交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 私の作品でFMシアター『夢の香り』があります……。

 これが、ニコニコ動画に投稿されているのを知りました。ラジオドラマなの
で、もちろん音声だけです。聴くにはニコニコ動画のアカウントでログインす
る必要があるようです。


 ふ~ん、投稿ねえ。
 ……に関してはいろいろありますが、それはそれとして、脚本を公開します。



番 組 : FMシアター
タイトル: 夢の香り
放送日 : 1995年2月11日
脚 本 : 坂本 博
演 出 : 藤澤浩一
技 術 : 三沢英治/奥山 操
効 果 : 山倉正美
制 作 : NHK広島放送局


【劇中歌】
作 詞 : 坂本 博
作 曲 : 井田達成
編 曲 : 丸子理生
演 奏 : 井田達成/丸子理生/佐伯 優/桝 盛雄


【登場人物】
克 也 : 松本 元
理 恵 : 前田悠衣(現在・前田真里)
マスター: 室積 馨
由美子 : 福田 恵
その他


*---------------------------------**---------------------------------*
◆◆◆ 前編 ◆◆◆


  SE 蝉の鳴き声。
克 也 「すいません、ちょっといいすか?」
中年女性「はァ、なんでしょう?」
克 也 「こういう人探しとるんすけど、見掛けたことないっすか?」
中年女性「さァ、この辺じゃ見ん顔ですがのう」
克 也 「野崎由美子っていうんすけど」
中年女性「ちょっと分からんですのう」
克 也 「そうすか。どうも」
  SE 蝉の鳴き声、F・O。
     街中を走るタクシー。
克 也 「お客さん、次の信号右ですよね」
客(女)「そう、そこそこ」
  SE ウィンカーをつけてカーブする。
克 也 「(呟いて)由美子!……(慌てて)お客さん、すいません、ここで
    降りてもらえませんか」
客(女)「なんで?」
  SE タクシーを急停車させる。
客(女)「キャ」
克 也 「料金はいいすから」
客(女)「冗談きついッ、こっちだって」
克 也 「すいません」
  SE とタクシーを降りて
克 也 「由美子!……由美子!」
  SE と走る。(F・O)
     街の雑踏に混じってクリスマス・ソングが聞こえる。
客引き 「おにいさん、どう、いい娘いますよ」
克 也 「いえ、いいっす」
客引き 「ンなこと言わないで、ね、遊んでいこ、遊んで」
克 也 「アア、それより、こういう女知らないっすか?」
客引き 「知ってるよ。もっと美人でグラマーで、サービス満点の」
克 也 「いや、そうじゃのうて、この女……」
  SE 克也の足音をベースに、様々な雑踏(駅、パチンコ店、祭り、カモ
     メと波、サッカー場、路面電車……等々)が重なり、月日の経過を
     表現しながら。
克 也 「知らないっすか?……知りませんか?……野崎由美子っていうんだ
    けど……出身は広島……見たことない……そう、由美子……ここんと
    こにホクロあって……笑うとね、右のほっぺにエクボが……知りませ
    んか?……由美子……由美子っていうんだけど」
  SE 風が吹く。
克也(M)「そして、五年の歳月が流れたある日のことだった」
  SE 胎児の心音が神秘的に響く。
克也(M)「不思議な予感がした。何か未知のものに引き寄せられた感じと」
  SE 心音に混じって、幼子の「オーイ……オーイ……」と呼ぶ声が微か
     に聞こえる。
克也(M)「(前の台詞に続いて)過去に刻み込んだ、ひとつのあやまちに追い
    立てられた感じで、俺は足早に歩いていた」
  SE 街の雑踏がクロスする。
克也(M)「日曜の夕暮れ、繁華街の賑わいの中、人を追越し、人を掻き分け歩
    いた」
  SE 雑踏、C・O。
     アコースティックギターの弾き語り。克也の声で
      ♪束ねた髪をふわりとほどき
       そっとあなたに くちづける
       これが最後と 心に刻む
克也(M)「ふと脳裏を一曲の歌がよぎった。急がなければ……なんのために?」
  SE 街の雑踏、C・I。
     克也が走っている。
克也(M)「いつの間にか走っている自分が見えた……赤煉瓦で敷き詰められた
    商店街の道を抜け、ハンバーガー・ショップの角を右に折れ、小さな
    公園を突っ切ると大通りに出る。交差点を渡り、渋滞した車を脇目に
    北上する。入口の横に噴水のあるビルをすぎてひとつ目の角。そこを
    右に曲がって少し入った所……足は止まった」
  SE 克也の荒い呼吸。
克也(M)「俺が目指していた所は、やはりここだったのか」
  SE ライブハウスのドアを開ける。
     理恵とそのバンドのポップな歌『もっと、もっと』と、盛り上がっ
     た客たちの手拍子や声援に見舞われる。
      ♪夢もかすれる ザッパな時代
       都会の水は 乾いてる
       ことば少なに うつろな気分
       ゆらゆら人に 流される
       ひざを抱えた マネキンたちよ
       今夜は朝まで カルナバル
       だから…
       もっともっと 若さがはじけ
       もっともっと 自由自在に
       もっともっと もっともっと熱く
       素顔の君に 出逢いたい
        <間奏>
       錆びた場面は もの足りない
       中途半端じゃ 帰れない
       巡り巡って 希望のかけら
       輝く街は どこにある
       ウワサ話を 信じてないで
       ホンモノ探しに 出かけよう
       そして…
       もっともっと 絆が欲しい
       もっともっと 心を見たい
       もっともっと もっともっと熱く
       裸足の君に 出逢いたい
       もっともっと 若さがはじけ
       もっともっと 自由自在に
       もっともっと もっともっと熱く
       素顔の君に 出逢いたい


克也(M)「(しばらくして)店は活気に溢れていた……以前は俺も、この店の
    ステージでガムシャラに歌い、本気でプロシンガーを夢見ていた」
マスター「克也! 克也じゃないか! アーハハハハ……」
克 也 「(ぼんやりと)ァァ、マスター」
マスター「久し振りじゃのう。四年、いや五年になるか。どーや元気でやっと
    るか!」
克 也 「ええ、ま……」
マスター「おーいおい、どしたんや。魂抜けとるで。大丈夫か、お前」
克 也 「ええ。なんでもないっす」
マスター「とにかく、そんなとこでボーっとしとったら踏み潰されるで。それ
    ともなんや、お前も理恵の歌聞きに来たとか?」
克 也 「理恵って?」
マスター「今ステージで歌ォとる娘よ」
  SE 理恵の歌が大きくなる。
克也(M)「ステージに目をやると、ストロボフラッシュとスモークの中で、声
    を限りに歌う理恵がいた。華奢な身体にまだ幼さの残る面立ちだが、
    二十歳くらいだろうか」
マスター「彼女、今度プロデビューするけえの。ええじゃろう!」
克 也 「はァ……」
マスター「そういうたら、どっかお前に似とるの、彼女」
克 也 「そォすか? 俺、あんとに動き回ってたかな」
マスター「歌い方よ、歌い方。ブレスとか高音ひっくりかえすとこなんか、克
    也そのものじゃ」
克 也 「こういう曲も、イメージしとったんすけど。作り損ねたみたいで」
  SE 理恵の歌と演奏が次第にOFFになって手拍子だけが残る。やがて
     それは、克也の脳裏に去来した栄光のようにこだまする。
克也(M)「歌をやめて五年。今初めて、未完成のまま放り出したいくつかの歌
    を思い出した。ほんの少し、惜しい気もした」


  SE 調理場のドアを閉める。理恵の歌と歓声が消える。
     ビールを注ぐ。
マスター「今夜は調理場で勘弁してもろォて、そのかわり、ビールは飲み放題
    じゃけえ」
克 也 「すいません」
  SE カチンとグラスをぶつける。
マスター「乾杯!」
克 也 「(小さく)乾杯」
  SE マスターがゴクゴクと飲む。
マスター「フー、ぶりうま!……ところでどうかいの、克也。あとで歌ォてみ
    んや」
克 也 「いえ。俺にはもう、歌えないっす」
マスター「ホンマに?」
克 也 「はい」
マスター「ダメかァ。ずっと歌ォとってもらいたかったがのう、お前には」
克 也 「すいません」
マスター「年は? なんぼになるんかいの?」
克 也 「三十です」
マスター「結婚は?」
克 也 「いえ、まだ……」
マスター「うむ……まだ気にしとんか、ユミちゃんのこと」
克 也 「結局、それしかないっすから」
マスター「気持ち解らんでもないがのう。仕方ないじゃろう、おらんようなっ
    たもん」
克 也 「そうなんすけど」
マスター「お前ときたら、歌ァそっちのけで朝から晩までユミちゃん探しまく
    って。お陰でステージに、穴開けられたわな」
克 也 「すいません」
マスター「代わりが見つからんでのう、参った参った、ハハハ……」
克 也 「あれから五年……タクシー転がしながら、まだ探しとります。非番
    のときも、この広島だけじゃのうて、あちこち歩き回って」
マスター「ふーん、そうじゃったんか」
  SE 克也がビールを飲みほす。
克 也 「この店で働いとった由美子と知り合ォて、あいつの書いた詞に俺が
    曲付けて、歌ォて。いつの間にか一緒に暮らすようなって、ええがに
    いきよる思ォとったのに。あいつ、ふいっとおらんようなって……」
マスター「そうよのう」
克 也 「アア……マスターには言うとらんかったんすけど……そんとき由美
    子……妊娠しとって」
マスター「妊娠? ユミちゃんが?」
克 也 「ええ……」
  SE 心音が重苦しく響く。
克 也 「四ヶ月でした……由美子がね、男の子じゃったら、陽童(ようどう)
    いう名前がええいうて……太陽の陽に、童(わらべ)って書いて、陽
    童……ええ名前でしょう……あれから五年、時々子どものこと考えて、
    五歳いうたら幼稚園っすよね。男の子で、俺に似とったら、やっぱみ
    んなの前で歌ォたりして、舞い上がる性格なんかなって」
マスター「うむ。お前と同じでガッツのあるええ子じゃ思うで、絶対。陽童…
    …ええ名前じゃないか」
克 也 「ァハ……」
マスター「見付けるさ、お前ならきっと!」
克 也 「ハ……なんか、メソメソしちゃって」
マスター「ほら、元気出して! 飲も! ぱーっとやろ、ぱーっと! のッ!」
克 也 「そうっすね……はい」
  SE 調理場のドアを開ける。
     理恵の歌は終わり辺り。
     歌が終わる。客たちの拍手。
理 恵 「ふー、熱いー(と息が荒い)……えーと、おととい私は、二十歳の
    バースデイしちゃいました。そんで今日もまた、ここに来てるみんな
    が、プレゼントとか、オメデトウ言ってくれて、めちゃハッピーです。
    こうやっていろんな人から祝福を受けたのは、生まれて初めてです…
    …みんな! ホントにアリガトウ! アリガトウ!」
  SE 歌『熱いままのメモリー』のイントロが流れて、理恵が歌う。
      ♪あなたのぬくもり 私を包んだ夜(よ)は
       好きな歌を聞いて シェリー酒で過ごしたい
       琥珀色の部屋 静かに流れる夜(よる)
       時をひとつひとつ 数えていたいから
       あなたの仕草 あなただけの歴史
       熱いままのメモリー
       私 あなた色に 思い切り染め上げて
        <間奏>
       あなたの囁き 心を揺らした夜(よ)は
       愛の予感そっと 耳元で蘇る
       星空を見ては いつしか零れる笑み
       今夜もう少し 眠れそうにないから
       あなたの言葉 あなただけの誘い
       甘いままのメモリー
       そうよ ずっと私 あなただけ 愛してる
       あなたの瞳 あなただけの視線
       熱いままのメモリー
       あなた 私だけを いつまでも見つめてて
       い つまでも 熱いまま……


克 也 「(しばらくして)それにしても凄いっすね、あの理恵って娘」
マスター「ん?」
克 也 「人ですよ、人。俺らん頃は、こがァに集められんかった」
マスター「まァ、あの頃は、この店も始めたばかりじゃったしの。それに今夜
    は特別じゃ」
克 也 「彼女のプロデビューっすか」
マスター「オッ。俺の店から、いや、ミュージック村からプロが出るんは、初
    めてじゃしの」
克 也 「ミュージック村?」
  SE 理恵の歌声とクロスして、アマチュア・ミュージシャンたちの歌を
     数々流して。
マスター「ああ、知らんのんか。ここ一、二年のことじゃ、広島ミュージック
    村が旗揚げしたんは。定期的にライブや集会やったりして。中心部の
    広場で青空コンサートもするし、福山や呉のサークルともセッション
    したりでの。結構活動しとるで」   
克 也 「それって70年代にあった、ほら、吉田拓郎や浜田省吾を送りだした、
    広島フォーク村みたいじゃないっすか」
マスター「わしもの、始めはすぐ解散する思いよったが、結構まとまっていき
    よる。そこへ理恵の加入にプロデビューの話」
克 也 「凄いっすよ。広島がまた、音楽の街んなりますよ、それって」
マスター「じゃろう。そう思ォたら、フォーク村の元村民のわしも、なんか応
    援しとォなっての、ハハ……」
克 也 「俺も応援しますよ」
マスター「まァ、広島フォーク村いう時代があったんを知らん連中じゃが、と
    にかくみんな楽しゅうやっとる。そん中で、自分の力試してみよう思
    ォとるもんもおるし、今度は自分らの、広島ミュージック村の時代を
    築こうとしとる」
克 也 「夢よもう一度っすね」
マスター「ほいじゃがのう、克也。タクローやハマショウがおったように、あ
    の頃みたいな勢いが欲しいでェ」
  SE アマチュア・ミュージシャン達の歌、F・O。
克 也 「理恵がおるじゃないっすか!」
マスター「んー、そうなんじゃがのう」
克 也 「彼女ならいけますよ。バイタリティ感じるし、こういうちゃあなん
    じゃけど、曲のイメージ、俺とぴったりっすよ」
マスター「今じゃったら、克也もプロんなれるいうことか?」
克 也 「いえいえ。俺はもう本当に、歌えないっすから」
マスター「分かっとるて」
克 也 「代わりに彼女がやってくれますよ、絶対。俺請け負います」
マスター「ならええんじゃが。ただァ、なんかのう」
克 也 「なんかって?」
マスター「ん……それがの。あの理恵って娘な。四ヶ月くらい前じゃったかの
    う……確か、雨が降りよった」


  SE ライブハウスのドアが開く。
     雨が降っていて、車が跳ねを飛ばして通り過ぎる。
マスター「店開けよう思うて表へ出たら、理恵が立っとったんじゃ。傘もささ
    んと、ただ立って、店見とった」
理 恵 「オジサン、ここの人?」
マスター「そうじゃけど」
理 恵 「ね! 私、歌わせてくんない?!」
マスター「ああ、ま、ええけど」
理 恵 「ね(と譜面を鞄から出して)、この曲なんだけど、昨日私が作った
    の。見て見て」
マスター「いや、うちは別にオーディションとかやっとらんし、歌の好きなも
    んが賑やかしとるだけじゃけえ……ほうじゃねえ……そう言うても予
    定があるし、来月ぐらいなら」
理 恵 「(必死に)ね、お願い、今夜歌いたいの! 正直言って私さ、人前
    で歌ったことないし、歌なんて作るガラじゃないけど、ふとできちゃ
    ったの。ホント、どういう訳かできちゃって。そしたらなんか、誰か
    に聞いてもらいたいっていうか、うんん……この歌、絶対私が歌わな
    きゃって気んなって……だから、ね、この曲だけでいいの、歌わせて。
    お願い、歌いたいの! お願いします! お願いします! お願いし
    ます!……」
  SE 雨、F・O。


マスター「どう言うたらええんかのう……誰かに何か伝えたい。執念いうか、
    使命感みたいなもん感じたわ」
克 也 「ええじゃないっすか、一途で」
マスター「でもなァんか違うんじゃ。わしがこれまで見てきたアマチュアの連
    中? プロんなるためにギラギラしとるとか、楽しむことでウキウキ
    しとるいうもんじゃったが……理恵は、どっか違うんじゃ」
克 也 「で、どうしたんすか?」
  SE 理恵の先の歌『熱いままのメモリー』、F・I。終わり辺り。
マスター「結局押し切られて、その晩に歌わしたわ。そしたら驚いたことに、
    キャンペーンで広島に来とったレコード会社の人、たまたまこの店に
    来とっての、スカウトよ……ハハ……皮肉なもんじゃのう、そうなり
    たい連中は他にもおるいうのに」
克 也 「そうっすか……そんなもんすよ。そんなもん」
  SE 理恵の歌が終わる。
     客たちの拍手。
理 恵 「次の曲は、私がプロデビューするきっかけになった歌。私の、いや
    ……私もまだ知らない、小さな気持ちが歌んなった。そんな感じです。
    四ヶ月前ふと思いたって、それも初めて、作詞とか作曲とかできちゃ
    って、まるで夢みたいな話で、ホント不思議なんだけど……この歌が
    できたとき、こんなんなるとは思わなかったし、でもこうやって私の
    歌を聞いてもらえるなら、一生懸命歌います。聞いてください」
  SE 歌『夢の香り』のイントロが流れて、理恵が歌う。
      ♪束ねた髪を ふわりとほどき
       そっとあなたに くちづける
       これが最後と 心に刻む
       あなたの夢が きらめくのなら
       私遠くで 見守るわ
       物憂い風に 吹かれる町で
       夢の香りは 甘く切なく果てしなく
       込み上げる夢…夢…夢…
       今もあなたは歌ってるのですか
        <間奏>
       指輪のあとを ぼんやりなぞる
       ひとり窓辺に たたずむと
       いつか瞳は 冷たく濡れる
       あなたの姿 来るはずもない
       時の流れに 身を託し
       つれづれ密かに あなたを思う
       夢の香りは 甘く切なく果てしなく
       込み上げる夢…夢…夢…
       夢の香りは 甘く切なく果てしなく
       込み上げる夢…夢…夢…
       今もあなたは 歌ってるのですか


克 也 「(しばらくして呆然と)マスター……この歌……俺の歌っすよ」
マスター「ん?」            
克 也 「由美子が書いた詞に、俺が曲付けた」
マスター「何寝言いうとんや、克也」
克 也 「いや、ホントだってば。俺と由美子が作った歌っすよ」
マスター「どういうことや? ほいでも理恵は自分で作った言うたで」
克 也 「そんなん知らないっすよ。こっちが聞いたいくらいじゃ。多少アレ
    ンジは違ォとるけど、間違いない、俺たちが作った歌っすよ……(呟
    いて)そうか、由美子じゃ……由美子から聞いたんじゃ。そうに違い
    ない。あいつに逢ォたんじゃ……(大きく)由美子!(と立つ)」
  SE コップが床に落ちて壊れる。
     二人は調理場でもみ合いながら
マスター「ちょっと待て、克也……克也」
克 也 「由美子が」
マスター「落ち着け」
克 也 「由美子がおった!」
マスター「落ち着けいうたら」
克 也 「これが落ち着いとられますか。あの娘は由美子を知っとる」
マスター「克也」
克 也 「知っとるんじゃ!」
マスター「克也」
克 也 「放せ」
  SE ガチャンとコップなど落ちてが壊れる。
マスター「克也」
克 也 「行かして下さい」
マスター「客がおる」
克 也 「そんなもん」
マスター「待ていうたら」
克 也 「由美子が」
マスター「頼むけえ」
克 也 「由美子!」
マスター「克也!」
  SE もみ合いはおさまり、マスターに取り押さえられた克也が、ジリジ
     リもがく。そして理恵の歌『夢の香り』が聞こえる。
マスター「待てったら」
克 也 「アァッ……放せ……」
マスター「待つんだ、克也……」
克 也 「クソッ……」
マスター「我慢せえ……」
克 也 「放せ、クソッ……」
マスター「克也……」
  SE 心音が神秘的に響く。
     次第に大きくなって理恵の歌を掻き消して、心音だけになる。
克也(M)「そしてコンサートは終わった。バンドのメンバーはマスターが引き
    止めてくれるということで、俺は理恵を追って地下の楽屋に降りて行
    った」


                             つづく

*---------------------------------**---------------------------------*
ラジオドラマ脚本『夢の香り』(後編)



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