交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 以前に「脚本@塾」で『“汚い川”の様子を描き、そこから何かを伝える』
という課題を出しました。表現方法は、脚本形式でも小説形式でも問わず、媒
体も映像系・音声系問わないとしました。
 集まった作品のうち脚本形式も小説形式もありましたが、脚本は映像系だけ
で音声系、つまりラジオドラマを意識した作品はありませんでした。それだけ
ラジオドラマは「とっつきにくい」という印象があるのか、課題も光景要素な
ので「ある」とは思っていませんでしたが……。(淋)


 ──ポイントは「不都合を逆手にとる」


 ラジオドラマの不都合とは、いうまでもなく「映像表現ができない」ことで
す。つまり「台詞と効果音(SE)」で伝えるしかありません。このとき『光
景をいかに表現するか』が大きな問題といえるでしょう。書き方として「小説
の描写のように書けばいいのか」と勘違いしている人が多いようですが、これ
だと台詞ではなくナレーションまたはモノローグの多用になり、実際ラジオで
聞くと朗読劇にすぎません。
 表現したいものが「光景要素」であっても、ラジオドラマとして書く場合は、
そのイメージの中に入り込んで、耳を澄ましてそこに発生する音を探るのです。
さらには、現実音でなくても、それをイメージさせる音を考えてみるのもいい
でしょう。効果音を駆使する努力をしてほしいのです。
 効果音だけではドラマはできません。台詞があり、人の心情が動いてこそド
ラマが成立します。ナレーションやモノローグは、人の動きや心の変化を説明
するだけで、間接的で安易な手法にすぎません。それに比べて台詞は、人が発
する生の言葉です。直接的で「人そのもの」です。


◆ナレーションで表現
 N「男は“ラジオドラマは台詞と効果音が命でしょう”と大声をあげて机を
  叩いた」
       ↓
       ↓(小説風に表現)
       ↓
 N「男は“ラジオドラマは台詞と効果音が命でしょう”と目玉をひんむいて
  大声をあげ、机が真っ二つにならんばかりに叩いた」


◆台詞で表現
 男「ラジオドラマは台詞と効果音が命でしょう!」
   SE 強く机を叩く。


 一般的なナレーションと、あえて小説っぽく表現しました。「目玉をひんむ
いて」や「真っ二つにならんばかりに」の描写がそれです。私が審査員をして
いるラジオドラマ脚本コンクールの応募作品でも、このような表現をときどき
見かけます。確かにナレーションで、しかも小説の描写のように表現するほう
が、どんな様子か詳細に分かるでしょう。しかしそれでは「小説の領域」であ
って「ラジオドラマの世界」ではないのです。この勘違いをしている限り、書
けば書くほどラジオドラマから離れていくでしょう。

 小説風に書いたナレーションの内容を、つまり詳細状況を台詞で伝えるには、
次のように考えるといいでしょう。


◆台詞で表現
 男「ラジオドラマは台詞と効果音が命でしょう!」
   SE 強く机を叩く。
 女「なに目玉ひんむいて。机だって壊れるかと思った」


 その場に居合わせた人の反応を利用して、台詞で返させればいいのです。こ
れならば、(仮に)喧嘩に発展する様子がリアルに描けます。
 ところがナレーションだと「誰々は“○○○”と言い、△△△した」の伝聞
形式・状況説明の連なりになってしまい、テンポが損なわれていきます。しか
も当人が発した言葉「ラジオドラマは台詞と効果音が命でしょう」を、ナレー
ションだと台詞よりトーンが下がって発声されるはずです。その部分だけ当人
のように(台詞のように)発声するなら、当然台詞として表現するべきです。


 ──ラジオドラマは「盗み聞き」の世界


 たとえばドアの向こうで人が争う、まさにその場のやりとりを聞く「台詞形
式」と、第三者から争いの様子を聞かされる「ナレーション形式」では……私
は野次馬根性旺盛なので『生の声』を聞くほうが断然オモシロイですね!



 最後に、まだピンとこない人のために、課題とした『汚い川』をラジオドラ
マで描くとしたら、どう書くか。これを掲載しましょう。不道徳かつ不快感を
誘う作品ですが、「ラジオドラマ脚本の書き方」の一例として参考にしてくだ
さい。


───────────────────────────
◆課題『汚い川』のラジオドラマ版脚本◆
───────────────────────────
太郎「ア~、飲んだ飲んだ」
和男「最後のチューハイは余計だったかもな」
太郎「ちょっとタイム。小便」
和男「何だよ、こんなところで……っていっても、俺も」
  SE 太郎と和男が川に立ち小便をする。
     ヘドロの泡が湧き上がる。ゴボ……ゴボゴボ……
太郎「何だ?」
和男「川底でガスが発生してんだよ」
太郎「ゥワ~、ヘドラーとか棲んでたりしてな」
和男「ありうる。いろんなもん捨ててあるし、この川」
  SE 小石を投げ込む。チャポン。
太郎「外れ」
  SE 小石を投げ込む。カキーン。
和男「当たり」
太郎「何だろう?」
和男「自転車?」
太郎「いやァ、テレビ。それもテレビの画面」
和男「納得~」
  SE 二人が次から次へ小石を投げ込む。
     石が何かに当たり様々な音を上げる。
     コ~ン。ベチャ。ガチャン。ポコン。
太郎「やかん」
和男「段ボール箱」
太郎「ビール瓶」
二人「(声を揃えて)木魚!」
太郎「この川ってさあ、一体どうなってんの?」
和男「分かんない。夜は真っ暗だし、昼間だってガスってて、
 川の水面は見えないしな。それをいいことに、みんな何で
 もかんでも捨てるみたい」
太郎「どんなもんが捨ててあるんだろう」
和男「死骸とかあったりして……」
太郎「ええ!」
和男「それも犬や猫だけじゃなく、人のシ・タ・イ……」
太郎「ァー、何か気分悪くなってきた」
和男「冗談だよ」
太郎「ダメだ。ァァ……吐きそう……ォエ~ッ」
  SE ヘドロが湧き上がる。ゴボゴボ……ゴボゴボ……
     至る所で湧き上がってくる。
太郎「どうなってんだ」
和男「知らねえよ。でも、何か変だぞ」
  SE 沸騰するように止めどなく湧き上がる。
二人「ワァーーーーー」
  SE 噴水のように吹き上げる。
二人「助けてくれーーーーー(と駆け出す)」

                    《脚本 おわり》
───────────────────────────

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