2005年03月03日

春の匂い

テーマ:恋愛
巡る季節。

もう何年も前の話し。
15の春。

同じ学校、同じクラス。
僕と彼女との出会いは本当にありふれたものだった。

クラスメイトの名前を覚えるのは苦手だったけど
彼女の名前だけはすぐに覚えれた。

僕と彼女の座席はちょうど対角線。
教室で最も遠い距離。
でも、そこから見える彼女の少しあどけない笑顔が好きだった。

男友達とつるむ日常。
最初はまだ、彼女と話すきっかけが欲しいなんて思わなかった。
遠くで、いつもの場所で見ているだけで、それだけで満足だったから。

でも想いが募れば彼女と話したいと思ってくる。

そんな僕の気持ちを酌むかのように、
最初の席替えで何と僕と彼女は隣同士になった。

何か話そう。
何度も自分に言い聞かす。

だからと言って、いきなり仲良く喋れるはずがない。
遠くで見てるだけで満足だった男なんだから。

そして、それは英語の時間だった。

「ねぇ、辞書持ってない?」

話しかけてきたのは彼女からだった。

普段、授業なんてまともに聞かない僕が
辞書なんて持ってきているはずがない。

が、その日は偶然にも持っていた。

「あ…、持ってるよ…。はい。」

最初の会話はこれだけだった。
でも、そんなのは関係なかった。
『話した』という結果だけが僕には残った。

その日以降、僕は英語の時間に毎回辞書を持つようになった。
きっかけを作るために。

それを知ってか、彼女も毎回僕に辞書を借りるようになった。
それだけでも、すごく楽しかった。

やがて少しずつだが、休み時間にも話すようになる。

彼女の言葉一つ一つ。
ドキドキする。

そしてある日、彼女はこう言った。

「最初すごい怖い人だと思ってたけど、
 話してみたらすごい話しやすいね。
 こんなに男の人と仲良く喋れたの初めてだもん。」

…。

「ほんとに?」

そう返すのが精一杯だった。

でも、彼女の特別な存在になったような気がした。

それからはメールもした。電話もした。
そして2人で遊ぶ事も何回かあった。

ふたりで遊ぶときは決まって彼女は5分くらい遅刻する。
僕は言う。

「遅れるのはいいけど、心配するから連絡くらいはちょうだい。」

彼女は笑いながらゴメンと言う。
僕はこのやり取りがすごく好きだった。

遠くから見ていただけの笑顔がすぐそこにある。
ありふれた事だが、これほど幸せな事はない。

そんなありふれた日常に終止符を打ったのは彼女の方だった。
いや、今思えば僕が終止符を打ったのかもしれない。

まだ冬の寒さが残る、しかし少し春の匂いを感じた日だった。
冬とも春とも言いがたい日。

その日の放課後。
僕が部活に行こうとすると、急に呼び止められた。
何か話しがあるようで、しばらく話していた。

すると急に、彼女は黙り、そしてこう言った。

「4組の加藤君に告白されたんだ…。」

そこからは僕はあいづちを打つだけ…。、
彼女が言ってたことがあまり頭に入らなかったし、
彼女が一体どんな表情で話していたかも見るのが恐かった。

ただ僕がこう言ったのだけははっきりと覚えている。

「良かったね。」


そしてしばらく経ったある日の放課後。
グラウンドから彼女と松井が仲良く帰る姿が見えた。

僕は誰にも聞こえないくらい小さな声で、
「良かったね」
と口を動かした。

2回とも本心から出た言葉ではない。
でも、せめて言葉にしないと彼女に嫌われるような気がした。

そして何より、そう自分に言い聞かせていた。

季節はすっかり春だった。


今でも春の匂いを感じると彼女の事を不意に思い出す。

そして、あのとき彼女の表情を見ていれば。
そして、あのときもう少し僕に勇気があれば。
また違ったかもしれない。

春の匂いはそんな思いを運んでくる。

  ____________________________________________________________________________

あとがき

フィクションです。
こんな経験ありません。

構想3日、製作6時間、保存期間3週間。
危うくお蔵入りになるところでした。

以前から、ちょっと小洒落た小説的な話しを書きたいと思っていたので
書いてみました。
本当はもっと長編を書こうかと思ったんですが、長いのは考えるのに時間がかかりそうだし、何より読むのがめんどくさいと思い、短めの話しを考えてみました。
それでも実際に書いてみると思ったより長くなり、書こうと思ってたエピソードを削ってみたり。

主観的には自己満足。
客観的には何とも酷い、稚拙な文章なのだろうと思います。

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