池守隼輔のブログ

cigar terrace、ame full orchestra
ボーカルでした。


テーマ:
二年前の今日。
少し予定があり、予めバイトの休みを貰っていた為、あなたの入院が決まったのは前日の夜でしたが、会いに行く事が出来ました。

午後の予定はキャンセルして、午前中に家を出ました。
いつも移動は徒歩か自転車ですから、バスに乗るのはいつぶりだったでしょうか、しかし無事にバス停を見付ける事が出来ました。
揺られること三十分、病院の目の前がバス停だったので、最初に言う言葉を決める前に着いてしまい、バスの暖かい空気に身を任せてぼーっとしていたことを少し悔やみました。
受付で病室の番号を聞き、長い廊下をキョロキョロしながら歩きました。
病院の一番奥、部屋番号を何度も確認し、静かにカーテンを開けました。
あなたは横になっていましたが、目は開いていました。
咄嗟に出た言葉は「ただいま。」でした。

あなたは痩せていました。
「わざわざ来なくても良かったのに。」
小さくなった身体を重そうに起こしながら、予想通りの言葉をあなたは言いましたが、嬉しそうに笑ってくれたので、安心してベッドの脇の椅子に腰を下ろしました。

色んな話をしました。
バンドのこと、バイトのこと、日常のこと、そして4月に東京に引っ越すこと。
「お前は強い子だから何処へ行っても大丈夫、ただ米を炊いたこともないお父さんが心配だよ。」
と、あなたは言いました。
大丈夫。父さんは米の炊き方も覚えて、ちゃんとやっています。勿論、私も出来るだけ顔を見せに帰るので、安心してください。

その日から、毎日バイトを昼であがり、あなたに会いに行きました。
「来なくていいからちゃんと働け。」と言われましたが、毎日行きました。
小さい頃はあんなに怒られるのが嫌だったのに、その時は行く度に「バイトはどうした。」と怒られるのが嬉しくて仕方なかったのです。
もう長く無いことを知っていました。


10日後、あなたは亡くなりました。
その瞬間、「ありがとう。」と伝えましたが、返事は有りませんでした。
しかし、最期の時間、あなたの側に居れたことが幸せでした。
人は心の底から悲しい時は感情が停止するのでしょうか、それとも感謝の気持ちが悲しみを上回ったのでしょうか、涙は一滴も流れませんでした。

告別式の後に撮った家族の集合写真は、笑顔で写りました。
悲しい顔をしたらあなたが悲しむと思いましたし、なによりも笑顔で写りたかった訳は、あなたがどんな時も笑顔で生きたからです。



東京はまだ少し肌寒いですが、陽が良く射す日には、もうすでに春の匂いがします。
故郷の家はまだ、深い雪に囲まれているでしょう。
その景色、香りを愛しく思う毎日ですが、地に足を付け、今日も私は生きています。

産んでくれてありがとう。
母さん、私は今日、またひとつ歳をとりました。


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