年間をとおして様々な脚本コンクールが行われています。つまりそれは「ド
ラマ業界において常に新鮮な作品を求め、書き手の発掘がねらい」といえます。
──引く手あまたなのに、応募者は上をめざす努力をしているか。
私が審査員をしている脚本コンクールに応募してきた原稿を読んでいると、
ト書きや台詞を「文章」として捉えた場合、「何がどうなっているの?」と考
えてしまうときがあります。これではいくら内容がおもしろくても、それを表
現する文章に難があるため伝えきれず、審査員といえども読む意欲が半減して
しまいます。
まず次の脚本例を読んでみてください。
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○ ファミレス・中
A子、コーラを飲みながら、ケータイメ
ールしている。そこへB子、C子、来て、
A子の隣にB子、A子の向かいにC子、
座る。B子、アイスコーヒー、C子、チ
ョコパを注文する。
B子、A子のメールを覗き込んで、
B子「ねぇねぇ、誰からー」
と、ケータイを取りあげる。
A子「あぁー、やだー、ちょっと返してよぉ」
と、取り返して、パチンと閉じて、バッ
グに仕舞い、それでもご機嫌。ニヤニヤ
しながら、コーラを一口飲む。
C子「きっときのーの彼からよ」
B子「ホントーにぃ! そーなの!」
A子「へへ~んだ……ヒ・ミ・チュ~」
B子「なにそれ? イーミわかんない」
A子「(意味深な表情を浮かべている)……」
やや間あって、
A子「ところでさぁ、アンタたちどーなのよ、
コラッ」
B子「聞きたい?」
A子「別にぃ、どっちでもいーけどぉ」
C子「アタシ知ってるよ(と優越感に浸る)」
B子、ケータイをA子の目の前にチラつ
かせる。
A子「ええ~っ、見せて見せて! 見せてよ
ぉ~」
と、B子のケータイを取ろうとするが、
B子、ケータイを取られないように、で
も見せびらかすように、A子の前へ出し
たり引っ込めたりする。
A子、取れないし、からかわれている事
にイライラ。次第に膨れっ面になり、キ
レる。
A子「もぅいっ。ゎたし、帰るっ!」
と、立つ。
C子「まぁまぁ、そー怒らない怒らない(と、
A子を宥め座らせて、B子に)B子もイジ
ワルしないで、見せてやりなさいよ」
と、B子のケータイを取りあげて、A子
に渡す。
B子、A子のバッグを取って、
B子「じゃー、私もA子の見るからね(とケ
ータイを取り出してメールを開いてデルモ
ジ表示で見る)」
C子、身を乗り出して、B子が見ようと
している、A子のケータイを覗き込むと、
メール、デルモジ表示される。ハートマ
ーク表示の後、“A子 LOVE”とあ
って、くちづけの表示。
B子「うっそーっ、もーキスったの?」
C子「そっこ~(と、座って、呆れる)」
A子、ニヤニヤしている。
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組み立てとして一点のみ褒められる箇所を含んでいますが、ほかは指摘要素
ばかりです。いろいろあるので解説は数回に分けてします。お楽しみに……。
《つづく》