交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

○ マンションの一階・通路(朝)
  エレベータを降りた中年男が、通路を歩いて駐車場の方へ歩いていく。
  駐車場の方で一階奥にある部屋から出た母親と娘(幼稚園児)が、中年男
  の方に向かって歩いてくる。
母親「(社交辞令。男に)おはようございます」
男 「(社交辞令。母親に)おはようございます(とすれ違う)」
  娘は目を擦りながら母親のあとをついて来ている。
男 「(娘とすれ違いざまに)おはよう」
娘 「(眠そうに)おはようございます……」
母親「もっと大きな言わないと聞こえないよ」
娘 「言ったよ。聞こえてるよ」
  男、立ち止まり振り返って、小言を言われている娘の後ろ姿を見ている。
男 「(大きく)ちゃんと聞こえたよ」
娘 「ほらね……(振り返りながら元気に)ありがとう!」
  娘、母親と手を繋いで行く。
  男、微笑んで行く。



 ドラマでは『挨拶台詞』は不要といわれます。しかし、あえてその「挨拶」
を使って、ふたつの要素を含んだシーンを紹介しましょう。


(1) 男にささやかな活力を与える。
  シーンで主観の男が、社交的に挨拶を交わして出勤するだけなら、これは
  挨拶台詞になります。しかし、社交的に放った挨拶から、母親の小言、娘
  の反論、それを見て男は何かを感じます。【振り返って……見ている】の
  ト書きがそれです。そして男が娘をフォローする一言を返し、それに応え
  た娘の元気な声と、小言を言われた母親と手を繋ぐ姿が、男に微笑ましさ
  をもたらします。これで、男に(少しかもしれませんが)活力を与える意
  図が成立します。


(2) 子供のしつけと、親子のコミュニケーション(手を繋ぐ)を見せる。
  ドラマには直接関係しないかもしれませんが、昨今の冷めた親子関係に、
  「本来あるべき姿」と一石を投じ、和みを与える姿を設定しました。


 前後の経緯がないので、このシーンがドラマ全体にどう影響するかは別問題
ですが、ドラマの台詞が「日常性の積み重ね」であることから、当然行われる
はずの「挨拶」を、いかに使いこなすかの事例として参考にしてください。

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