交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


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 平成24年度『NHK中四国ラジオドラマ脚本コンクール』の審査結果が発表
になりました。私の総評を掲載します。今年は「地域反映の考え方」にふれま
した。参考になればと思います。


入選 『紅いハンカチ』 藤井香織【東京都】
佳作 『イナナギ』   三井 隆【東京都】


そのほか最終選考作品(受付順)
   『蘭の男』           鈴木 恵 【東京都】
   『私の一番欲しいもの』     最上奈緒子【東京都】
   『堅忍の木目』         山本祐一 【東京都】
   『ねんねこ、しゃっしゃりませ』 水村節香 【大阪府】
   『ララバイ・二重奏』      タマエ  【神奈川県】
   『紫陽花』           長尾 静 【埼玉県】
   『長門の唄姫』         諏訪由美子【東京都】
   『海峡の夕日』         水野和宣 【東京都】
   『冠をのせて』         本山ふくみ【神奈川県】
   『RUN! RUN! RUN!』       石田耕平 【福岡県】


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【総評】


 最後はどちらが入選か。『紅いハンカチ』と『イナナギ』の対決でした……。


 脚本コンクールにおいてすべての審査員から、さらに作品のどのディテール
(題材、人間性、台詞、ストーリー展開、テーマ)もプラスの評価を得るのは
難しいことです。「あり得ない」と言ってもいいでしょう。全員満点の作品が
あったら、ぜひ読んでみたいし、どんな評価だったか非常に気になります。つ
まり評価には多かれ少なかれプラス点マイナス点がつきまとうものです。
 応募者は作品を創るにあたり二つの考え方があると思います。ひとつは「コ
ンクールの毛色を読み、対策を練り、それに合わせた作品を書く」です。もう
ひとつは「自分の書きたいものを書く」です。前者後者のバランス量は分かり
ませんが、『紅いハンカチ』は前者を『イナナギ』は後者を優先(意識)した
作品と受け取りました。
 審査員にもそれぞれ「審査のモノサシ」があります。どの審査員がどんな評
価だったかは作品評を読んでいただけたらモノサシが見えてくるはずです。当
該コンクールの傾向と対策に役立ててください。個人的には対策は必要と考え
ますが、思い切り書きたいものを書いた作品に出逢ったときには、直球勝負を
挑まれた感じがして気持ちのいいものです。


 入選争いを演じた二作品は、最終選考に残った12作品の中でも群を抜いた評
価でした。二作品の票数の差は1ポイントです。この時点で二作品が受賞対象
であることは審査員全員一致しました。問題は「どちらが入選か」です。『紅
いハンカチ』は地域性を、『イナナギ』は人間性を打ち出した作品です。結果、
応募規定に「中国地方もしくは四国地方を舞台にした作品あるいは同地方の土
地や歴史を盛り込んだ作品」とあるのが重視され『紅いハンカチ』が入選に、
『イナナギ』は佳作に決まりました。


 当該コンクールで応募者が一番苦労する(悩む)のが「地域性をどう反映さ
せるか」ではないでしょうか……。


 設定として主人公と地域の関係を考えたとき〝来訪型(含む帰郷)〟のパタ
ーンが毎年多いです。今年も最終選考12作品のうち7作品ありました。他のパ
ターンはといえば、ほとんどの人が必然的に〝在住型〟を思い浮かべるでしょ
う。今年も残り5作品はそうでした。主人公と地域の関係パターンは、寂しい
ことに99%がこの二種類に該当します。残り1%については、以下の設定も踏
まえて最後に紹介します。
 次に課題となるのが〝設定した地域性をどういう手法で表現するか〟です。
単純に光景や名物名産あるいは人の様子を、ナレーションやモノローグを使用
するパターンがほとんどです。台詞であってもガイドブックやインターネット
に紹介されている程度を話すくらいで、いずれも「説明的で淡々とした感じ」
です。もっと『人物やドラマの核心に地域性が深く浸透した流れ』がほしいも
のです。そうでないと、ドラマの展開とは別のところで「単に地域紹介があっ
た」の印象になります。確かにそれでも規定はクリアしていますが、審査とし
てはアピール度が弱いといえます。
 そして終盤は〝地域の姿に感化されて何らかの着地点を見つける〟というパ
ターンが目立ちます。「見聞きした程度」で主人公が背負っている課題が解き
ほぐされるは安易です。地域設定の扱い(表現)がおろそかだと、結局このパ
ターンに陥ります。必ずしも地域性が着地点に直接(全面的に)影響するもの
ではありませんが、ドラマとして織り込んだ以上、要因のひとつには違いあり
ません。考えたドラマ、そして書き上げたドラマを客観的に自己分析して「訪
れただけ・紹介しただけ・感化しただけ」つまり〝だけ〟の印象(パターン)
になっていないか、チェックしてください。


 1%の紹介です……。
 私の作品に『ミッドナイト・プラン』(FMシアター)があります。「東京、
ホテルの一室が舞台。銀行強盗を決意した男が、その前夜ひとりのコールガー
ルを呼ぶ。大都会でいいことなしの二人は同郷(広島)であることを知り、お
互いのカネで歪んだ人生を云々するうちに自分や故郷のことを見直していく」
という物語です。地域要素として〝かき養殖、お好み焼き、広島弁〟を織り込
みました。ナレーションもモノローグもありません。すべて台詞進行です。自
分たちに染みついた現実や気質や思いをトコトンぶつけ合います。その根底に
あるのが故郷で仕事に励み暮らしている両親の存在です。パターンに分類する
なら〝意識型〟とでもいいましょうか。SE(効果音)を駆使すれば、東京に
いながらにして地域イメージは充分作れます。ラジオドラマだからできる手法
です。これにより〝帰ることなく思いを馳せる〟という構図が成立します。だ
からこそ故郷の姿や思いが、つまり地域性がより強く打ち出せるという考えで
す。
 パターンは他にもあります。
 先に挙げた二種(来訪・在住)の逆で〝往訪型〟です。中四国地方の人が他
の地域へ行きドラマを繰り広げるパターンです。ただし注意点があります。行
き先が地方なら、その地域の特色とバランスを考える必要があります。それか
ら「行き先がなぜその地域か」という課題も生じます。忘れずに根拠を織り込
みましょう。表現的には〝意識型〟にもなるでしょうが、扱い方でドラマは様
々に変わるものです。ユニークな発想と構図をもってすれば、できないドラマ
とは思えません。


 以上一例として挙げましたが、1%の中にはまだ他のパターンもあると思い
ます。ぜひとも発想を巡らせてみてください。そして「その手があったか!」
と審査員を驚かせてほしいと願っています。


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入選『紅いハンカチ』の作品評
佳作『イナナギ』の作品評


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