交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 先月19日に「中四国ラジオドラ脚本コンクール」の最終選考を終えたことを
伝え、結果は控えていましたが、先週「その授賞式が行われた」との新聞発表
を見つけました。


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 ラジオ脚本家の新人発掘を目的にした05年度の「中四国ラジオドラマ脚本コ
ンクール」(NHK広島、松山放送局共催)の受賞式が7日、松山市堀之内の
NHK松山放送局であり、大洲市の主婦、芝寿美さん(50)と大分市の主婦、
高橋美和さん(50)の合作「春の旅人」が佳作1席に選ばれた。来年度のNH
K・FMで全国放送を予定している。
 2人は西予市出身で一卵性双生児。25年以上、漫画の原作などを書いており、
5年前からラジオドラマなどに挑戦。作品はそれぞれの形で家族を失った3人
が、四国まで南下する旅の中で、きずなについて考えていく。審査では「家族
について語っているせりふが素晴らしく、ラジオドラマにぴったり」と評価さ
れた。
 2人は「ライバル同士だが、客観的に作品を見ることもできる。これからも
地方を舞台にした作品を書きたい」と受賞の喜びを話した。


*-------------------------------------*【毎日新聞 2005年12月8日より】



 ……ということで、私の作品評も公開しましょう。


 ある日徒然自殺した父親のあり方に納得のいかない真紀は、父親が大事にし
ていたチェロを捨てる決心をして家を出る。養蜂業の老人と青年に出逢い一緒
に旅をする中、それぞれに辛い思いを抱える三人の疑似家族を通して、壊れた
家族の再生と愛を探して生きる姿を、チェロの音色と蜂の羽音に乗せて描いた
作品です。
 一番の評価は「チェロと蜂の羽音」という素材の組み合わせです。捨てる気
で持ち出したチェロを巣箱にしてしまった蜂たちの羽音が、実にラジオ向きで
「どんな音を醸し出すのだろう」と脳裏に焼き付けられました。
 この他にも、前のシーンの出来事ややりとりを巧く引き継いで展開させてい
ることや、味のある台詞に惹かれました。いくつか紹介しましょう。真紀の台
詞で「知らないことだらけ。人間って自分に関係ないことは本当に何も知らな
いんだ」があります。旅に出て人や蜂との出逢いがもたらした素直さが表現さ
れています。青年の台詞で「ベタベタ憎み合って」があります。これは、その
あとのやりとりでどんなイメージかをちゃんとフォローしていて、それが「家
族への印象」に繋がります。老人の台詞で「人並みに生きてりゃ大したもんだ。
人並みってもんはバカにしたもんじゃねえ」があります。長年生きてきた者の
実感が漂ってきます。ここでは前後のやりとりを省略しているので、これだけ
では「ただの言葉」ですが、展開の中で出逢うと「なるほど」と舌つづみを打
つほどの味が出ています。ラジオドラマにおいて、展開を生かす台詞の魅力度
は重要です。それを成し得た作品だといえます。


「では、なぜ入選ではないか!」
 入選に届かない理由に「父親は何故自殺したか不明瞭で納得性に欠ける」が
上げられました。「これがテーマであり、不明瞭では入選ラインを超えること
はできない」との別審査員の意見です。
 私の考えは違います。父親の自殺は「真紀が背負った境遇」であり、テーマ
ではないと捉えました。だから、父親側(自殺の原因)を明確にしても、それ
は「父親のドラマ」にすぎません。これに囚われて執筆分量を費やしても過去
(父親)を解明しただけで、逆に旅をしている「今の真紀」が希薄になります。
明確にするより、旅の中で真紀が何かの出来事の折に「おそらく父はそんなこ
とを思って死を選んだのか」と感じる場面があれば、それだけで残像を与えら
れるという見解です。
 主人公は「真紀」、脇を固めるのは「疑似家族の老人と青年」、ドラマはこ
の三人に焦点が当てられるべきです。そしてテーマは「境遇(それぞれの辛い
過去)を乗り越えたところにあり、出逢った三人が『改めて実感』する家族の
姿」を描くことです。その実感が過去の痛手を和らげ、本当の家族と向かい合
う力を与えてくれたときが、ドラマ誕生の瞬間ではないでしょうか。
 このことから私が引っかかったのはドラマの着地点でした。ラストで「自殺
した父親へ思い」を伝えていますが、これでは父親の自殺の理由と同様に「謎
解きドラマ」の印象が残ります。それはラストへの助走という組み立てにし、
ラストではもっと成長した姿を見せて欲しいものでした。何がインパクトをも
たらすかは未知数ですが、素材としたチェロと蜂を巧みに使い、例えば「チェ
ロは捨てるでも持ち帰るでもなく、羽音の癒しで立ち直らせてくれた蜂たちに、
巣箱としてプレゼントしてもいいじゃないですか。チェロの中や弦の上で羽音
を立てる幻想感溢れるシーン(音)で終えられたら……」印象的になると感じ
ました。
 エンドマークまで『素材に対する作者の拘り』を見せて欲しいものでした。


                            以上です……。

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