2012-07-27 19:10:41

小説『呆気なく砕け落ちた二十歳の殻』

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右矢印次回作品 『二つの言葉をあなたに』

■作品タイトル
『呆気なく砕け落ちた二十歳の殻』

■作者
MIMARI

■スキルアート
小説

■紹介文
視界が、ふっと広がる瞬間。心身に纏わりついた、重苦しい殻。でもそれは、あっけない程に脆く。。。

■作品
 それは、ある日の朝。私は、ふっと気が付いた。自分の中で、何かが弾けた。その瞬間、パッと視界が明るく広がり、体中に入っていた無駄な力が、スッと抜 けて行ったような心地よさと言うか、縛られていた何かから解き放たれたと言うか、そんな気持ちだったのではなかったかと、今は思う。

 小学校高学年になった頃から、やたらと他人の目が気になり出し、自分の取る行動や言動に自信が持てないまま、二十歳になった私は、就職して一年が経った 職場でも、なかなか慣れることが出来ず、ただ微笑むので精一杯の女の子だった。誰に話を振られても、変に考えすぎて、上手く会話することが出来なかった。 「はい」とか「そうですね」などと返すだけで、すぐ途切れて続かなかった。つまらない子。と思われているかも知れない...やだな。そんな風に思ったりて いた。年齢や性別など関係なく、楽しそうに話せる同僚の女の子が、とても羨ましかった。昼休み。お弁当を食べる時も、その食べ方を見られているのではない かと、気になって仕方なかった。自ら凝り固めていたのであろう心と体は、ますます身動きが取れなくなってしまっていた。学生時代からの友達といる時とは違 う、本当はこんなじゃない、ネコを被ったまま脱げないでいる自分に、苛立ちと悔しさ、そして情けなさを胸に抱えて過ごす毎日だった。

 そんなある日の朝。いつものように路線バスに乗り、職場へ向かう途中、いつもなら、俯いていたり外を眺めたりしている私が、何故だか何気なく車中を見渡 したのだ。十数人ほど乗車していただろうか。見られているのではないかと思い込み、いつでも緊張気味に後方のシートに座っている私のことなど、誰も気にし ている様子は全くなく、ある人は眠っていたり、またある人は財布の中を覗き込んでいたり、本を読んでいたり、定期の準備をしていたり。その人たちの、周り に対するあまりの無関心さに、自分の今まで気づかずにいた過剰な自意識が、何だか急に馬鹿馬鹿しく思え、そんな自分の有様が可笑しくなった。

「あぁ何だ。誰も見てないじゃない。」

 この日を境に、自然体での自分を少しずつ出して行けるようになり、人様の迷惑にさえならなければ、自由に行動しても大丈夫だとか、思ったことを素直に 言ったっていいとかが判って、すごく楽に日々を過ごせるようになって行くのが嬉しかった。恥ずかしい失敗も笑い飛ばせるようになった。職場に行くことが、 仕事をすることが、そして何より、職場のみんなと関わって行くことが、以前とは見違えるほど、嘘のように楽しくなった。

 サヨナラ...強固な、それでいて思いの外、薄くて呆気ないほど壊れ易かった、『「自意識過剰」と言う名の殻』に自ら閉じ籠っていた、ひ弱で頑固でイイカッコシィな私...


右矢印次回作品 『二つの言葉をあなたに』

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