2013-10-27 11:27:38

映画「わが母の記」を観ての記

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豊池美術店のブログ

「わが母の記」( 原田眞人:脚本・監督)を観ました。

映画の宣伝コピーは「失われて行く記憶 唯一消えなかったのは我が子への想い」

役所広司さんが、自分は母に棄てられたのだと50年間想い続けていたのが解けた時に目頭を押さえ嗚咽するシーンでは観ていてワァワァ泣きました。樹木希林さんの無表情の演技に感服しました。

この映画は、文化勲章を授賞した小説家・井上靖さんの自伝的小説を映像化したと云う事で、僕には特別の想いが在りました。

氏は著作「美の遍歴」の中で「私は現代陶芸作家の作品では、富本憲吉、河井寛次郎、濱田庄司、近藤悠三氏等、四氏のものを持っている。四氏のものだけと言っていい。( 中略)職人として優れた技術と精神を失うことなく、芸術家としての個性豊かな領域を切り拓いて大成した人たちである。」と述べています。

さらに、その文章の後半に「富本、河井、浜田、近藤四氏は、私の好きな作家であり、尊敬できる作家であり、その作るところのものは、私の好きな作品であり、尊敬できる作品である。(中略)私のこういう言い方は狭く、偏狭の謗りを免れ得ないだろうが、所詮は縁、無縁という言い方でしか解決できないようである。

と記述しています。

人間がものに感動する根源を記す名文です。

末尾を「四氏の作品を高く評価し、それが好きであるという事は、理屈ではなく、どうすることもできないものなのである。」と結んでいます。

これほど、素直に語った芸術論を知りません。僕は今まで幾度もこの文章を読み返しいつも感動しています。

「わが母の記」は、井上靖さんの書斎・自宅に准えた場面が多く登場すると期待して四氏の作品をどのように配しているのかを楽しみにしていました。

四氏の作品は一品も登場しませんでした。

かつて、黒澤明は開ける事の無い箪笥も着物で満たしていたそうです。

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