交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 ドラマの主観をどこに置くかで、作者が「何を伝えたいか」も大きく変わっ
てきます。たとえば映画『ブラインドネス』(2008年/監督:フェルナンド・
メイレレス)ですが……まずストーリーは次のとおりです。


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映画『ブラインドネス』 【公式サイト】


 とある都会の街角。交差点で一台の車が立ち往生していた。「見えない……
目が見えない」 運転していた日本人の男(伊勢谷友介)は、突然目の前が真
っ白になり、完全に視力を失っていたのだ。彼は親切を装った泥棒(ドン・マ
ッケラー)に家まで送り届けられるが、そのまま車を持ち去られてしまう。妻
(木村佳乃)に付き添われ、病院で診察を受ける彼に対し医者(マーク・ラフ
ァロ)は、眼球自体に異常はなく、失明の原因が分からないと告げる。
 各地では失明者が続出していた。車泥棒も、同じ病院で治療を受けていたサ
ングラスの娘(アリス・ブラガ)も、さらには診察した医者までも。驚異的な
感染力で拡がる「ブラインドネス(白い闇)」を封じ込めるため、政府は緊急
隔離政策を発動し、感染者の強制収容を始める。かつては精神病院だったとい
う収容所に集められた感染者たち。その中にたった一人、何故か感染をまぬが
れ「見えている」女がいた。夫の身を案じて紛れ込んだ医者の妻(ジュリアン・
ムーア)だった──。


 続々と増える感染者。混み合っていく収容所の中で、最初に失明した日本人
の男は、離ればなれになっていた妻との再会を喜び合う。軍に厳しく監視され、
食料や医療品の注文もままならない収容所の現状に、苛立ちを募らせていく感
染者たち。秩序も衛生問題も限界に近づいていた。そんな中、黒い眼帯の老人
(ダニー・グローヴァー)が持っていたラジオから、外界の様子を伝えるニュ
ースが流れる。現状は予想以上に悪くなっていた。感染はすでに世界中に蔓延
し、街には失明者が溢れ出しているという。それは病棟内も同じだった。そし
て悲劇は起こる。混乱した警備兵が、入所しようとする患者を射殺してしまっ
たのだ──。


 第三病棟の王を名乗る男(ガエル・ガルシア・ベルナル)が銃を振りかざし、
暴力で全病棟の実権を握ったのは、それから間もなくのことだった。外部から
支給される限られた食料を独占し、「食いたければ金を払え」と脅す王とその
仲間たち。理不尽な要求に怒りを隠せない医者たちだったが、銃を前にしては
従うほかない。金品が底をついたと見るや、王たちは次の要求を突きつけた。
「金がなけきゃ、女を出せ。女が食事代だ」 女たちは屈辱と絶望を感じなが
らも、生き残るために耐える決意をする。打ちひしがれ、現実から目を背けよ
うとする男たち。収容所はもはや地獄と化していた。医者の妻は何とか状況を
変えようと、身の危険を感じながらも自分の目が見えていることを公表しよう
とするが、医者はそれを制止する。
 やがてさらなる悲劇が起こった。女たちのひとりが王の仲間によって殺され
たのだ。怒りに身を震わせる医者の妻は第三病棟へと向かう。たったひとつの
武器、ハサミを手にしのばせて。狂ったように襲いかかる男たち。第三病棟と
の凄惨(せいさん)な争いは厳しさを増し、やがて臨界点に達する──。


 収容所の外に希望はあるのか。この白く混沌とした世界に未来はあるのか。
すべては「見えている」者の瞳に託された──。

                   【同サイト・ストーリー紹介より】
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 主観は感染者にあります。感染の原因を追及する科学者や、感染の拡がりに
対処する政府(軍)ではありません。もちろんその話題に触れないわけではあ
りませんが、周辺状況として深入りしない程度に描いています。したがって感
染の原因はこれといって特定せず、ドラマの核心は「見えない人の恐怖や本性」
を掘り下げていきます。それを一層浮き彫りにしたのが「見える人」を感染者
の中にひとり置いた設定です。これにより「見えることの利便や優位、幸せを
感じる反面、見たくない現実……おぞましさを痛感」します。『逆転の中の逆
転の発想』といっていいでしょう。
 モチーフそのもの「感染」」をテーマとして扱うのではなく、モチーフの先
に発生(存在)した「人は見えなくなると」から波及する現象をテーマに据え、
見事に描いた特異なドラマだと感じました。



 同じように「感染」をモチーフにしても、映画『アウトブレイク』は血清の
開発と真相を追求する政府関係者に主観を置いています。


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◆映画『アウトブレイク』(1995年/監督:ヴォルフガング・ペーターゼン)


 米国陸軍伝染病医学研究所(USAMRIID)のレヴェル4(最高警戒度)研究チ
ームのリーダー、サム・ダニエルズ大佐(ダスティン・ホフマン)は、指揮官
のフォード准将(モーガン・フリーマン)に命じられ、アフリカの小さな村に
派遣された。そこで彼は、未知のウイルスによって村人たちが次々と死ぬのを
目の当たりにする。サムはウイルスがアメリカにまで広がる恐れがあると判断
し、警戒態勢を敷くように進言するが、フォードは“モタバ・ウイルス”と名
付けられたこの病原菌の研究をやめるよう命令する。その直後、カリフォルニ
ア州のシーダー・クリークという町で、住民たちの間に伝染病が発生した。症
状はサムがアフリカで目撃したものと同じだった。彼は命令を無視して町に駆
けつけ、民間の研究機関である疫病管理予防センター(CDC) で働く別れた妻
のロビー(レネ・ルッソ)と共にウイルスの制圧に取り組み、ペストよりも確
実に死がもたらされるという絶望的な事実を知る。陸軍から提供された血清が、
ウイルスに感染した猿に劇的な効果を与えた。発見されたばかりのウイルスに
効く血清をなぜ陸軍が持っていたのか、不審に思ったサムは驚くべき事実を知
る。モタバ・ウイルスは60年代に米国陸軍が参加したアフリカでの局地戦の際
に発見され、陸軍幹部マクリントック少将(ドナルド・サザーランド)によっ
て採取され、生物兵器として使用するためにひそかに保管されていたのだ。し
かし、ウイルスは突然変異を遂げており、猿を回復させた血清は人間には効か
なかった。サムは部下のソルト少佐(キューバ・グッディング・ジュニア)と
共に、最初にウイルスをもたらした“宿主”がアフリカで密猟された猿である
ことを突き止める。その頃、少将は生物兵器の事実を隠すため、かつてアフリ
カで行ったのと同じようにシーダー・クリークの町を焼き払おうと画策してい
た。そんな時、ロビーが誤ってウイルスに感染する。猿の居場所を突き止めた
サムとソルトは軍用ヘリコプターを奪って現地に向かうが、マクリントックも
ヘリコプターで追跡する。ヘリの追撃をかわしたサムたちは、捕まえた猿で血
清を作り、ロビーに試す。だが、既に気化爆弾を搭載した爆撃機は出撃してい
た。ヘリに乗ったサムは無線で爆撃機の乗組員に真実を訴え、爆撃を中止する
よう懇願する。乗組員たちはサムの訴えを聞き、爆弾を海上で爆破させた。正
義と責任感に目覚めたフォードは、マクリントリックを逮捕する。血清は大量
に合成され、ロビーをはじめとする感染者たちは快方に向かった。サムとロビ
ーはもう一度やり直そうと微笑みあった。

                   【goo映画・ストーリー紹介より】
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 主観を感染者ではなく医療・政府関係者に置いて真相解明を軸に描くことで、
ドラマの印象が「恐怖性」から「サスペンス性」が強くなります。特にこのド
ラマは「政府の陰謀を暴く」という勧善懲悪性も含んでいます。それを背景に
「ウィルスにも政府にも立ち向かう研究者・追求者の勇気」を描いたドラマで
す。



 ドラマ創作でモチーフ選びは視聴者を惹きつける一要素にすぎません。紹介
した二作品は「感染」をモチーフにしながらも全く違う作品に仕上がっていま
す。問題はモチーフを起点に『どの方向性で描き、何を訴えるか』なのです。

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