交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるが、まさしくそれに匹敵する
出来事が起こった。


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福岡で財布奪われ11日…仙台まで自力で帰宅


 8月末に福岡市で行方不明になっていた仙台市太白区、男性会社員(25)が
9月5日、徒歩などで帰宅した。
 福岡市からは約1400キロ。11日かけて戻って来た男性は「福岡市内の路上で
財布も携帯電話も奪われた時は焦ったけど、帰宅できてよかった」と話してい
る。
 男性によると、8月25日に飛行機に乗り遅れた後、携帯電話の電池が切れた。
福岡市内で夜を過ごすため、インターネットカフェを探していた。午後10時頃、
路上で男5人くらいに「財布と携帯電話を渡せ」と脅され、財布と携帯電話を
置いて隙を見て逃げた。
 その後、野宿をしながら仙台に向かった。「靴の中に隠し持っていた2000円
で、食パンや水を購入し、飢えをしのいだ」という。
 9月5日午後7時過ぎに、母親(46)の経営する岩沼市のスナックに帰って
きた。その後、母親が宮城県警仙台南署に連絡した。男性は「まさかこんな大
騒ぎになっているとは。皆様にご迷惑をおかけして申し訳ない」と話している。


 真っ黒に日焼けした姿で帰ってきた男性を見て母親は号泣。「幽霊が現れた
かと思うくらいびっくりした。本当にうれしい。皆様にはご心配かけて申し訳
ございませんでした」と息子の無事を喜んだ。
 カードゲームが趣味の男性は、北九州市内で開催された全国大会に参加する
ため8月23日、仙台を出発。大事なカードはショルダーバッグにしまい、無事、
持ち帰った。


                   【2013年9月6日 読売新聞より】


福岡で財布奪われ11日…仙台まで自力で帰宅 【YOMIURI ONLINE】

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 ──こんな話を脚本コンクール募集の創作ドラマとして書いたとしよう。


 人物像やストーリー構成、エピソードなどの書き方によって傑作にも愚作に
も転がる『素材(設定)』といえる……。


 まず“愚作”と判断されるほうから考えてみよう。
 一番懸念される印象、つまり審査評として挙がりそうなコメントが「リアリ
ティに欠ける」ではなかろうか。1400キロを、野宿しながら、徒歩などで、11
日かけて……そもそもこういった要素が非現実的だ。通常の感覚では考えがた
い。しかもこ行程を支える要素として「靴の中に隠し持っていた2000円」とい
う設定も、根拠もなく突然見せると“都合良すぎ”と受け取られる。また、主
人公を記事のどおりに設定したら、男性は25歳と若いが会社員。つまり社会人
であり、立派な大人という印象を受ける。いくら携帯電話が主流の世の中とい
えども、公衆電話がまったくないわけではない。区役所や病院、ホテルなど公
共施設にはあるし、屋外でも探せば見つかるだろう。本当に困ったのなら交番
に飛び込むなり、何らかの方法で家族や会社に“連絡する”“保護を求める”
という選択肢は浮かばなかったのか。というより財布と携帯電話を奪われたと
き、なぜ警察に届けなかったのだろう。その時点で事情を話せば、家族に連絡
をとってくれるはず……。ドラマとして考えた場合、等々の疑問が浮かび上が
り、なおざりにしていると“荒唐無稽な設定”といわれかねない。
 「本当にあったウソのような話」的な番組でドキュメンタリータッチの再現
ストーリーとして見せて、出演者のリアクションやコメントを求めるには打っ
て付けのネタ(出来事)だろう。しかしながらこの話をそのまま鵜呑みにして
ドラマにするのは、いかがなものかと思う。いくら作者が「これは本当にあっ
た話なんです」と力説しても、それら疑問の根拠や解決が描かれてないと、審
査員は消化不良(書き込み不足)を理由に「それはそれ、ドラマはドラマ」と
一刀両断にするだろう。かくして、せっかくの傑作ネタも水の泡と化してしま
いかねない……。


 では“傑作”と判断してもらうには、どんな点に気をつけるべきか、考えて
みよう。
 愚作論で挙げた疑問は、この記事を読んでパッと思いつく程度である。当然
もっと検討が必要だ。
 一番に思いつくのは「この人物はどんな人なんだろう」というところ。つま
り隠し金を持つくらいの念入りさ、それでいて助けを求めず帰宅の旅(?)を
続けた大らかさ(?)がポイントといえそうだ。そして、もしかしたらこの行
程を“楽しんだ”のかもしれない。その辺を起点に『長~い帰り道』的なスト
ーリー展開の中で有効なエピソードを設定し、人物像を確立させる必要がある。
またカードゲームが趣味というもの、人物像の肉付けとして考慮すべき要素と
いえる。趣味を何にするかも検討すべきだろう。たとえば、その趣味が長旅を
飽きさせず、あるいは“連絡なし”などの根拠にも繋がれば納得性も増す。
 ドラマは虚構の産物である。 裏を返せば、記事で伝えてある内容だけでは
ドラマにはならない、ということだ。本人に取材して、何があったか何故かを
詳しく聞くのもひとつの方法だろう。ただし、それをドラマにどう反映させる
かは、やはり作者のさじ加減になる。事実といえども却下して、創作ドラマに
相応しい個性やエピソードに差し替えることを念頭に置くべきである。


 記事の出来事は、感動あるドラマになる要素が充分含まれている。しかしな
がら作者が目指すものが“創作ドラマ”なら、事実に囚われることなく客観的
な判断力をもって、論理的かつユニークな発想力で納得性ある展開に創りあげ
る……これらが秀作と愚作の分かれ目といえる。


平凡と斬新の境目(2013年5月22日掲載)



 とにもかくにも記事(現実界)の男性は、大事に至ることなく無事に帰宅で
きて良かった!

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