交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


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 平成25年度「NHK中四国ラジオドラマ脚本コンクール」で入選に輝いた
『問わず語り』(作・浅川徳義)の作品評を掲載します。


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 自死した娘を想う荒木(66)と、くも膜下出血で妻を亡くした斎藤(64)が、
お遍路の途中で出逢い、別れ、再会するうちに互いの身の上を話す物語です。


 残念ながら高評価をくだすことのできない作品でした……。
 ひとことでいうと“淡々とした物語”です。それも情景描写と身の上を“終
始語った”という印象が強く残ります。もちろん荒木と斎藤のやりとりはあり
ます。しかしながらお互いを気遣う姿を表現しようとする作者意図なのでしょ
うか、身内を亡くした話(核心)になると、聞き手は当たり障りない相づちに
転じます。結局一方が“語っている”という印象がぬぐえません。その裏付け
として、身内の死について話しても絶句するでも涙するでも叫ぶでもなく、そ
れこそ過去の出来事として淡々と話す姿に、ドラマ性欠落の疑問を抱きました。
登場人物に何かしら込み上げるものやほとばしるものがないと、やはり退屈な
展開になります。それが「お遍路的情緒だから」とか「リアリティだから」と
いう考えもあるでしょうが、終始それを貫いていたのでは“1オクターブ内で
作られた単調な旋律の繰り返し”といわざるを得ません。

 序盤は、声をかけてきた斎藤がお遍路談義や亡くした妻の話を“斎藤主導”
で展開します。荒木は聞き役で言葉少なに返します。またその間の心境をモノ
ローグで発します。中盤は、斎藤と別れた荒木が一人になり、高知から高松へ
移動する様子と亡くした娘の思い出をモノローグで綴ります。終盤は、斎藤と
再会した荒木が娘の死について“荒木主導”で語ります。斎藤は言葉少なに聞
き役に転じています。


 序盤と終盤、身の上話をするほうが饒舌になり、聞き手は相づちで軽く返し
て結局「その気持ちわかります」と同調します。人物像が被っているように思
えます。もちろん身の上話の内容は違います。問題視したいのは“キャラクタ
ーの設定”です。序盤の斎藤のキャラクターを貫くなら、終盤もお節介気質が
あってもしかりと考えます。確かに妻を不意に亡くした斉藤の言葉として「奥
さんを大事にしなさいよ」とありますが、序盤ずけずけと荒木の胸中に踏み込
んできた斎藤のキャラクターは消えて(終盤は)聞き役に転じています。逆に
荒木が饒舌になります。長台詞です。相手の心境に踏み込むことはありません
が、饒舌さはまるで斎藤が乗り移ったようです。タイトル『問わず語り』を生
かすため作者のねらいでしょうか。結局二人の男が登場していますが、身の上
話をする構図においてはキャラクターが共有(入れ替わり)しているところに
違和を感じます。


 モノローグの多用も気になります。総数55枚に対して20%以上あります。特
に、中盤斎藤と別れた荒木が一人になります。この間8枚に及ぶモノローグは
情景描写と亡くした娘の思い出を語っています。途中一度だけ妻の声が入りま
すが、かえって紛らわしく「今の声は何?」と思わせます。妻の声を有効にす
るには、度々挿入する必要があります。それこそラジオドラマであることを活
かして“疑似会話の手法”を用いるべきです。そうすることでモノローグも減
少します。さらに「本当は一緒に巡りたかった」という荒木の願望も浮き彫り
になります。
 お遍路という省察のステージを用いることでモノローグの多用を(ある意味)
正当化させた感じもうかがえます。またモノローグに乗せて波や持鈴などのS
E(効果音)で叙情的表現をねらったのでしょうか。テクニックといえばそう
受け取れますが、やはり淡々とした語りが続くことに違いありません。
 今後ラジオドラマのあり方が「モノローグ主体でいいのだ」と誤解されぬよ
う、切に願うしだいです……。


 ラストで荒木が妻に電話します。「なんとなくきまりが悪かった」と締めく
くりのモノローグがありますが、結局妻との気まずさの改善も、その兆しもな
いまま着地しているのは納得できません。
 ドラマとは何か……。
 概念的にいえば『どんな境遇の人物が、どんな人と出逢いどんな出来事を経
験し、どう変わっていくか。その過程において人物の葛藤を描く』になります。
 おそらくこの物語は、ここからさらに続くと考えます。亡くなった娘が暮ら
した島に足を伸ばし、そこで何を見聞きしどう変わっていくか。さらに妻との
気まずさはどう乗り越えていくのか。この心境の変化を描いてこそドラマだと
考えます。


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イチオシが落選… (2013年12月17日掲載/審査結果と総評)
佳作『真っ赤な夜の出来事』の作品評 (2013年12月19日掲載)
『Iターン ~工藤さんちの場合~』の作品評 (2013年12月20日掲載)



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