交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 ホテルの一室。銀行強盗を決意した男が、その前夜、ひとりのコールガール
を呼んだ。大都会でいいことなしの二人が同郷であることを知り、お互いの金
によって歪んだ人生を云々し合ううちに自分や故郷のことを見直していく。


   カネとウンコとセックスと……ねじれまくった男と女の一夜物語
   オゲレツでチョ~情けなくも、ハートをくすぐる逸品じゃけん! 


          抱 腹 絶 倒 の 二 人 芝 居 !!


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  舞台はホテルのスイートルーム。
  人の姿はない。テレビがついていて、関東地方の明日の天気を伝えている。
  低気圧の接近で雨の予報。
  “ピンポン”とチャイムが鳴る。
男の声「はァーい、ちょっと待って」
  少し間あって、チャイムが鳴る。“ピンポン、ピンポン”と二度。
男の声「じゃけえ、ちょっと待って」
  トイレットペーパーを引き出して、ちぎる音。
  トイレの水が流れる音。
男の声「ったくもう、これからってときに……」
  とトイレドアの開閉音あって、ズボンのベルトを締めながら男が壁(舞台
  奥の下手側)の向こうから登場。室内を通って入口まで歩いていく(下手
  に消える)
男の声「はァい」
  部屋のドアを開ける音。
女の声「ごめんなさい、タクシーがつかまんなくって。いないのよねェ、この
 時間のタクシー。二次会、三次会でできあがった酔っぱらいがあちこちに出
 てきて、道徳心なんてどこへやら、道路の真ん中まで出てってタクシーだろ
 うが何だろうが、ボンネットがんがん叩いて乗せろ乗せろの大合唱。ちゃん
 と並んでる私はどうなんのよ……入ってもいい?」
男の声「アァ……」
  男の腹、グルグルグルと鳴る。
女の声「何? 今の?」
男の声「ア、いやちょっと……ァァ、駄目だ」
  と男が(下手より現れ)小走りに室内を通って、トイレ(壁の裏)に駆け
  込む。
女の声「どうしたの?」
男の声「(トイレから)ちょっとタイム!」
女の声「はァい、そういうこと。ま、ちゃんと洗ってもらえばいっか……入る
 わよォ」
  部屋のドアが閉まる音。
女 「ワッ……絨毯が、フカフカだ」
  と女が(下手より)室内に入る。
  壁を軽くノックして
女 「頑張ってるゥ?」
男 「(トイレから)もうちょっと待って」
女 「いいのよォ、ゆーっくり入ってて……これも時間に入れとくから」
  女、室内をうろうろしながら
女 「へー、すっごい部屋。何度かこのホテルには来たことあるけど、やっぱ
 スイートはいいわァ。テレビだってワイドだもん……エイ!」
  とチャンネルを選択する。“ザー”という砂の嵐画面。
女 「あれ? エッチビデオやってない……そうなの?……でしょうねえ、ス
 イートだもん(とテレビを切る)……おいおいおいおい……(と壁に掛かっ
 た絵画に近づいて)これってピカソ?……ウッソでしょう。サインがしてあ
 る……ァ~、読めない。壁から外した途端に警報鳴ったりして……あいつ、
 何者だろう? こんな部屋に泊まるからにはすっげえ金持ちなんだろうな…
 …サービスしてやっか? チップもらえるかもね……へへ……ベット。プロ
 レスのリング並みね……いくぞ、オリャ!(とベットに飛び込む)……キャ
 ハハハ……オゥ、最高……刺激的な揺れになるかも……(その気になって)
 ァァン、ダメェ……いいわァ、そこ。そこよ、ねえ……ァ、もっと。もっと
 強く……ねえ……」
  トイレの水が流れる音。
女 「ア~ン! イ~!」
  トイレのドアが開く音。
  男が室内に入る。ベッドの上の女に唖然と目をやるが、腹に手をやり、ど
  ことなく元気がない。
女 「イィ……ィー……(男に気づく。悶えの格好のまま固まって)いい部屋
 ね」
男 「はァ?」
  女、ベッドを降りて、衣服を整えながら何もなかったように男に近づいて
女 「この部屋。落ち着いた感じで」
男 「んでも一人でおるには広過ぎての。殺風景じゃわ」
  男、ソファ(舞台中央)に座る。
  女、その周りを巡りながら挑発的に
女 「で、お電話一本。華を呼んだってわけね。温もりのある(と男の後ろか
 ら、男の顔に触れながら)」
男 「うん」
女 「いいわよ。パーッと咲きましょう」
男 「(差込みあって)ア……ァァ……ン……」
女 「(男の顔を覗き込んで)顔色よくないわよ」
男 「ちょっとキューっときて……でも、大丈夫じゃけえ」
女 「そうは見えないけどなァ。昼間の天気と同じで、ドン曇りって感じ? 
 とにかく人間の顔色じゃないわ(男の隣に座る)」
男 「ハハ、言うねえ。でも直治まる思うし、天気だっていつかきっと晴れる」
女 「そうね。でも雨が降りそうだっていうのに、洗濯物を外に干す気?」
男 「干したいね。シャツにパンツにズボン。今着とるもんまで全部洗ォてし
 まいたいんじゃ」
女 「無理よ、こんな状態じゃ。また今度にしたら? 今日は顔見せってこと
 で」
  女、脚を組替える。
  男の視線、さり気なく女の脚へ。
男 「いいや、今夜したいんじゃ」
女 「ワァオー。そんなに溜まってるの?(脚を組替える)」
男 「そうじゃないけど。今夜、どうしても気合い入れときたいんじゃ(と身
 体を向けて女を見る)」
女 「何、気合いって?」
男 「まァええじゃん。それとも何。君の場合ちゃんとした理由がいるとか?
 (と女に迫る)」
  女がソファに仰向けになり、その上に男がまたがっていく。
女 「そういう訳じゃないけど。貰うもん貰えば私はそれでいいけど」
男 「ならええじゃろう」
女 「そりゃァ……」
男 「のッ」
女 「いいけど」
男 「ドカンと」
女 「(笑い加減で)いいわよォ」
男 「よし決まった!」
  男の腹、グルグルグルと鳴る。
男 「ンン……」
女 「えー、またァ」
  男の腹、グルグルグルと鳴る。
男 「そうみたい」
女 「そんな。時間なくなっちゃうわよ」
男 「そういうても……」
  男の腹、大きく鳴る。
男 「アア、駄目だ」
  と男、へっぴり腰でトイレの方へ一歩、また一歩。
女 「ねえ、時間どうすんのよ!」
男 「朝までとって、朝まで!」
  とトイレに飛び込む。
  トイレのドア、開閉の音。
女 「ワーォ……スケベ……」


        ※        ※        ※


女 「(適当なメロディーに乗せて)お風呂はァ、どんなんかな~」
  と女、バスルーム(舞台奥、上手側の壁の裏)に入る。
女の声「ホホー、思った通り広いは。私の部屋ぐらいあるかな。まるでプール
 ね……(適当なメロディーに乗せて)さァ、稼せぐぞォ、朝まで~……よい
 しょっと」
  お湯を出す音。
女の声「アチィかなァ……オゥ、チョビ熱いね……でも、ピリッとしていっか。
 気合い入るぞォ、これなら……へへへ……」
  女、バスルームを出て室内へ。
女 「さ、て、と……(ムードのある曲を鼻歌で。例えば“男と女”)……」
  女、艶めかしく衣服を脱ぎ始める。
女 「(鼻歌続く)……ちょっとだけよォ……なーんて言ったところで、客が
 いないんじゃねえ、脱ぎっぷりも落ちるよなァ……アーア、もうじき二十七
 か……身体の線はまだまだいけるよな。でもォ、肌がちょっと荒れてきたか
 ?……しょうがないか。昼も夜も働きっぱなしじゃ。忙しかったもんね、こ
 こんとこ……ァ、そうだ(とトイレの方を見て)……ねえ、起きてる?」
男 「(トイレから)えー? 何か言うた?」
女 「枕いるかって聞いたの」
男 「(トイレから)枕? 何それ」
女 「トイレばっかでパンツ脱いでたんじゃ、本当に朝んなっちゃうわよ。タ
 イム・イズ・マネー! こうしてる間にもメーターはカチカチ上がってんだ
 ぞ(とベッドへ行き、腕枕で横たわる)」
  トイレの水が流れる音。
  男、ガンとトイレのドアを開けて出る。室内へ。
男 「(女を見て)オッ~!」
女 「どうしたの?」
男 「君……服は?」
女 「ウフン……刺激的でしょう。扉を開けると裸の女が立ってる」
男 「うん……まァ……(女の方へ。ベッドに座る)」
女 「脱ぐところ見られなくて残念ね(足で男の身体をまさぐる)」
男 「いや別に。そんな積もりは……」
  女、身体を起こし、男の背中につく。両脚で男の身体を挟む。
女 「常連のお客さんでね。七十のおじいちゃんなんだけど、雰囲気だして脱
 ぐとね、みるみるうちに元気になっちゃうの」
男 「おるんじゃ、そういうの」
女 「いるいる。人間いくつになってもスケベなんだから」
男 「そうじゃのうて、常連の客」
女 「五、六人ってとこ? サービス次第でチップくれる人もいるしね」
  男、女をおぶって立つ。ウロウロしながら
男 「プロなんだ。男を一から十まで知り尽くした……プロフェショナル」
女 「よしてよ。若い娘に負けたくないだけよ。だから……」
男 「エロチックなサービスもじさない」
女 「当たり」
男 「そのほうが金になる」
女 「ピンポーン」
男 「計算高いんだ」
  男、女をベットの上に落とす。
男、女から少し離れていく。
女 「こう見えてもソロバンは初段なの。悪~い女かも……(男に近寄って)
 ね、何かして欲しいことある? いいわよ、深入りさえしなきゃ女だってス
 ケベだってこと、見せてあげても……あなた、ほらさっき、腹が痛いとか言
 ってても、目のここんとこ。何てったっけ、ここ」
男 「目尻」
女 「そう。そこで私のこと見てた……(男の頬、唇、顎、首筋、胸と触りな
 がら)顔でしょう、唇、首のここんとこから胸にスーと降りて……(ヒョイ
 と股間を飛び越して)それから脚。ストッキングが伝線するかと思ったわ」
男 「ハハハ……ほいでもそれは、君にも責任があるんじゃけえの。短いスカ
 ートはいて、やたら脚組み替えるけえ。そんなことされたら……のう……
 (と女の柔肌に指を滑らせる)……」
女 「ウフフフフ……フフ……」
男 「(女を抱きしめようとする)……」
女 「(さっと男の腕をすり抜けて、ニコッとする)……お風呂入ろ(と舞台
 奥、上手側の壁の裏に消える)……」
男 「オ~ィ……」
女 「(バスルームから)早く来てね」
  男、ニンマリした顔。ピョンと一跳ねして、飛行機になってソファを一回
  りしてバスルーム(壁の裏)に消える。


        ※        ※        ※


*-------------------------------------* つづきは本書でお楽しみください


戯曲『ミッドナイト・プラン』 新風舎

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