忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)


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07月01日発売■Blu-ray:「細田守監督 トリロジー Blu-ray BOX 2006-2012」


■Book:「時をかける少女 絵コンテ 細田守」

「時をかける少女」という作品は、私の中でもひと際特別な存在である。
ラベンダーを見る度に未だに懐かしい気持ちになるのも、
原田知世と聞いただけで無条件にその作品に興味を持ってしまうのも、
全ては1983年公開の「時をかける少女」という映画があったればこそ、なのだ。
原田知世版の「時をかける少女」以降、幾度かのドラマ化やリメイクを経て
今回初めてアニメ化された本作の監督を手掛けるのは細田守。
「ハウルの動く城」の監督を途中降板させられた経緯を知るファンの怨み節からか、
何かと「ゲド戦記」を引き合いに出して比較されることが多く、
ネット上での評価も

「時をかける少女は傑作、ゲド戦記は駄作、ザマァミロ」

という、判でついたような一方的な流れになっている。
「時をかける少女」の絶賛が「ゲド戦記」の酷評を燃料にして
加速しているような感じ、とでも言えばお分かりいただけるであろうか。

2作に対する意見の偏りに関しては、この記事に大いに共感した。

●『時をかける少女』と『ゲド戦記』(ぼくらは少年演出家)

>はっきり言ってしまえば、『ゲド戦記』の吾朗演出がまともに見られてない人には、
>『時をかける少女』の細田演出でさえまともに見られてないと思います。
>画面に描かれるものが、画面に描かれている以上の意味をまき散らしながら
>物語が進行する、この細田演出を、細田ファンはほんとうに楽しめているんでしょうか。

>細田演出が「物語」や「キャラクターの魅力」として語られるのは納得できません。
>そんなものを楽しみ、語りたいなら、
>映画である意味もアニメである意味もないからです。

7月初旬に某所で行なわれた試写の印象が
何とも微妙だったために、公開後の世間のヒートアップぶりに少々戸惑いつつ、
「これも年のせいか・・・」とやり過ごそうと思っていたのだが、
どうしても腑に落ちなかったので先日劇場に足を運んで来た。

アニメ版「時をかける少女」は、
良く言えば、時代の変化に上手く対応した作品、
悪く言えば、オタクの趣味・嗜好を研究し尽くした上で送り出された
非常にマーケティング重視な作品である。
私が初見で感じた違和感の正体は、「この層から好かれたい」という下心が
露骨に見え過ぎることに起因していたのだと、2度目の鑑賞で確信した。
今回の「時をかける少女」は、アニメでしかあり得ない、
アニメでしか許されないトンデモ要素が多過ぎる。

SFとしては詰めが甘く、ジュヴナイルとしても中途半端なこの作品が
絶賛されているのは、明朗闊達な主人公、紺野真琴のルックスや言動が
いわゆるアキバ系な方々にとってロイヤルストレートフラッシュ並に
ツボの揃った好物件だから、というのがかなり大きなウエイトを占めている気がする。
貞本義行のキャラクターにマニア殺しの台詞や仕草を多用すれば
アキバ系からの支持を集めることなど、赤子の手をひねるが如きであろう。
(今時貞本キャラなどで喜ばない、という突っ込みもあったが、
そういった「●●はもう古い」と言いたがるマニアも見越している気がする)
現実的には、同性の友人を蔑ろにしつつ異性とばかりつるみ、
他人の意見には耳を貸さず、ひらすら己の欲望のためだけに
行動する主人公のような女性は、
まず間違いなく鼻つまみ者として煙たがられるはずである。
「そこが魅力」「現代っ子らしい」と評してもらえるのは
今回の「時をかける少女」がアニメだからに他ならない。

勘違いされると困るのだが、
だからと言ってつまらなかったわけでは決して無い。
ここ最近公開された「劇場用アニメ作品」としては群を抜いて上質な部類だ。
あくまでも「時をかける少女」として観た場合、不満が残るというだけで
劇場公開したことすら疑問に感じた「雲の向こう、約束の場所」や
派手な映像だけが空回りしていた「銀色の髪のアギト」に比べれば
まとまりも良く、安心して観ていられるのは確かである。
「パプリカ」「鉄コン筋クリート」と、年末に期待の新作が揃っているので
8月末の時点での話だが、今年公開された劇場用アニメ作品の中では
1番と言っていいと思う。

【紹介記事】音楽以外はまだまだ同人レベル「雲のむこう、約束の場所」
【紹介記事】見所皆無の失敗作「銀色の髪のアギト」(共に過去ログ)


●「パプリカ」公式HP
●「鉄コン筋クリート」公式HP

本作に決定的に足らないもの、
それは、「時をかける少女」を傑作たらしめた重要な要素が
すっぽりと抜け落ちていることだ。
以下、ラストの説明無しでは避けて通れないためネタバレあり。
大丈夫という方は要反転。


和子に自分が未来からやってきた人間だと告白した深町は
「秘密を知られた場合は記憶から削除すべし」という規律に従い
自分と関わった全ての人間の記憶を抹消して未来へ帰って行く。
それから11年後、和子は深町と再び出会うが、
何も思い出す事無く、そのまますれ違ってしまう。
この、「あなたがいたことすら忘れてしまう」という切ない約束事を
アニメ版は軽やかに無視しているのである。
アニメ版に登場する和子の部屋の本棚に、
深町、吾朗と写した写真が立ててあったのを見た時は思わず目を疑った。

自分以外の人間がタイムリープしたことで
自分の使用回数が戻る、というのも無茶苦茶な話だ。
「願い事を3つだけ叶えましょう」と言われて
「何度でも願いが叶えられるようにしてください」と言っているのと同じである。
SFとしての出来を期待したわけではないが、あまりにも稚拙過ぎる。


聞いた話、中継ぎ的な役割を担うコミック版の中で
和子が昔の記憶を取り戻す行があるらしいのだが、
それからして「宇宙戦艦ヤマト 完結編」の
「沖田艦長は実は生きてた」というエピソード並にナンセンスな話だ。
主人公の性格を萌え系にしようがツンデレ系にしようが構わないが
リメイクや続編には、
「絶対にここだけは変えてはならない」というタブーがあるはずなのだ。
他にもいくつか難点はあるのだが、ここさえ守ってくれていれば
見逃せたレベルの物が多いだけに残念でならない。

いっそ「時をかける少女」というタイトルを捨て、
タイムリープを題材にしたオリジナル作品として作ってくれていれば
もっと素直に楽しめたような気もするのだが・・・
ただ、DVDが出たら間違いなく買う予定。
それぐらい気に入ったからこそ、見逃せない粗も多かった、ということだ。


■DVD:「時をかける少女」

アイドル映画の枠を超え、
今なお語り継がれる大林宣彦監督の代表作。
どこにでも置いていると思うので、未見ならば是非レンタルで。
映像の古さに目をつぶれない方は受け入れ難いかも知れない。


■CD:「時をかける少女 オリジナル・サウンドトラック」
■CD:「ガーネット 奥華子」

音楽面は文句なしに良かった。
アニメでサウンドトラックCDを購入したのは「ベルヴィル・ランデブー」以来だ。
主題歌だけは「時をかける少女」をそのまま使用して欲しかった気もするが
今回の「ガーネット」も雰囲気を損なわない佳曲で一安心。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:時をかける少女
    配給:角川ヘラルド
   公開日:2006年7月15日
    監督:細田守
   出演者:(声)仲里依紗、石田卓也、原沙知絵、他
 公式サイト:http://www.kadokawa.co.jp/tokikake/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
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