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その時、、、
胸の底から例えようのない「不快感」が沸き上がってくるのが分かった。
「祥子、、、ごめん、、、車、どこかに停めてくれる?」
冗談じゃないわよ!!!
コインパーキングに車を入れている祥子を尻目に、
私はすぐ側にある「コンビニ」に飛び込んだ。
レジの店員に
「ごめんなさい、お手洗いお借りしていい?」
学生アルバイトの店員は、意外と愛想良く
「どうぞ、あちらの奥になります」
そう言って店の隅を指さした。
「ありがとう」
白い便器を見た途端、
私はそれまで溜まっていた「不快感」の元をすべて吐き出すかのように
激しく嘔吐した。 トイレの外に声が漏れないように、息を詰めて
でも、、、吐瀉物は容赦なく食道を逆流してきた。
目から涙が溢れた。
3度ほど嘔吐すると、もう胃の中に吐き出すものは残っていなかった。
でも、何かが逆流してくる。
ハァハァハァ、、、、
何度も何度もトイレの水を流した。
頬が、、、唇が、、、冷たくなっている。鏡を見ると酷い顔をした私が居た。
「ラン! 大丈夫!?」
祥子の声が聞こえた。
コンビニで暖かいお茶とミネラルウォーターを買って、
とりあえず、祥子の車の戻りリクライニングシートを倒して、体を横たえた。
「顔色、酷いよ。 ねぇ、今日は帰った方がいいよ。
     話しはいつでも聞いてあげるからさ。 ね? 帰りなよ」
「え、、、大丈夫よ。 さっき、、全部出しちゃったから」

そう言って笑顔を作っては見たものの、とても祥子を説得できるような明るさは、
声にも表情にも無い事は自覚できた。
「あんたは良くても、私が嫌だよ。
   そんな半病人みたいな相手はしたくないわよ。
      ね、、、明日でも明後日でも出直してくるから。今日は帰りなさいよ」

しっかり結論を出してしまった祥子を曲げる事が不可能に近いことを私は知っていた。
「ごめんね、、、ここまで引っ張っておきながら、、、」
「いいよ。気にしないで。 お互い様。
  それよりも、横浜へ連れて行ったこと、、、なんか悪かったみたいね」
「関係ないよ。 それこそ気にしないで」
暖かいお茶を飲んでいくらか気分が良くなった。
タクシーで帰るという私を
「バカ言うんじゃないわよ!」と祥子は真顔で怒ってくれた。
「家まで送ってあげるから、、、いい、今日はおとなしく寝るのよ。
      しゅうちゃんともめちゃ駄目よ。 女はどうしても思いこみが激しいんだから
         冷静になる時間が必要なんだよ」
祥子はおおよそ私の悩みを理解しているようだった。
さすがね・・・
祥子は家のすぐそばまで送ってくれた。
「明日、、、連絡して。 分かった? 今日は大人しく、つまらない事を考えずに寝るんだよ。
   まぁ、難しい注文だとは思うけど、、、お酒でも飲んでさ」
「アリガト・・・」
「じゃ、気をつけて」
赤いテールランプが角を曲がって見えなくなった。
祥子、、、ありがとう。助かったわ。
相談は出来なかった。でも、彼女は私の悩みを理解してくれた。
それだけで、気持ちが随分とラクになった。
しゅうは家に居るだろう。 でも、とりあえず、今夜は冷静に対応できそうな気がした。
そうよ、、、愛人!?まさか、、、あれは仕事で関係のある人。
一緒に食事したり、飲みに行ったりする事はあるかも知れないけど、、、
しゅうの廻りにはいくらだって女性は居る。20代、40代、そして30代だって。
一々気にしてたら、彼の「妻」は務まらない。
時計を見ると7時を僅かに過ぎていた。
かなり激しく嘔吐したけれど、気づくと「空腹感」も感じている。
しゅうは、、食事どうしたのかしら?
携帯で連絡をしようと思ったが、家はもう目の前だ。
家の前から携帯を使うのもおかしな話・・
けど、、、いきなりしゅうの顔を見るのもちょっと怖い・・・
私はタクシーの中から握っていた携帯を開いてしばらく思案した。
10時に帰ると言ったのに、3時間も早く帰ってきた事を伝えたほうがいいかな?
でも、、、そこまでする必要は無いわよね?
普通に、「帰って来ちゃった~」って言えばいいだけよね?
自分の家に入るのに、、、何をそんなに躊躇っているの?
横浜で見てしまったあの光景。
あのシーンで、私の中の何かが変わってしまった。
助手席に座っていた女性の横顔が蘇る。
私は
パチン!と携帯を閉じるとバックに仕舞い変わりに鍵を取り出して、玄関に向かった。
自分の家に帰るのに何をゴチャゴチャ考えてるのよ!?
バカじゃない!?
外灯の明かりはついていたし、ガラスから漏れる玄関の明かりは
しゅうが帰宅していることを教えてくれた。
私は大きく深呼吸をして
鍵穴に鍵を差し込んだ。
ドアの向こうには、いつもの暖かい「家庭」が待っていると思っていたのに、、、
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