交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 ドラマのシーンにはそれぞれ役割(意図・目的)があります。単独で存在するシーンは
希(まれ)です。必ずといっていいほど、どれかのシーンと関係し、ドラマを物語るため
に描かれなくてはいけません。

*--------------------*
脚本『放課後泥棒』 作・塾生A (補作前の原作/2014年10月15日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(1) (2014年10月23日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(2) (2014年11月1日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(3) (2014年11月14日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(4) (2014年12月2日掲載)
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※脚本内の ピンク色 は削除、 黄色 は変更、 緑色 は追加した内容です。

脚本対比表5-A 
【原作】
----+----10----+----20・・

S15 集合住宅公園横道路(数日後・
  一人下校する康太。
  横から騒ぐ声が聞こえ、それを見る。
  公園で皆が遊ぶ姿。それを横目に通り過
  ぎる。


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【補作】
----+----10----+----20・・

S18 集合住宅公園横道路(数日後・放課後
  一人下校する康太。
  公園から騒ぐ声。皆が遊んでいる。
  横目で足早に通り過ぎる康太。

(1) 行を稼ぐため簡潔にしました。

脚本対比表5-B 
【原作】
----+----10----+----20・・

S16 集合住宅・C棟1通路
  越前、ドス、水谷が歩いている。
越前「最近康太君来ないね……なんだか僕を
 避けてるような」
ドス「そんなことないよ 多分……」
越前「特に理由はないはずだからね」
水谷「誘ってはいるんですが。あれで康太君、
 結構プライド高いとこありますからね……
 越前君がそれを逆なでしていると感じてる
 のかも」
越前「え、そんなつもりは」
水谷「自覚なくってことも」
越前「自覚がない……」
    ×    ×    ×
  (フラッシュ)
  一ノ瀬少年(12)の不気味な笑み。
    ×    ×    ×
越前「(愕然)そんな……」
水谷「まあ、越前君は何も悪くないんですけ
 どね(苦笑)


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【補作】
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S19 集合住宅・C棟1通路
  越前、ドス、水谷が歩いている。
越前「最近康太君来ないね……なんだか僕を
 避けてるような」
ドス「そんなことないよ。多分……」
越前「特に理由はないはずだからね」
水谷「誘ってはいるんですが。あれで康太君、
 プライド高いとこありますからね越前君
 がそれを逆なでしていると感じてるのかも」
越前「え、そんなつもりは」
水谷「自覚なくってことも」
越前「自覚がない……」
    ×    ×    ×
  (フラッシュ)
  ブレザー制服の一ノ瀬(12)。冷笑。
    ×    ×    ×
越前「そんな……」
水谷「越前君は何も悪くないんですけどね」

(1) フラッシュですが、一ノ瀬が初めて登場します(実登場は原作S21:対比表6-B)。
  クライマックスからラストにおいて引き金となる人物です。主人公の康太、相手役の越
  前に次ぐ格付け(パツキン・水谷と同格)といえます。後半になって初登場というのは
  残念な構成です。しかもフラッシュなので一瞬です。
  一ノ瀬の扱いについては、解説の冒頭(2014年10月23日掲載)で指摘したように“問
  題アリ”の状態です。本来ならば、もっと早いタイミング(タイトルクレジットまで、
  もしくは起句)で登場させて、越前との関係を匂わせておくのがベストな構成といえ
  ます。
  とりあえず現状として、少しでも印象を深めるために“ブレザー制服”を追加しまし
  た。

脚本対比表5-C 
【原作】
----+----10----+----20・・

S17 遠藤家・リビング(
  テレビゲームをしている康太。
栞奈「またゲーム? 最近ずっとじゃない。
 小学生なら外で遊びなさい!
康太「ガキの遊びには飽きた」
栞奈「(呆れて)何言ってんの……買い物行
 ってくるね。七時頃帰るから留守番よろし
 
康太「(ゲームに夢中)」
  ため息をついて部屋から出ていく栞奈。


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【補作】
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S20 遠藤家・リビング(放課後
  テレビゲームをしている康太。
栞奈「またゲーム? 最近ずっとじゃない。
 外で遊ばないの?
康太「ガキの遊びには飽きた」
栞奈「(呆れて)何言ってんの……買い物行
 ってくるね。七時頃帰るから(出て行く)
康太「(ゲームに夢中)」
 

(1) 原作N04栞奈の台詞「小学生なら外で遊びなさい!」については、対比表5-E (2)
  で解説します。

脚本対比表5-D 
【原作】
----+----10----+----20・・

S18 分かれ道(夕)
  ドスと水谷は右、越前は左の道へ行く。
ドス「僕達はここで」
水谷「(越前に)康太君にはとりあえず謝っ
 ておくのが吉ですかね」
越前「謝るって……」
水谷「それでは(ドスと共に行く)
越前「……余計傷つけるだけだ。僕には分か
 る」


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【補作】
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S21 分かれ道(夕)
  越前と水谷が歩いてくる。
水谷「(越前に)康太君にはとりあえず謝っ
 ておくのが吉ですかね」
越前「謝るって……」
水谷「それで彼も落ち着く気がします……
 れでは。これから塾なんだ(別れて行く)」
越前「……余計傷つけるだけだ」
    ×    ×    ×
  (フラッシュ)
  ブレザー制服の一ノ瀬。冷笑。
    ×    ×    ×
越前「僕には分かる」
 

(1) 原作S16の流れを受けたシーンですが、ドスがいる必要はないと判断しました。S16
  でも康太についての話を深めているのは水谷です。ここは越前と二人のほうが深刻さ
  が伝わると考えました。
  また水谷は塾に通っている(原作S2)ので、それを理由に別れていく形をとりまし
  た。キャラクターの継承です。補作S28N64の「知恵を絞りましょう。塾は休みます」
  に繋ぐためにも、冒頭とラストだけでは印象が薄い(唐突な)ので、中間となるこの
  タイミングを利用しました。

(2) 補作N07で水谷の台詞「これから塾なんだ」に対し、作者(塾生Aさん)から「これ
  から塾なので」はどうかという質問(意見)がありました。
    「これから塾なんだ」……口語印象。
    「これから塾なので」……文語印象。
  原作S2N10水谷の口調「塾があるので」に合わせるなら後者が適当といえます。

(3) 補作N11、一ノ瀬のフラッシュをもう一度見せて印象の強化を計ります。

脚本対比表5-E 
【原作】
----+----10----+----20・・

S19 遠藤家・リビング(夜)
  テレビゲームをしている康太。
栞奈「ただいま(と入り、怒って)あ、まだ
 やってる。ゲームは一日一時間まで」
  とコントローラーを取り上げる。
康太「あ」
栞奈「だいたい、宿題終わったの!?」
  舌打ちして部屋を出て、家から出る康太。
栞奈「あ、こら待ちなさいこんな時間に!
  部屋を出て、玄関ドアから顔を出す栞奈。
栞奈「すぐ帰ってらっしゃいよ!」


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【補作】
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S22 遠藤家・リビング(夜)
  テレビゲームをしている康太。
栞奈「ただいま(と入り、怒って)あ、まだ
 やってる。ゲームは一日一時間まで」
  とコントローラーを取り上げる。
康太「あ……(ぐで~っと寝転がる)
栞奈「だいたい、宿題終わったの!?」
  舌打ちで部屋を出て、玄関へ行く康太。
栞奈「こら!……(部屋から顔を覗かせて)
 すぐ帰ってらっしゃいよ!」
 

(1) 子ども(小学生)が主たる人物の中にあって大人の登場は教師と栞奈(康太の母親)
  の二人です。教師は授業の流れとして登場している程度ですが、栞奈は展開に関わる
  役割があります。宿題の作文を書く康太にヒントを与える(原作S11)のと、家に閉
  じこもりがちになった康太を外に出す(原作S17・S19)の二点です。前者は直接的
  に作用する展開ですが、後者は“怒ること”で反発した康太が外へ出ていきます(間
  接的)。原作S17N04栞奈の「小学生なら外で遊びなさい!」の直後に出ていくより
  自然な展開を感じます。

(2) 原作S17N04栞奈の「小学生なら外で遊びなさい!」ですが、作者(塾生Aさん)は
  キャラクターとして“軽い教育ママ”をイメージしたとのことです。そのため“命令
  形”なのでしょう。
  補作の考えは、補作S13で康太の宿題(作文)の相談に乗る栞奈の優しさを受け継い
  で“促す形”にしました(補作S20N04)。そこだけ突然命令形になるよりは、いた
  って自然の流れと考えました。
  原稿用紙30枚程度の短い作品で、しかも栞奈はサブ人物です。優しさもあり教育ママ
  でもありといった複雑なキャラクターを伝えるのは難しい設定です。一方に絞り込む
  のが妥当と考えます。
  とはいえ、補作S22で怒る(N03~04)のは、まだゲームをしているわけですから、
  自然の流れといえます。しかもこれにより康太が外出する展開に導けたわけですから、
  栞奈のキャラクターと役割は充分果たせたといえます。

脚本対比表5-F 
【原作】
----+----10----+----20・・

S20 歩道(夜)
康太「母さんの言うことなんて(とぼとぼ歩
 く)」
  後ろから走る足音。
  ジャージ姿で走るパツキンが康太を追い
  越す
  走って追い、横に並ぶ康太。
パツキン「お、康太」
康太「こんな時間に何やってんだよ」
パツキン「見てのとおりだ。毎晩走ってる」
康太「よくやるな」
パツキン「……最近遊びに来ないけど、どう
 したんだよ」
康太「そんなことないって」
パツキン「あるって(目で迫る)」
康太「……俺が行く必要ないじゃん」
パツキン「
康太「俺より速い奴がいるんだから」
パツキン「どうしてそうなる(笑う)
康太「……」
パツキン「足が速いから遊んでるわけじゃな
 いっしょ」
康太「じゃあ何で……何で俺なんかと」
パツキン「何でって言われてもな……康太だ
 から?」
康太「え?」
パツキン「確かに越前の方が速いかもしれな
 い。でも、康太は康太のままだろ? 何か
 変わるのか?」
康太「俺は……」
  パツキンが足を止め、康太も止める。
パツキン「(荒い息)」
  とポケットからストップウォッチを取り
  出し見る。
パツキン「昨日の俺より速くなっ
康太「……」
パツキン「明日もドロケイするからな」


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【補作】
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S23 歩道(夜)
康太「母さんの言うことなんて(とぼとぼ歩
 く)」
  後ろからジャージ姿で走ってきたパツキ
  ンが康太を追い越す。
  走って追い、横に並ぶ康太。
パツキン「お、康太」
康太「こんな時間に何やってんだよ」
パツキン「見てのとおりだ。毎晩走ってる」
康太「よくやるな」
パツキン「……最近遊びに来ないけど、どう
 したんだよ」
康太「……俺が行く必要ないじゃん」
パツキン「何で?
康太「俺より速い奴がいるんだから」
パツキン「どうしてそうなる? 足が速いか
 ら遊んでるわけじゃないっしょ」
康太「じゃあ何で……何で俺なんかと」
  パツキンが足を止め、康太も止める。
パツキン「(荒い息)何でって言われても…
 …康太だから?」
康太「え?」
パツキン「確かに越前の方が速いかもしれな
 い。でも、康太は康太のままだろ? 何か
 変わるのか?(チョリースポーズ)
康太「俺は……」
パツキン「(ポケットからストップウォッチ
 を取り出し見る)オッ、昨日の俺より速く
 なってる……明日もドロケイするからな
 (また走り出して行く)
  康太、遠くなるパツキンの後ろ姿を見て
  いる。パツキンの金髪がなびいている。
  康太、何気に自分の髪の毛を触る。前髪
  をおでこの前に引っ張り上目に見ている。
 

(1) 友だちとドロケイをせず家に籠もりがちだった康太に転機が訪れます。クライマック
  スへ向かう重要なシーンです。
  次のシーンで康太はドロケイに復帰しますが、もしもこのシーンがなく公園(友だち
  の前)に現われたらどうでしょう。栞奈の「外で遊ばないの?」(補作S20N04)と
  か「ゲームは一日一時間まで」(補作S22N04)と言われたことが、康太が復帰した
  直接の理由と受け取られてしまいます。これでは唐突な印象です。
  友だち(パツキン)の後押しで、しかもドロケイに関するエピソードがあってこそ、
  直接理由として生きます。

(2) 作者(塾生Aさん)から、康太「そんなことないって」(原作N14)とパツキン「あ
  るって(目で迫る)」(原作N15)の台詞を削除した理由を訊かれました。
  作者は……
    ◆いきなり康太が本心を打ち明け始めるのもどうかと思った。
    ◆康太は素直な性格ではないので、このくだりは必須だと思った。
    ◆パツキンが真剣だと悟って初めて真剣な会話に移行するために必要。
  との意図で、あえてこの二つの台詞を入れたとのことです。
  削除理由は次のとおりです。
    ◆前にあるパツキンの台詞「最近遊びに来ないけど、どうしたんだよ」(N12~
     13)の受けが、康太「そんなことないって」になります。つまり「遊びにこな
     いけど」を否定したわけですから、続きを想像したら「何度かは遊びに行って
     るじゃないか」とも考えられます。
     康太としてはお茶を濁したのでしょうが、却って「遊びに行ってる」事実を含
     んだ台詞といえます。そうなると“お茶濁しの言葉”“照れ隠し”であること
     を伝えるのが必要かと、波及課題が発生します。
     対応すれば、さらに会話が続き行数が増えます。替わりの台詞を考えるより、
     行削減とドラマの核心を描くのを優先しました。
    ◆作者の意図は“あえてタメを作った”とのことですが、ここは台詞ではなく康
     太の「……俺が行く必要ないじゃん」(原作N16)にある「……」の間で充分
     だと考え、削除しました。

(3) 康太「……俺が行く必要ないじゃん」に対し、原作ではパツキンは「?」(N17)で
  返しています。言葉はありません。ト書きとして《康太を見る》とか《首を傾げる》
  などの表情もありません。無言で走り続けているとイメージしました。
  それなのに康太は、パツキンの心境「?」を読み取ったように、「俺より速い奴がい
  るんだから」(N18)と返します。出来すぎた(都合のいい)やりとりに感じました。
  したがってパツキンに「何で?」と発言させました(補作N14)。

(4) 走っているパツキンと康太が“足を止めるタイミングはどこか”と考えました。足を
  止めることで会話の山場であるのを匂わせ、雰囲気を高めるのが目的です。
  走っていたのはパツキンですから、止めるのもパツキンのほうが自然と考えました。
  となると康太の投げかけ「何で俺なんかと」(補作N18)に対し、パツキンはどう返
  すか、見どころ(聞きどころ)といえます。ここが足を止めるタイミングと判断しま
  した。
  止まったままではなく、「明日もドロケイするからな」とまたパツキンが走っていき、
  康太を一人にすることで余韻を持たせました(補作N29~34)。

(5) 一人残された康太の余韻について説明しましょう。
  康太の心境は“複雑”です。パツキンの言葉が頭の中を駆け巡っているでしょう。パ
  ツキンが康太と遊ぶ理由は「足が速いから」ではありません。「康太だから」遊んで
  いる(作者発想)。子どもらしい答えで、いいと思います。
  康太もパツキンに対して似たような思いを持っています。パツキンの髪の毛は“金髪”
  です。補作S4N14~18で、越前は染めていると思い「不良?」と訊きますが、康太
  は地毛であることを告げ、その理由(原因)などは知る気もないので「どうでもいい
  ことだし」と返します。このシーンに繋がる伏線です。
  つまり“足が速いから”とか“金髪だから”は、パツキンや康太にとっては何ら関係
  のないこと。お互いが個人を認め合った仲です。
  余韻(康太の行動)は、こういった心根を覗かせた一瞬です。もっと詳しく書けば、
  自分の髪の毛を触りながら「地毛ね。どうでもいいんだよな……パツキンだから遊ん
  でんじゃん」とつぶやけば、パツキンの言葉「康太だから」と重なりをみせて、明確
  な表現になるでしょう。しかしベタな感じになると考え、髪の毛を触る行為だけに留
  めました。


*--------------------*
■脚本『放課後泥棒』の補作と解説(6)へつづく

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