交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


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 平成21年度「NHK中四国ラジオドラマ脚本コンクール」で入選に輝いた
『禁じられた砂遊び』(作・西尾成)の作品評を掲載します。


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 二十年前の子どものころ、友だちの女の子と署名して鳥取砂丘に埋めた「婚
姻届」が砂丘の清掃で発見される。テレビのニュースで報じるのを見た当事者
の青年は、現在の恋人の存在を気にしながらも鳥取に帰郷する。当時を回顧し
ながら(大人になった)女の子を探す物語です。


 ドラマ創作者に必要な感覚とは『特異性に着眼し、自分以外の人格を用いて
葛藤を創り出し、大衆に娯楽と感動のひとときを提供する中で、自らが真実と
信じるメッセージを発信する』……大げさにいうとこんな感じでしょうが、平
たくいうと『変なヤツ』のひと言につきます。つまり『どれだけどんな風変わ
りを思いつくかで勝負する人種』といってもいいでしょう。
 その点からして、この作品には「砂丘から婚姻届が発見」「自分のしたこと
がニュースのネタに」「回顧模様」など『特異性・ドラマ性』の漂いがありま
した。
 ひとりの審査員から「二十年も経つのに」「ニュース素材として適当か」
「そのニュースを主人公が見る」のは『できすぎでリアリティーに欠ける』の
指摘がありました。しかし作者は「ビニール袋で包んだ」という納得のいく設
定をしています。また、ニュースは事件や事故を伝えるだけではありません。
地域の話題で「鳥取砂丘の一斉清掃が行われました」などの活動ネタはよく聞
きます。そのとき「署名済みの婚姻届が見つかった」は、作者も書き込んだよ
うに「このお二人はどうなったんでしょう」と、さらに話題性を高めて、全国
ネットで放送されても不思議ではありません。それから「主人公がそのニュー
スを見る」は、ドラマ創作の必要性から「偶然がもたらした(ドラマへの)き
っかけ」として、納得のいく設定だといえます。この作品を一押しした者とし
て弁護しておきます。


『ドラマは虚構の産物』といわれます。問題はそのウソを「どれだけ信じさせ
られるか」です。私は「ドラマ創作者は大ウソツキになりなさい。原稿料が取
れるペテン師になりなさい。そして騙された人(制作者や視聴者)から賛辞や
激励がもらえる魔術師になりなさい」と叫んできました。
 この作品がおもしろいのは、婚姻届発見の設定が「リアリティーか、ドラマ
性か」ではありません。私が「ドラマ性あり」と認めた最大の理由は「きっか
けとした婚姻届を出発点に、子ども時代に経験した女の子との淡くほろ苦い恋
心を増幅させ、その女の子を登場させることなく、妄想に替えて“ほんわかし
た世界”を魅せてくれた」ところです。
 議論の中で「男の論理? 男のエゴイズム?」の声もありました。確かに、
思い出として子ども時代の女の子が登場するだけで、男(主人公)の妄想で展
開します。現在の彼女は登場しません。未知数です。しかしそこにポイントを
置いた構成だからこそ『ラジオとしての想像性を高めた』といえます。


 発想だけではドラマになりません。大事なのは発想を活かす『構成力』ある
いは『表現力』です。表現力としては、子ども時代の女の子とのやりとり(台
詞)はユニークに展開していますが、現実部分のモノローグが物語を進行させ
るための説明になっています。受けとり方によっては、「モノローグが退屈さ
を印象づけ、せっかくヨシとした婚姻届発見の設定もコジツケにすぎない」と
いう欠点につながりかねません。この点がクリアできていたら真の意味で『ド
ラマチック』になったでしょう。
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脚本コンクール「五つの関門」 (同コンクールの総評・2009年12日18日記事)

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