売れすぎ

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注意

村上春樹の小説、『1Q84』は、傑作ではありますが、万人が所有するべきような、汎用性に富んだアイテムではありません。



オレは、とても興奮しつつ読み終えましたが、

普段ほとんど読書をしていない方までもが、話題性だけで読むのには、

この本はいちじるしく適していません。

はっきりいって、(そういった人には)まったく不必要、無用の長物であると思います。


ハルキ的に表現すれば、

アマゾン奥地を住み家とするヤノマミ族にとっての、空気清浄機能つき加湿器と同じくらい、不必要なものであるといえましょう。


ともかく、二週間で百万部は異常な数字です。間違っております。


皆様、購入前には、ぜひともよくご考慮くださいませ。
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『ねじまき鳥クロニクル』 村上春樹

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ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編


ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編


ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編



もうすぐ村上春樹の新作が発売されるので、

ひとり前夜祭wのつもりで、読んでいます。


『ねじまき鳥』を初めて読んだのは、十数年前。

発売と同時に読んだんですが、今回改めて読み返しております。


当時に比べて自分の読解力が上がったせいなのか、

初読のときに流し読みしていた部分に、やたら目が止まり、

なかなか簡単には読み終えられないでいます。


しかし、難解な本ですねぇ。

まさに世界文学と言うにふさわしい。


こんなに難しいテーマを持った本を、

ベストセラーにしてしまう村上春樹という人は、

余程ポップセンスを持った人なのでしょう。


確かにね、この本、その「難解さ」を無視して読んでいっても、

純粋な冒険小説として、楽しんで読めるようなつくりになってるんですよ。

そこらへんが彼の強み。

誰かが彼のことを、「日本文学史上、夏目漱石以来の重要な作家」

と、評したらしいですが、それも満更おおげさな表現ではないと、オレは思います。


そうそう、なんでも新作、『1Q84』は、発売前から増刷決定だそうですね。

(既に25万部確定だそうな)

オレも今月末の発売を、楽しみに待っております。
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『ノルウェイの森』 村上春樹

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ノルウェイの森 上 (講談社文庫)/村上 春樹


ノルウェイの森 下 (講談社文庫)/村上 春樹



二十年ぶりの再読(あるいは3読?4読?)

初めて読んだのは、大学時代。

あの頃とは、オレもずいぶん変わりました。

そのせいか、当時とは色々と違った感動や発見があり、

一行一行かみしめるようにして、読み終えました。


やっぱり良い作品ですね。

とても深く、難しい内容を扱っているのにも関わらず、ポップセンスがある。

数百万部の売り上げ記録を残し、今もなお数十ヵ国で読み続けられているのも、納得できます。

(後に『ノルウェイの森』の真似っこ小説である、『セカチュウ』が記録を破ったけれども、あれは結局メディアミックスのたまもの。でもって、十年後にはおそらく絶版になっていることでしょう)


ところでこの作品、映画化されるそうですが、出来がとてーも心配です。

キャスティングのほうはどうなっているのでしょう?

もうそろそろ発表されても良い時期だと思うのですが・・・。

『邪魔』 奥田英朗

テーマ:
邪魔〈上〉


邪魔〈下〉


及川恭子、34歳。
サラリーマンの夫、子供二人と東京郊外の建売り住宅に住む。スーパーのパート歴一年。
平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。
恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。
日常に潜む悪夢、やりきれない思いを疾走するドラマに織りこんだ傑作。
(Amazon紹介文)



素晴らしい小説です。

テーマ的には、「人間、窮すると最後には何をするかわからない」というものなんでしょうが、

「小説とは描写である」と言い切る作者の作品だけあって、

簡単には「お題」解読をできないような構造の作品になっています。


上下巻ですが、全く長さを感じさせない作品でした。

『失われた町』 三崎亜記

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失われた町/三崎 亜記


30年に一度起こる町の「消滅」。
忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。
大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。
「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。
消滅を食い止めることはできるのか?悲しみを乗り越えることはできるのか?時を超えた人と人のつながりを描く、長編小説。
(Amazon紹介文より)



良い小説でした。

ハードなSF設定を用いながらも、一般的な読者でも充分について行けるレベルでの、

「人を失うにあたっての傷み」を描くことに成功しているように思いました。


難点は、クサイ(読んでいて恥ずかしくなる)台詞が多いことと、

推敲が甘いのか、「妙な文章」が頻出して、ちと読みにくいところです。


でも力作だと思います。

作者は、星新一などのセンスを引き継ぐ人だと思われるので、

70年代日本SFファンであるオレとしては、これからも活躍を期待しちゃうのでした。

『理由』 宮部みゆき

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理由 (朝日文庫)/宮部 みゆき



東京都荒川区の超高層マンションで起きた凄惨な殺人事件。
殺されたのは「誰」で「誰」が殺人者だったのか。
そもそも事件はなぜ起こったのか。
事件の前には何があり、後には何が残ったのか。
ノンフィクションの手法を使って心の闇を抉る宮部みゆきの直木賞受賞作がついに文庫化。
(Amazon紹介文より)



部分部分、読ませるところがあるのですが、全体としては冗漫なつくりの、

悪く言えば著者の自己満足的な作品だと思いました。


物語そのものは、ひと言でいえば、「人情噺」

それをそのまま読者に供すれば良いところを、様々な方法でもって、作者自らがぶちこわしてしまっています。


まず、全体を貫く、ルポルタージュを摸した構成や、社会派的な道具立て(競売、占有屋などについての長すぎる説明)

これが、上記の「人情噺」的な物語骨格と、まるで水と油の如く合っていません。


それからクドクドと饒舌に語られる、人物(家族)たちのクロニクル。

これを書くことによって宮部さんは、「家族って何だろうね」という問いかけを読者に発しようとしたのでしょうが、

残念ながらそれもまた、人物造型の平板さ+冗長さによって、失敗してしまっているように思えます。


色んな家族が描写されますが、通底しているのは、

「家庭こそが人の心の有り様を決める」

「純粋な子供。汚い大人」

「結局心の底から悪い人間はいない」


という、ものの(人の)見方です。

こういうステレオタイプな描写は全て、先に言った「人情噺」、つまり一種の(『非合理極まる本当の現実』に対するアンチとしての)ファンタジーとしては、機能しますが、

宮部さん目指すところの社会派小説のお膳立てとしては、著しくリアリティを欠くと言わざるを得ません。

(もっともこういったアンバランスは、この作品だけでなく、彼女の小説全般に言えることですが・・・)


不満の残る読書でありました。

『白夜行』 東野圭吾

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白夜行 (集英社文庫)/東野 圭吾



とても良くプロットが組まれている作品だと思いました。


残念なのは、長すぎること。

こんなに分厚くする必要あるかなぁ。

もうちょっと短く切り上げても、著者の目標は達せられたんじゃないかと思いますが。


あと、こんなに長いのにもかかわらず、

主人公にあたる二人のキャラの描出が、「得体のしれない」というレベルに留まってしまっているのも、気に掛かりました。

まあ、「元からそういうコンセプトで書かれた作品だ」と言われれば、それまでですが。

『走るジイサン』 池永陽

テーマ:
走るジイサン (集英社文庫)/池永 陽



頭の上に猿がいる。
話しかければクーと鳴き、からかえば一人前に怒りもする。
お前はいったい何者だ―。
近所の仲間と茶飲み話をするだけの平凡な老後をおくっていた作次。
だが、突然あらわれた猿との奇妙な「共同生活」がはじまる。
きっかけは、同居する嫁にほのかな恋を抱いたことだった…。
老いのやるせなさ、そして生の哀しみと可笑しさを描く、第11回小説すばる新人賞受賞作品。
(Amazon紹介文より)



何か、最近読書感想ブログと化している気がするなw

それはそうと、本題。

とても素晴らしい本です。

誰もが通らなければならない道、「老い」「死」をテーマに物語が繰り広げられます。

こう書くと、重くて、とっつきにくい本のように思われるかもしれませんが、そこは作者の腕。

さらりと、ユーモラスに、読者をときどき笑わせつつ、
しかし確実に心に届く筆致で最後まで描ききっています。

ともかくおすすめの本です。

あまり厚くないので、気楽に読めますし、

図書館でも書店でも、機会があれば、ぜひ手にとって読んで欲しいです。

『笑う招き猫』 山本幸久

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笑う招き猫 (集英社文庫)/山本 幸久


男と並んで愛誓うより、女と並んで笑いを取る、それが二人のしあわせなのだ!
駆け出しの漫才コンビ、『アカコとヒトミ』。
超貧乏で彼氏なし、初ライブは全く受けずに大失敗。
おまけにセクハラ野郎の先輩芸人を殴り倒して大目玉。
今はぜんぜんさえないけれど、いつかはきっと大舞台。
体に浴びます大爆笑―。
夢と笑いとパワーあふれる傑作青春小説。
第16回小説すばる新人賞受賞作。
(Amazon紹介文より)



個人的感想を言わせてもらえれば、非常につまらなかった

こういうのは感性の問題なんでしょうか?

劇中に出てくる二人の漫才や歌が、ともかく寒い。寒すぎる。

この小説のメインテーマが、女二人の青春友情物語であるのは、わかる。

だが、だからといって、物語の設定(この場合は漫才)を、ないがしろにしていいということはない。

(まあ、著者としてはこれでも精一杯面白く書いたつもりなんだろうけれど)

主人公二人の漫才が、なんで劇中ではウケるのかが、全くわからない。

わからない以上、物語自体のリアリティもない。


正直、半分から先、読むのが相当にかったるかった本でした。