交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 ──脚本家(ドラマ創作者)とは何者か。


 平成21年度「NHK中四国ラジオドラマ脚本コンクール」審査結果の作品評
にも書いたように『特異性に着眼し、自分以外の人格を用いて葛藤を創り出し、
大衆に娯楽と感動のひとときを提供する中で、自らが真実と信じるメッセージ
を発信する』……大げさにいうとこんな感じでしょうが、平たくいうと『変な
ヤツ』のひと言につきます。つまり『どれだけどんな風変わりを思いつくか』
で勝負する人種なのです。


 ──変を身にまとう。


 役者が「役作り」をするように、脚本家も創作するときは「登場人物本位」
の意識を確立します。決して「ストーリー本位」であってはいけません。まし
て「作者本位」は困ったものです。その意味で、ドラマの登場人物でしかもこ
の世には存在しない架空の人物とはいえ、他人の人生を想像し詮索するわけで
すから、脚本家は「覗き魔」「妄想癖」「多重思考」……といった数々の『変』
を備え、巧みに使い分ける必要があります。
 一般的にいう『変身』ではありません。ニュアンスとしては、気持ちや感情
を登場人物主観にシフトする『変心』の領域です。


 ──変を磨くには。


 ところが、これを成し得るために必要な「自分以外の人格を創り出す」が、
そう簡単にいく作業ではなく、この世に存在しない人間(ドラマの登場人物)
に相対して「何を言いたいの? どうしたいの? なぜそうなるの?」と、問
いかけの繰り返しです。さしずめ「疑問の渦」に投身する感じです。諸手(も
ろて)をあげて「楽しい」とはいえませんが、答えを見つけたときには「達成
感と秀作予感」に見舞われることは確かです。


 ──答えを見つける。


 架空の人物が直接答えてくれるわけではありません。もしもそんなときは、
それは考えすぎや疲れからくる幻聴でしょうから、ドラマ創作とは違う分野で
の気分転換をすすめます(笑)……。しかしながら作者として行なった人物設
定とストーリー展開の組み立てを、論理的はたまた意外性の観点から考えられ
れば、おのずと答えに近づき、ときには閃(ひらめ)きも舞い降り、「そうか、
そういうことだったのか」と確信できるみのです。


 ──人を見る。


 ドラマを創作するようになってから、特に「人」に注目しています。「こん
な人がいたら……」「こんなとき、人は……」を想像し、考え、描き込んでい
きます。考えるだけではもの足らず、というか、考えたことに「これはオモシ
ロイでしょ」と確信がもてないときは、それを話して他の人(友人)の反応を
みます。
*--------------------------------------*
(前略)
 私があるビルのロビーで煙草を吸っていたときです。そこには円筒形のロビ
ー用の大きい灰皿が置いてありました。ただ、皿の上にはみんなが吸った煙草
の灰が散乱していて、開いている窓から風が吹き込むと、灰はサーっと舞い散
るような状態です。それに気づいた知人が、灰皿をコトコト揺すって皿の上に
残っている灰を中に落としていました。傍らで座って煙草を吹かしていた私は
その光景を見て、彼が揺すっている振動が私自身にも伝わったかのようにブル
ブルっと上体を震わせました。ちょっとしたギャグです。
 灰皿を揺すりながら私のバカな姿が目尻に飛び込んだのでしょう。彼は「変
なヤツ」と不思議そうな表情をしましたが、チャップリンが歩くように滑稽に
揺れる私の姿を見て、やがてクスクスと笑いだしました。和みの瞬間です。
「こんなヤツいたら面白いだろうね」とバカバカしい話をしながらも、私が閃
いた着地点は「このギャグは地震災害のあった所では、やらんほうがええだろ
うな」でした。折しも、この話をしたころに大きな地震がありました。彼が勘
のいい人なら、私の無神経さや不謹慎さを感じるか、私の脳ミソの柔軟さや奥
深さを感じたでしょう。
(後略)
                    【著書『脚本家の脳ミソ』より】
               *--------------------------------------*
「なんだ、こいつ……」
 変な目で見られるのは承知のうえです。ただ、私の投げた話題でひとときで
も楽しんでもらったり、僅かでも身を乗り出して興味を示してくれたら、「あ、
これ使えるかも」とエピソード化を考えることもあります。もちろんそれをそ
のままとはいかないので、考えている人物キャラクターに沿ってさらに改良し
て「より惹き付け要素を増すよう」練り直します。


 ──流動性変人を貫く。


 つまり『変』を考えるためには、まず「空想家」であるべきです。次にそれ
を実行する「冒険家」であり、そして周囲の偏見に耐えられる「図太い神経の
持ち主」が望ましいでしょう。さらには、それらが固定化しない、いつも予測
不能な『くせ者』でありたいですね。(微笑)


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                あけましておめでとうございます
                  本年も「交心空間」をご支援ください


                             坂本 博

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