、自然と調和した暮らしを体現したい。
そしてその暮らしをパタゴニアの人達に紹介、広めて行きたい。それを仕事にしたい。ってことは商事会社を興すってこと。
そんなことをドラム缶風呂に浸かりながら考えた。
こういう夢が膨らむ時間ってとっても楽しい。
何が無くとも風呂が大事なぼくにとっては、風呂に入ってる時が大事な、「夢膨らむタイム」なんだけど、この夢の実現に向かって、どんなに小さくてもいいから一歩づつ、具体的に前進してみたい。
という訳で、気になって居ります。マイクロ水力発電機。
早速ポールに相談してみたら、
「ベトナム製のマイクロ水力発電機は断然安いよ。」と教えてくれた。
流石ポール。すでにこの辺の情報は調べ済み。
日本に拘らずとも世界中、探してみれば、生活を便利にしてくれて、環境への負荷も抑えてくれるものが沢山ある。
例えばこのマイクロ水力発電機で電気をおこして、生活の一部でも電気ストーブで暖をとることが出来たら薪の消費を減らすことが出来る。
山の生活で、薪の消費を如何に抑えるかっていうのは大事な自分の課題なんだけど、その解決策をそのまま仕事として活かして行きたい。
その結果思いついたのが商事会社をやるってことで、その扱い商品は水力発電機だったり、風力発電機だったり、はたまたは、ここパタゴニアの羊毛で出来た一点もののセーターかも知れない。
ここ数年、地球を歩き、木を植える活動を続けて来た。
そしてその活動はこれからも続けて行きたい。
うまく言えないけど、これからの人生、肩書きに捕われずに、やりたいことを着実に実現させていくことが大事だと思う。
非電化工房の藤村先生が言っている。
どんな時勢にも対応出来る様に、小さな仕事を幾つかもっておいて、「こっちが駄目でもこっち」みたいな生き方がいいよって。
そんな言葉を思い出しながらドラム缶風呂に浸かり、ふとこんなことも考えた。
ドラム缶風呂を温める薪は、たき付け様のほっそーい薪から、中くらいのサイズから、でっかいサイズまで、程よく揃っていて始めて上手く温められる。
薪のサイズみたいに、人生でやりたいことはでっかい夢もあれば、日々の暮らしを支える為の小さな夢もある。
それがバランス良く実現に向かった時、気がつけば全部の夢が実現してるんじゃないだろうかって。
ここに来て一年が経ちやっと、先ずは夢が見えて来た。
作家で、商社マンで、環境活動家なわたし。
そんなわたしになりたい。
写真:結構近づいても一心不乱に作業を続けてたキツツキ。山小屋の近くで長男が発見。この木の上には頭が黒いメスも居た。この頭が赤いのはきっとオス。いつも夫婦一緒に行動してるみたい。
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