交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 脚本創作において「最初の発想」があると、どれくらいの「検討や構成」を経たうえで
脚本自体の「執筆」に入りますか? 費やす「時間」や書きものの「分量」の話です。
「検討&構成 < 執筆」か「検討&構成 > 執筆」か……どちらです?
 理想は前者です。最初の発想を脳内でどんどん膨らませて人物像やストーリーをイメー
ジする。プロローグ(序章)があって起承転結の流れをちょこちょこっと組み立て、クラ
イマックスはこんな感じで見せてエピローグ(終章)はこんなところか……細かいことは
書きながら考えるとして、さあ、執筆しよっと! な~んて脚本創作が進んだらどんなに
すばらしいことでしょう。
 しかしながら現実は後者なんですよ。あーだこーだと考え書き残し、あれはどうするか、
これはそれでいいのかと構成をこねくり回して、やっとのことで執筆です。記憶(脳ミソ)
の容量も少ないし保存期間も短いんで、しゃーない(仕方ない)かァ……と観念して長い
道のり(創作スタンス)で臨んでいます。

*--------------------*
脚本『放課後泥棒』 作・塾生A(補作前の原作/2014年10月15日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(1)(2014年10月23日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(2)(2014年11月1日掲載)
*--------------------*

※脚本内の ピンク色 は削除、 黄色 は変更、 緑色 は追加した内容です。

脚本対比表3-A 
【原作】
----+----10----+----20・・

S8 学校・教室(日変わり)
  ザワついた教室に教師が入る。
教師「座って座って」
  生徒達が全員席に着く。
教師「(ドアに)入って」
越前「(入って康太を見て)あ」
康太「(目があって)あ!
教師「エスシー学園小学校から転校してきた
 越前だ
  ザワつく生徒達。
水谷「エスシーと言えば、全てにおいて優れ
 た天才だけが入れるエリート校ですよね」
康太「何でそんな奴が六年にもなってここに
 来るんだよ」
水谷「親の転勤ですかね? いや、そんなに
 遠い学校ではないし……」
康太「(考える)


01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
 
【補作】
----+----10----+----20・・

S10 小学校・教室(日変わり)
  ザワついた教室に教師が入る。
  生徒達が全員席に着く。
教師「(ドアに)入って」
越前「(入って康太を見て)あ」
康太「(目があって)あー!
教師「エスシー学園小学校から転校してきた
 越前宗也君だ
  ザワつく生徒達。
水谷「エスシーと言えば、全てにおいて優れ
 た天才だけが入れるエリート校ですよね」
康太「何でそんな奴が六年にもなって、それ
 も残り半年ってときに
水谷「親の転勤ですかね? いや、そんなに
 遠い学校ではないし……あ、そういえば何
 度か彼を見かけました。僕んちの近くのマ
 ンションに住んでるのかな、昔から」
康太「何だ、同じ学区内か……」
 

(1) タイトルクレジット後の展開(起句)として、執筆枚数(規定四百字詰め30枚程度)
  を考えたら「越前の正体を明らかにしつつ康太のライバル意識が募る姿を描く」で順
  当といえます。

(2) 越前の正体に関する情報として原作では次の3点を投げかけています。
    ◆エリート校であるエスシー学園小学校(私立)からの転校生。
    ◆何でそんな奴が六年生になって転校か。
    ◆親の転勤? いや、そんなに遠い学校でない。
  康太の通う小学校は(どこにも描かれていませんが)流れから想像して「公立」と考
  えます。この点を明確にするなら教室のシーン(原作S6)の前に柱を立てて校門の
  学校名「※※市立**小学校」(または区立など)を見せればいいでしょう。
  原作では転校の時期(今が何月か)は語られていません。「六年にもなって」(N13)
  とかS12でも「何でこんな時期に転校してきたんだよ」だけです。補作は「残り半年
  ってときに」(N13)とし、今が9月終わりか10月初めであるのを示唆しました。
    ★これは先の展開で登場するエスシー学園の生徒・一ノ瀬がブレサー制服を着て
     います(原作S16やS21)。つまり衣替えで冬服になった10月以降と、卒業ま
     での月換算で半年(人の会話なのでざっぱく感)から「10月初め」と想像でき
     ます。
  越前の転校を受けて「親の転勤ですかね?」(N15)とありますが、想像の範疇であ
  り、すぐに「いや、(エスシー学園は)そんなに遠い学校ではないし」と詮索してい
  ます。投げかけだけで正体に迫って(明確して)いません。越前に関する情報を増や
  すのが目的です。補作では「卒業を半年前にして有名私立校から自宅学区内の公立に
  転校してきた」を明確にしました。
    ★執筆分量30枚程度に対して「何を明確にし何は謎めきとして残すか」を考えた
     場合、「なぜ転校してきたか」が越前の核心であり、そのほかは早いうちに伝
     えるのが妥当です。

脚本対比表3-B 
【原作】
----+----10----+----20・・

    ×    ×    ×
  放課。席に座っている越前。
水谷「(来て)学級委員の水谷です。よろし
 く」
越前「君が策士の」
水谷「どうして僕のことを?」
パツキン「(来て)昨日あれから、一緒にド
 ロケイしたんだ。そのとき話した。コイツ
 めっちゃ速えからな」
水谷「その越前君と偶然同じクラスに? 出
 会いって不思議ですね」
パツキン「(越前に)今日の帰りも来るか?」
康太「(来て)ちょっと待った」
越前「?」
康太「昨日は人数が足りなかったから入れて
 やったが、今日はわけが違う」
パツキン「人数なんていつも違うだろが」
康太「大体、何でわざわざこんな学校に来た
 んだ。折角厳しいお受験を勝ち抜いたのに」
越前「(顔を背け)僕の自由でしょ」
康太「ほう(意味深な笑み)
パツキン「ハイハイハイ。じゃ、学校終わっ
 たら昨日の場所に集合な!」


01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
 
【補作】
----+----10----+----20・・

    ×    ×    ×
  休憩時間。席に座っている越前。
水谷「(来て横に座る)学級委員の水谷です。
 よろしく」
越前「君が策士の」
水谷「どうして僕のことを?」
パツキン「(来て向かい合って座る)昨日あ
 れから、一緒にドロケイしたんだ。そのと
 き話した。コイツめっちゃ速えからな」
水谷「その越前君と偶然同じクラスに? 出
 会いって不思議ですね」
パツキン「(越前に)今日の帰りも来るか?」
康太「(来て横に立つ)ちょーっと待った」
越前「?」
康太「昨日は人数合わせで入れてやったけど、
 今日はわけが違う」
パツキン「人数なんていつも違うだろが」
康太「(おでこを掻く)……大体、何でわざ
 わざこんな学校に来たんだよ。折角厳しい
 お受験を勝ち抜いたのに」
越前「(顔を背け)僕の自由でしょ」
康太「ほう(と見下ろす)
パツキン「ハイハイハイ(と立って康太の肩
 を叩く)……じゃ、学校終わったら昨日の
 場所に集合な!」

(1) 原作N21のト書きで《意味深な笑み》とありますが、より具体化かつ視覚的に見せる
  ものとして補作では、越前のことろに《来て》話を繰り広げる水谷・パツキン・康太
  の位置関係を明確にしてみました。中でも康太は立ったままにしN22で「ほう(と見
  下ろす)」とすることで、越前への対抗意識(まだ優越感がある姿)を作りました。
    ★映像系の脚本の場合のト書きは抽象的に書くのではなく、具体的な仕草や表情
     を用いれば、よりイメージを深められます。

脚本対比表3-C 
【原作】
----+----10----+----20・・

S9 集合住宅・公園(昼)
  康太、パツキン、ドス、水谷、A、B、
  C、D、Eが集まっているところに越前
  が来る。
水谷「越前君!」
康太「(舌打ち)」
水谷「皆揃ったことですし、始めます?」
パツキン「水谷、俺ととりとりだ」
水谷「いいでしょう」
パツキン、水谷「とーりとりじゃんけんほい
 (手を出す)
パツキン「うし、越前もらい
水谷「あれ、康太君ではなく?」
パツキン「だって越前の方が速えし」
康太「(鬼の形相)
水谷「(康太を見て)ヒッ! つ、次からと
 りとりやめましょう
パツキン「何でだよ」
水谷「(必死に)こ、康太君と越前君が絶対
 違うチームになっちゃいます!」
    ×    ×    ×
  康太・水谷・ドス・C・Dと越前・パツ
  キン・A・B・Eが向き合う。
水谷、パツキン「じゃんけんぽん(手を出す)
パツキン「泥棒だ!」
  泥棒が散り散りに逃げ出す。
ドス「越前君が泥棒……捕まる気がしないよ」
水谷「僕に良い考えがあります」


01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
 
【補作】
----+----10----+----20・・

S11 集合住宅・公園・大木の周辺(放課後)
  康太、パツキン、ドス、水谷、少年A・
  B・C・D・Eの集まりに越前が来る。
水谷「越前君!」
康太「(舌打ち)」
水谷「皆揃ったことですし、始めます?」
パツキン「水谷、俺ととりとりだ」
水谷「いいでしょう」
パツキン・水谷「とーりとりじゃんけんほい」
パツキン「(勝って)うし 越前もらい」
水谷「あれ、康太君ではなく?」
パツキン「だって越前の方が速えし」
康太「(歯をむき出す)
水谷「(康太を見て)ヒッ!(と首をすくめ
 小声で)次からとりとりやめましょう」
パツキン「何でだよ」
水谷「(必死に)康太君と越前君が絶対違う
 チームになっちゃいますし……
    ×    ×    ×
  康太、水谷、ドス、少年C・Dと越前、
  パツキン、少年A・B・Eが向き合う。
パツキン・水谷「じゃんけんぽん」
パツキン「ヨシャ、勝ったー。泥棒だ!」
  泥棒チームが散り散りに逃げ出す。
ドス「越前君が泥棒……捕まる気がしないよ」
水谷「僕に良い考えがあります」
 

(1) 原作N16に詰まり台詞(吃音表現)「つ、次から」があります。このほか原作のS23
  ドス「が、がんばったよぅ」S24康太「と、当然のことをしただけだ」も……。
  脚本において詰まり台詞自体は使用禁止ではありませんが、好ましい表現方法とは思
  いません。怯えたり緊張した様子を出したいのでしょうが、別の表現方法を望みます。
    ★吃音する人を指す特定用語は放送禁止対象になります。

脚本対比表3-D 
【原作】
----+----10----+----20・・

S10 同
水谷(OFF)「彼はまだこのマンションに
 疎いはず」
  B棟1通路でドスが越前を追いかける。
水谷(OFF)「先回りして逃げ道を塞ぎ」
  駐車場に飛び出す越前。正面に待ち構え
  るCを避け左に曲がる。
水谷(OFF)「一直線に走らせ」
  駐車場を走る越前。を見るが、Dが逃
  げ道を塞いでいる。
水谷(OFF)「A棟の凹みに潜む康太が
 まえる!
  A棟の壁面凹み部分から越前の正面に現
  れる康太。ニヤリと腕を広げる。
  だが、触れることもできず通り抜けられ
  る。
康太「(半泣き)何でだよォ」
  とがむしゃらに追いかける。


01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
 
【補作】
----+----10----+----20・・

S12 同・各所
水谷の声「彼はこのマンションに疎いはず」
  B棟1通路でドスが越前を追いかける。
水谷の声「先回りして逃げ道を塞ぎ」
  駐車場に飛び出す越前。正面に待ち構え
  る少年Cを避け左に曲がる。
水谷の声「一直線に走らせ」
  駐車場を走る越前。右を見るが、少年
  が逃げ道を塞いでいる。
水谷の声「A棟の凹みに潜む康太君が!」
  A棟の壁の陰から越前の正面に現れる康
  太。ニヤリと腕を広げるが、触れること
  もできず通り抜けられる。
康太「(半泣き)何でだよォ」
  とがむしゃらに追いかける。
 

(1) 人物が画面に登場せず声のみが流れる場合、人物名に続けて“(OFF)”と書きま
  すが、本作品においては行数を確保したいため2字でまかなえる“の声”としました。
  どちらの書き方でも問題ありません。

(2) 原作N11~12の台詞「捕まえる!」ですが、作戦の結果までを語っておいて「捕まえ
  られなかった」現実(以降のト書きと康太の姿)を見せるのがおもしろいか、結果を
  想像に委ねておいて現実を見せるか……好みの問題でしょう。補作で削除したのは、
  単純に行数の確保にすぎません。

*--------------------*
■脚本『放課後泥棒』の補作と解説(4)へつづく

AD
いいね!した人  |  コメント(1)  |  リブログ(0)

坂本 博さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。