交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 『冬の花火』で脚本と小説の大きな違いは、クライマックスである「最後の
花火にふたりが見入る」場面にあります。


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「最後の一本。お兄さんにあげるよ。やってみれば……」
 赤いマニキュアの手で花火を差し出した。
「ありがとう」
 花火を手に取ると、彼女が火を点けた。冬の花火は、パチパチと音を立て、
暗黒の空間を多彩な閃光で埋め尽くし、夢幻の宇宙へと導いてくれた。


  ↓ 《 脚本化 》


女「最後の一本、お兄さんにあげるよ。やってみれば……」
  女が赤いマニキュアの手で花火を差し出す。
男「ありがとう(と受け取る)」
  女が花火に火を点ける。


○ 花火と男と女のイメージ
  花火の煌めきを背景に、様々な映像が重なる。
  それらをモンタージュで伝えていく。
   ・冬のネオン街、寒そうに行き交う人々の姿。
   ・花火を見る女の顔。
   ・バーで客に酒を注ぐ女の姿。
   ・カラオケの相手をする女の姿。
   ・チークダンスの相手をする女の姿。
   ・バーの前で客たちを見送る女の姿。等々……
   ・花火を見る女の顔。
   ・花火を見る男の顔。
   ・会議室でクライアントに説明する男の姿。
   ・パソコンに向かって仕事する男の姿。
   ・電話にでる男の姿。
   ・街中を走る男の姿。等々……
   ・花火を見る男の顔。
   ・花火を見る男と女の顔。
  そして花火が消えていく───
*--------------------------------------*


 小説では2月27日に解説したように『夢幻』の一語に託した描写ですが、脚
本は、幻想的な花火を背景に男と女の日常を重ね合わせて『華やかさと儚さ』
をイメージさせるのを意図しました。「モンタージュ」とあるのはカット映像
の組み合わせで、それひとつでは大きな効果は出ませんが、総合的に繋げると
ねらいとするものを物語るよう構成される映像手法です。


        ※        ※        ※


 脚色は、小説を基にシーン展開やト書き、台詞に組み直す作業です。人物像
やストーリーを一から創る作業ではありませんが、既存の小説を脚色してみれ
ば、「どう描けばより効果的で印象に残るか」を考える『構成』の勉強にもな
ります。あとは、その構成に従って脚本を書いていけばいいのです……。


冬の花火(小説形式)

冬の花火(脚本形式)

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