交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 遅くなりましたが、私が審査員をさせてもらっているNHK「中四国ラジオ
ドラマ脚本コンクール」の平成18年度審査結果をお伝えします。


入  選:該当なし
佳作一席:「僕の細道」      常磐奈津子
佳作二席:「夜の静寂を越えて」  佐和みずえ
  〃  :「バスガイド・ポン子」 梯佐知子
  〃  :「石の記憶」      稲田篤子


 ……ということで、私の総評を公開します。
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【総評】
 今年度の応募は『数も質も不作』といわざるをえません……。
 応募総数24作品のうち一次審査通過が10作品、このうち4作品が最終選考に
残ったものの、率直にいうとこれらは「本来なら最終まで残る作品とはいえな
い」のが、今年度の淋しくも厳しい現状でした。そのような低レベルでの争い
であり、佳作受賞となった作者は、ひとえに「不作がもたらした幸運」と受け
止めてほしいところです。
 不作と称した理由を「質の面」から話しましょう。ドラマを考える場合『テ
ーマ・人物像・素材・ストーリー』で四点のバランスを意識します。さらにラ
ジオドラマでは、これらに『音表現』を加えた五点で考えるのがベストな作品
です。これを踏まえて、今年度の作品に共通していえる欠点、すなわちラジオ
ドラマにおける基本的な「減点(審査)ポイント」をあげておきます。


◆ストーリーが平たんで「葛藤の山場」が見当たらない。
 ひとつの「発想」を基に創作が始まるわけですが、それが「テーマ・人物・
素材・ストーリー」のいずれに関する発想であっても、そのひとつを起点にこ
れら四点をさらに検討し、奥深くメリハリのあるドラマを目指してください。
でないと人間性も薄く、素材も引き立つことなく、ストーリーも淡々としたも
のになりかねません。ましてや何を伝えたいのか、テーマも不鮮明になります。


◆モノローグやナレーションの多用で「朗読作品」になっている。
 日常生活で「相手の気持ちを知りたい」と思うとき、どうしますか。淡々と
語る胸の内を聞いて、相手の気持ちが納得できますか、感動しますか……。そ
うではないでしょう。人が、ケタケタ笑う姿から楽しんでいると感じ、大声に
驚き怒っていると察知し、しくしく涙する姿に共感するのが自然な姿ではない
でしょうか。ドラマは人間のそんな姿を伝える世界であり、本来あるべき形な
のです。


◆映像を意識した素材が多く「ラジオドラマ向き」とはいえない。
 とにかく映像を意識した作品が多いですね。佳作一席の『僕の細道』は「お
遍路」、佳作二席の『夜の静寂を越えて』は「骨とう品」、『石の記憶』は
「不思議な石」、『バスガイドポン子』も「名所めぐり」です。これではラジ
オドラマとして難点を感じます。視覚要素でも音との繋がりを考えて、もっと
イメージできる捉え方をしてドラマ性を高める方向を示してほしいものです。
ほか6作品も同様にいえます。哀しいことに、一次審査通過の10作品で「これ
はラジオドラマだ」といえるのは一作品もありませんでした。


 最終選考に残った4作品は「一長一短」というより「一長三短」ぐらいの印
象です。それでも4作品すべてが佳作に選ばれたのは、ひとつの欠点を理由に
落選にすると、同様にいえる作品も引きずられてすべてが落選となります。欠
点を乗り越えて踏みとどまるだけの長所が見あたらないのです。入選はともか
く『すべて該当なし』の結果も考えましたが、それは審査する側にとって「こ
のうえない虚しさ」です。「それだけは避けたい」との声もあがり、声に出さ
ないまでも誰もが同じ気持ちでした。かくして4作品の中で可能な限りの長所
を再検討したうえ、『僕の細道』が一番「まとまり(バランス)の良さ」があ
ると佳作一席に選ばれ、ほかは同列で佳作二席としました。
 これほど選考に苦労した年は記憶にありません。
 来年の応募ではこれらがより深く検討したうえで書かれ、今度こそ「入選」
に到達できる作品が現れることを期待します。


                              以 上
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【関連記事】
審査総評に託す思い (2006年11月25日)
脚本コンクールの審査ポイント (2005年11月12日)
客観性の勝利 (2005年12月17日)

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