交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 平成23年度「NHK中四国ラジオドラマ脚本コンクール」の審査結果と、
私の総評を掲載します。



入選  該当なし


佳作 『金毘羅夫婦』 石原理恵子(東京都)
佳作 『風の足跡』  水村節香 (大阪府)


そのほか一次審査通過作品
   『立花村回顧録』         福島俊弥 (東京都)
   『黒谷の鯉のぼり』        松英一郎 (愛媛県)
   『そろばんマジック』       旅瀬健二 (東京都)
   『中年の恋は、秋の季語ですか?』 津川有香子(大阪府)
   『風がはばたく時』        高橋美和 (愛媛県)
   『太陽が近い街』         浅田佳子 (東京都)
   『トレーズ・ダイアリー』     高橋 渡 (東京都)
   『ミューズの住む島』       吉川さちこ(兵庫県)



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【総評】


 今年度の作品を総ずると『起承承結 美談善人』の印象です……。


 最終選考に残った10作品の「ストーリー展開と人物像」がこの熟語で表され
てしまうのは、実に寂しい限りです。「どんぐりの背比べ」といっていいでし
ょう。しかもドラマとしては未成熟で短身の争いです。悪い意味で大いに悩み
ました。
 確かにストーリーの内容も人物の境遇や抱える問題は、それぞれに違います。
しかしその衣(ころも)を剥ぎ取って「展開の骨組み」「結末の方向性」「人
物の本質」を分析すると、すべての作品に「転句・クライマックスが物足りな
い」「美談に持ち込んでいる」「登場人物が善人でありすぎる」という特徴が
見えます。
 原因はひとえに『ネタ(エピソード・人物像・ストーリー展開)の検討不足』
といえます。発想があってから脚本執筆まで「どれだけ検討を積み重ねたか」
です。もしかしたら「こんなドラマを書きたい」という大枠の発想後すぐに脚
本執筆に入り、そのつど思いついたエピソードや台詞で書き上げたのではない
か、と受け取れます。
 検討をそこそこに書いた脚本には特徴が見られます。如実に現れるのが「台
詞」です。ムダ台詞・説明台詞・ナレーションまたはモノローグといった「不
純物」が多くなります。これらは展開の間延びをもたらすだけでなく、原稿枚
数を増やす要因にもなります。これにより「起句承句」の枚数が増えます。当
然「転句」を書く余裕(枚数)が減り「書き込み不足(ドラマ性の希薄)」が
生じます。気がつけば規定枚数に近づいてきたので「強引なまとめ」に陥りま
す。結果『起承承結』の脚本になるのです。
 ドラマで人物が交わす「台詞」と現実社会の「日常会話」には大きな違いが
あります。ドラマの台詞は、わずか数秒(数分)のシーンでドラマの方向性に
沿って必要な内容を伝えるものです。ところが日常会話は、そこまで計算して
しゃべっていません。相手に「何をどう伝えるか」という点は共通しています
が、ドラマの台詞のように吟味されたものではありません。どこかダラダラし
ていたり余分な言葉、つまり不純物が混じっています。これらを取り除き、展
開に沿った組み立てをし、印象的な表現を織り交ぜたのが「台詞」になります。
つまり脚本作りには、ストーリーで構成を考えるように『台詞の構成』も必要
不可欠ということです。
 もうひとつの印象「美談善人」も検討不足が招いた結果といえます。こちら
は「人物」に対する検討です。物語をスムーズに展開させればさせるほど、人
物は物語のために都合のよい応対をしているように映ります。人間性ではなく
「人形化」です。
 「美談や善人がいけない」といっているのではありません。仮にそこに到達
するにしても、もっと多彩もしくは深みのある人間性や展開が必要です。主人
公にちょっとした問題点を与えたぐらいの「かりそめの葛藤」や、あまりにも
一本道で小高い丘を越えたぐらいの「クライマックスもどき」、さらには論理
の飛躍ともいえるくらい「強引なラスト」で描くと、ドラマとしてのオモシロ
ミは半減激減するといいたいのです。
 二転三転する展開、深みあるクライマックス、豊かな人間性を描くには、50
~55枚の原稿用紙(今年度の規定枚数)をどう書き込むかがポイントになりま
す。そのひとつの方法が「台詞のスリム化」でもあります。台詞が簡潔になれ
ば、それだけ多くのエピソードやひとつのエピソードでも掘り下げて書けます。
ストーリー展開にテンポも生まれ、血のかよった人間性を描くことにも繋がり
ます。つまり台詞を極めることが、真の意味での『ドラマ脚本』を書く道しる
べなのです。


 ……結果、今年度の入賞作品は「該当なし」となりました。佳作の『金毘羅
夫婦』は審査員全員の評価を得ました。例年ならば入賞といえるだけの票数を
獲得しています。それにも拘わらず入賞に至らなかったのは「脚本として成立
しているがドラマ性は薄い」と判断されたのが一番の理由といえます。
 入選・佳作に向かうチャンスは10作品すべてにありました。「逃した魚の大
きさ」を今一度噛み締めてください。来年は、発想があったてもすぐに脚本を
書くのではなく、検討を重ねたうえで『しっかりしたストーリー構成、台詞構
成』を行い……そして脚本執筆に取り組んでほしいものです。


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