源泉を涸らしかけても止められない、バンダイナムコが抱える問題点 | 忍之閻魔帳

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ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

「一年戦争」の発売直後、勢いに任せて書いたはいいものの
冷静になって読み返してみるとあまりにも辛辣だったために
結局お蔵入りにした記事がある。
「公開」ボタンを押されないまま、今も眠り続ける記事のタイトルは、
「源泉を涸らしかけたバンダイの今後」であった。

2006年3月31日にバンダイナムコゲームスが誕生した頃、
業界関係者に配布された資料がある。

わたしたち株式会社バンダイナムコゲームスは、
人々が喜び、楽しみ、満足するゲームを常に提供し続ける
世界一のエクセレントゲームメーカーを目指します。

そう書かれた資料を開くと
2005年度にバンダイ、ナムコの両社が発売したタイトルの
販売本数ベスト20が一覧として載っていた。
このランキングには、両社の持つ問題点が
統合以前より鮮明に表われているように私には思えた。


【バンダイ】

01位:NDS:たまごっちのプチプチおみせっち(784,537本)
02位:PS2:ドラゴンボールZ3(659,975本)
03位:PS2:ドラゴンボールZ Sparking!(521,057本)
04位:PS2:機動戦士ガンダムSEED 連合vs. Z.A.F.T.(400,268本)
05位:PS2:機動戦士ガンダム 一年戦争(354,739本)
06位:PS2:NARUTO ナルティメットヒーロー3(265.368本)
07位:NDS:ドラゴンボールZ 舞空烈戦(194,849本)
08位:PS2:ガンダム トゥルーオデッセイ(183,360本)
09位:PS2:NARUTO うずまき忍伝(178,531本)
10位:PS2:機動戦士ガンダムSEED DESTINY Generation(176,254本)

11位:PS2:聖闘士星矢 聖域十二宮編(138,736本)
12位:NDS:SDガンダム GジェネレーションDS(100,808本)
13位:PS2:ONE PIECE グラバト! RUSH(82,332本)
14位:PSP:ガンダム バトルタクティクス(70,874本)
15位:PSP:機動戦士ガンダム ジオンの系譜(61,909本)
16位:GBA:ふたりはプリキュア Max Heart(59,101本)
17位:NGC:ONE PIECE グラバト! RUSH(57,300本)
18位:NGC:SDガンダム ガチャポンウォーズ(57,073本)
19位:NDS:メテオス(55,694本)
20位:PSP:英雄伝説 ガガーブトリロジー 白き魔女(55,639本)

【ナムコ】

01位:PS2:テイルズ・オブ・ジ・アビス(498,571本)
02位:PS2:テイルズ・オブ・レジェンディア(353,376本)
03位:PS2:鉄拳5(291,511本)
04位:PSP:テイルズ・オブ・エターニア(196,394本)
05位:PSP:リッジレーサーズ(148,622本)
06位:PS2:ナムコ クロス カプコン(136,243本)
07位:PS2:ソウルキャリバー3(134,532本)
08位:PS2:ベースボールライブ2005(132,642本)
09位:GBA:テイルズ・オブ・ザ・ワールド なりきりダンジョン3(122,765本)
10位:PS2:みんな大好き塊魂(113,643本)

11位:NDS:パックピクス(102,988本)
12位:PS2:テイルズ・オブ・リバース(102,109本)
13位:PSP:ナムコミュージアム(102,106本)
14位:PS2:ことばのパズル もじぴったん Best版(100,836本)
15位:PSP:ことばのパズル もじぴったん大辞典(78,476本)
16位:PS2:デス・バイ・ディグリーズ 鉄拳:ニーナ(67,757本)
17位:PSP:太鼓の達人 ぽ~たぶる(66,094本)
18位:PS2:塊魂 Best版(59,598本)
19位:PS2:エースコンバット5 Best版(58,240本)
20位:PS2:太鼓の達人 ゴー!ゴー!五代目(54,051本)

ちなみに、2005年度の
バンダイの総リリース数は82タイトル、
総販売本数は518万236本、
ナムコの総リリース数は32タイトル、
総販売本数は328万6,286本となっている。

バンダイのトップ20のうち、
8タイトル(販売本数別シェアで言うと約27%)がガンダム関連、
7タイトル(同約38%)がジャンプ系キャラ物で占められ、
ナムコのトップ20でも、5タイトル(同約38%)がテイルズ関連と、
どちらも人気シリーズ、キャラクターへの依存度の高さが窺える。

依存度の高さは、それだけ依存できる看板シリーズがある、と
言い換えることも出来るが、
シリーズ物というものは、乱発すれば必ず終わりが来る。
汲めども尽きぬ魔法の泉など、この世には存在しないのだ。
某社のように、「契約が切れるまでに出せるだけ出す。
切れた後なら、原作の人気がどうなろうと知ったことではない」と、
非常にドライな割り切り方をするメーカーもあるが、
バンダイナムコの場合は、どちらかと言うと
「それでも頼らざるを得ない」といった
「背に腹は代えられぬ」的な印象を受ける。

「一年戦争」が破壊的な値崩れを起こし
業界を震撼させていた2005年4月、某所。
壇上に上がったバンダイの営業は、

「ガンダム」というキャラクターへの過信から来る安易な乱発、
詰めの甘い作り等が今回の事を引き起こしたと考えている。
しかし、バンダイは来月以降も
続々と「ガンダム」関連のタイトルをリリースする予定になっており、
これを変えることはなかなか難しい。
キャラクタービジネスというものを今一度見直し、
このような事が起きないよう大切に育てていきたい。

と語った。
メモ書きしたわけではないのだが、大筋は合っているはずだ。

あれから1年と数ヶ月。
「超ドラゴンボールZ」は値崩れを起こし、
「バトルスタジアムD.O.N.」(のPS2版)も苦戦、
新たに相方となったナムコが発表した
「テイルズ」シリーズの怒濤の新作ラインナップには
喜びの声より非難や失望の声の方が多く寄せられるという
何とも皮肉な状況となっている。
「テイルズ」シリーズのファンである私の知人も、ナムコの発表を聞き
「段々納める額がデカくなる年貢のようだ」と嘆いていた。

バンダイは現在「銀魂」を新たな柱とするべく育てる準備を、
ナムコもDSに投入した「右脳の達人 爽解!まちがいミュージアム」の
出荷本数が15万本を超えたことから、
既存のシリーズをこの路線に合わせてアレンジするなど
色々と模索しているようだが、解決方法が今までと同じである以上、
どちらもそう長くは続くまい。

せっかく新たな泉を発見しても、慌てて汲みまくれば
干上がるまでの時間は早くなる。
大切なのは、一度に汲み上げる量を守ること、
次回分の水が溜まるまでしっかりインターバルをとること、
そして何より、複数の泉を見つけておくことだ。

看板シリーズ1本に頼り切り、
コアファン相手に小商いを続ける弱小メーカーならいざ知らず、
バンダイナムコほどのメーカーならば決して難しい話ではないと思う。
既存シリーズの乱発に見切りをつけ、
ここらで本腰を入れて頑張って欲しい。

まぁ、今一番それをしなければならないのは
「無双」シリーズへの依存度が極端に高いコーエーなわけだが。
レンタルなどという勝算ゼロの新規事業に無駄な投資をする暇があるなら
「無双」に並ぶ主力シリーズの育成を急ぐべきであろう。
最後の最後で、タイトルと関係ないメーカーに話が行ってしまった。