交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


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 平成26年度「NHK中四国ラジオドラマ脚本コンクール」で入選に輝いた『夏のほかげ』
(作・潮喜久知)の作品評を掲載します。作品と各審査員の評論はNHK広島局のホーム
ページ内に掲載されています。(掲載期間は不明です)


中四国ラジオドラマ脚本コンクールの審査結果 【NHK広島】


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『夏のほかげ』(入選)  作・潮 喜久知


 高校三年生のとき母親と陶芸家の男(佐伯)の情事を目撃した小春は、大学進学を機に
ふるさとの松江を離れ東京へ。以来13年間疎遠の暮らしをしている。母親死去の知らせで
一度松江に戻り、さらに一年が経った今、市役所から「実家がゴミ屋敷になっているので
何とかしてほしい」と連絡を受け再び実家に戻る。そこで佐伯と遭遇し、気が進まないま
でも二人でゴミを片付けながら母親を振り返る物語です。

 審査員の中には「ホオズキの情景(使い方)が印象的でいい」との評価を受け、最終的
には入選に輝きましたが、私は脚本内の「矛盾ともいえる疑問点」が脳内を取り巻き、入
選はおろか佳作にも選奨できませんでした。
 以下に主な疑問点を挙げておきます。
 小春は一年前(母親が亡くなったとき)にも実家を訪れています。このときすでにゴミ
屋敷と化した状況です。家の中にも入っています。埋葬を終え母親の位牌を居間の段ボー
ル箱の上に置き、ゴミだらけのまま東京に戻ります。つまり状況は克明でないにしても把
握しているといえます。
 一年が過ぎ、市役所の依頼でゴミを整理するために再び実家(ゴミ屋敷)を訪れます。
小さいことですが、鍵を二度開錠しています。最初の開錠は「ドアの鍵」と書かれており、
開けるとゴミ雪崩に襲われ、偶然訪ねてきた佐伯に助けられます。ゴミのバリケードを取
り除いたあと、また「鍵を開け玄関の引き戸を開ける」とあります。最初に開錠したドア
とは敷地内(庭)に入る門のことでしょうか。庭の状況は「積み上げられたゴミ袋や壊れ
た家具などが占拠していた」と書かれています。それらのゴミは母親が捨てた(置いた)
のか、亡くなったとき一度訪れたあと一年の間にほかの誰かが不法投棄したものか。しか
しドア(門)の鍵は閉まっています。塀の向こうから投げ入れたにしては家具、本棚、椅
子、扇風機、電子レンジなどの大きな物もある様子(バリケード化)が綴られています。
小春の想像では「母親の仕業」と佐伯に言っています。玄関を開けたあとも、中は床が見
えない(足の踏み場がない)ほど物やゴミが散乱している様子を書いています。つまり中
も外も母親の仕業と解釈していいでしょう。
 この時点で(脚本を読んで)イメージしていた光景が崩壊しはじめました……。
 一年前はどうやって庭や家に入り、どこを通って外に出たのでしょう?
 一年前の(出入り)経路があるならば、今回なぜそのルートを辿らないのでしょう?
 設定した状況を伝えたくて、ドラマのためにゴミ雪崩に遭ったとしか思えません。ゴミ
に埋もれなければ佐伯に助けてもらう必要もなく、恩義めいた気持ちを抱くこともなく、
佐伯を家にあげる理由もなく、以降の展開は大きく変わると推測しました。
 ゴミ屋敷にしたのは母親です。その様子は、炊飯器の中に靴下を入れるなどもあり、異
常といえるものです。13年の間で母親に何があったのでしょうか。大学進学で東京に行っ
た小春の思い出の品を集め残しておくのと、日常品を散乱させてゴミ屋敷にしたのは別の
意識(気持ち)と考えます。前者に対する小春の心境は語られていますが、後者は不明で
す。むしろそのほう(バリケードともいえるゴミ屋敷化)がドラマの要素ともいえ、いつ
ごろからそうなったのか、なぜそうなったのか、生前母親はどこから出入りしていたのか、
疑問が増幅しました。
 佐伯はある物を探しにきたという設定です。それを小春の部屋で見つけます。小春の部
屋だけはゴミはなく、きれいに片付いています。勉強机の上に、新聞紙に包まれた物を見
つけます。
 包まれているのになぜそれが探し物とわかったのでしょう? 完全にドラマのために動
いている印象がします。
 物は母親が、陶芸家である佐伯に頼み込み、自分で作った茶碗です。包んでいた新聞紙
に書かれた母親からのメッセージ「朝ご飯はちゃんと食べんといかんよ」を見て小春は衝
撃を受け改心します。
 そんな簡単な確執でしょうか?
 現在小春も妻子ある男と不倫関係にあります。この点を踏まえても、茶碗ひとつメッセ
ージひとつで改心するのは、納得がいきません。そもそも小春が不倫していることが、自
分も母親と同罪という設定を作り、母親を赦す要因に仕立てたとしか受け取れません。設
定のみが先行した印象です。
 母親が死んでいるのを発見したのは小春ではありません。「この部屋で一人、倒れてい
たそうです」と発見者から知らされた設定です。その人はどこから入り、どこを通って母
親を運び出したのでしょう?
 母親の死後、空き家なのに電気が通じている点も気になります。一般的に考えると、小
春が手続きをして止めるか、そうでないなら料金滞納により送電停止になると推測します。
それなのに掃除機をかける(電気が通じている)のは不自然です。

 以上諸々の点から、ゴミ屋敷に関する出来事は「都合良く展開させるための設定」に思
えてなりません。ウリ(惹きつけ要素)として設定したのでしょうが、客観的に考えれば
疑問を抱きドラマに入り込めない要因になります。「取るに足らない疑問点」といえるか
です。作者は気づいているのでしょうか。私は大いに引っかかりました……。


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