台詞を追求すべし(脚本推敲例) | 交心空間

交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

 台詞は『しゃべり言葉』でなくてはなりません。だからといって日常人が話
す言葉をすべて書いていたのでは原稿用紙のマス目を費やすばかりで、話の展
開にテンポはなく「結局何がいいたいの」の印象を与えます。それだけしゃべ
り言葉は「ねえ」だの「ああ」だの「そうそう」といった呼びかけや相づちが
多く、さらに思いついた順に発しているわけですからムダな言葉が多く、要点
を捉まえた組み立てではありません。
 台詞とは『日常会話のムダな部分を取り除いて、物語を展開させるため論理
的に組み立てたしゃべり言葉の連なり』なのです。


【脚本コンクールで上をめざす戦略ポイント】 (2007年3月27日)
 1.ト書きは「てにをは」を用いて明確に読みやすく書く。読点で代用する
   場合は不明瞭にならないよう細心の注意を払う。
     ■詳細:脚本界の悪い習慣 (2007年4月1日)
 2.台詞でイントネーションを表現したいばかりに小文字を多用すると読み
   づらくなり逆効果である。用いるときは判読の範囲で最小限にとどめる。
     ■詳細:イントネーション表現は逆効果 (2007年4月28日)
 3.台詞はしゃべり言葉であるが、ドラマを展開させる組み立てと読みやす
   さ(しゃべりやすさ)が大事である。


*--------------------------------------------------------------------------*
 これらを踏まえて3月27日に掲載した脚本例を推敲してみましょう。


【読みにくい脚本例】              【推敲後】
1---+----10----+----20 ┃行┃1---+----10----+----20
○ ファミレス・中            ┃1┃○ ファミリーレストラン・中
  A子、コーラを飲みながら、ケータイメ ┃2┃  A子がコーラを飲みながら携帯電話のメ
  ールしている。そこへB子、C子、来て、┃3┃  ールを見ている。
  A子の隣にB子、A子の向かいにC子、 ┃4┃  B子とC子が来て、A子の隣と向かいに
  座る。B子、アイスコーヒー、C子、チ ┃5┃  B子とC子が座る。B子はアイスコーヒ
  ョコパを注文する。          ┃6┃  ーを、C子はチョコパフェを注文する。
  B子、A子のメールを覗き込んで、   ┃7┃B子「(A子のメールを覗き込んで)誰から
B子「ねぇねぇ、誰からー」        ┃8┃ ?(と携帯電話を取り上げる)」
  と、ケータイを取りあげる。      ┃9┃A子「やだ、ちょっと返してよ(と取り返え
A子「あぁー、やだー、ちょっと返してよぉ」┃10┃ してバッグに仕舞う。ニヤニヤしながらコ
  と、取り返して、パチンと閉じて、バッ ┃11┃ ーラーを飲む)」
  グに仕舞い、それでもご機嫌。ニヤニヤ ┃12┃C子「昨日の彼からでしょう」
  しながら、コーラを一口飲む。     ┃13┃B子「ホントーに! そうなの?」
C子「きっときのーの彼からよ」      ┃14┃A子「へへ~んだ……ヒ・ミ・チュ~」
B子「ホントーにぃ! そーなの!」    ┃15┃B子「なにそれ? 意味わかんない」
A子「へへ~んだ……ヒ・ミ・チュ~」   ┃16┃A子「(意味深な表情)……ところでアンタ
B子「なにそれ? イーミわかんない」   ┃17┃ たちはどうなのよ」
A子「(意味深な表情を浮かべている)……」┃18┃B子「聞きたい?」
  やや間あって、            ┃19┃A子「別に、どっちでもいいけど」
A子「ところでさぁ、アンタたちどーなのよ、┃20┃C子「アタシ知ってるよ(と優越感に浸る)」
 コラッ」                ┃21┃  B子が自分の携帯電話をA子の目の前に
B子「聞きたい?」            ┃22┃  チラつかせる。
A子「別にぃ、どっちでもいーけどぉ」   ┃23┃A子「見せて見せて! 見せてよォ」
C子「アタシ知ってるよ(と優越感に浸る)」┃24┃  A子がB子の携帯電話を取ろうとするが、
  B子、ケータイをA子の目の前にチラつ ┃25┃  B子は取られないようにしながら見せび
  かせる。               ┃26┃  らかす。A子は取れそうで取れない。
A子「ええ~っ、見せて見せて! 見せてよ ┃27┃A子「もういい、わたし帰るッ(立つ)」
 ぉ~」                 ┃28┃C子「怒らない怒らない……B子もイジワル
  と、B子のケータイを取ろうとするが、 ┃29┃ しないで見せてやりなさいよ(B子の携帯
  B子、ケータイを取られないように、で ┃30┃ 電話を取りあげてA子に渡す)」
  も見せびらかすように、A子の前へ出し ┃31┃B子「じゃあ、私もA子の見るからね」
  たり引っ込めたりする。        ┃32┃ B子がA子のバッグから携帯電話を取って
  A子、取れないし、からかわれている事 ┃33┃ メールを見る。C子も立って覗き込む。
  にイライラ。次第に膨れっ面になり、キ ┃34┃ メールがアニメーションで表示される。ハ
  レる。                ┃35┃ ートマークが出て“A子 LOVE”とタ
A子「もぅいっ。ゎたし、帰るっ!」    ┃36┃ イプライター表示、くちづけをする男女の
  と、立つ。              ┃37┃ 姿が展開する。
C子「まぁまぁ、そー怒らない怒らない(と、┃38┃B子「うっそー! もうキスったの?」
 A子を宥め座らせて、B子に)B子もイジ ┃39┃C子「(呆れてへたり込む)」
 ワルしないで、見せてやりなさいよ」   ┃40┃  A子はニヤニヤしている。
  と、B子のケータイを取りあげて、A子 ┃41┃----------------------------------------
  に渡す。               ┃42┃
  B子、A子のバッグを取って、     ┃43┃
B子「じゃー、私もA子の見るからね(とケ ┃44┃
 ータイを取り出してメールを開いてデルモ ┃45┃
 ジ表示で見る)」            ┃46┃
  C子、身を乗り出して、B子が見ようと ┃47┃
  している、A子のケータイを覗き込むと、┃48┃
  メール、デルモジ表示される。ハートマ ┃49┃
  ーク表示の後、“A子 LOVE”とあ ┃50┃
  って、くちづけの表示。        ┃51┃
B子「うっそーっ、もーキスったの?」   ┃52┃
C子「そっこ~(と、座って、呆れる)」  ┃53┃
  A子、ニヤニヤしている。       ┃54┃
----------------------------------------