微分は何のためにあるか 2-2

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前回、微分の意味として「2. 極値を求められる」を扱いましたが、今回はその後半です。

 

物理や化学の世界において、平衡点は何らかの微分が0である点だという話をしました。「何らか」とは何なのでしょうか?

 

もちろんいくつか種類はありますが、代表的なものは「エネルギー」です。

前回使用した図に再び登場してもらいましょう。

 

ボールが静止しているこれらの点は、曲線の微分係数が0である点だ、とお話ししました。もちろんそういう捉え方もあるのですが、より応用範囲の広い言い方をするならば「重力ポテンシャルの値が部分的に最小である点」となるでしょう。他の点にボールがあるとき、そのボールは重力ポテンシャルが小さくなる方へと動いていきます。

 

こうした傾向を数式で表現すると次のようになります。

fは物体にかかる力、Uはポテンシャルエネルギーです。ポテンシャルエネルギーが少なくなる方へ物体が運動するということが、この数式で記述できます。このfの値が0になる点のうち、二回微分が正になる点であれば、物体はその点において安定して存在できますね。

(注:上の式は、一次元でポテンシャルエネルギーのみという超単純なモデルの場合で、三次元の場合はgradient(勾配)を用いる必要があります。)

 

 

このように、エネルギーの大小という観点で物体の運動を見るのは非常に重要です。簡単なモデルでの物体の運動が理解出来るのみならず、発展させていけば変分原理(大学で学ぶ内容)にも辿り着けます。統一的な観点で物理を眺めるというのはどんな時でも大切です。

 

 

今回はここまでです。次回は、微分の意味その3を紹介します。

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微分はなんのためにあるか 2-1

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前回に引き続き、微分が(主に物理において)どのように役立っているかをお話ししようと思います。今回のトピックは二回(2-1,2-2)に分けてお送りいたします。

 

2. 極値を求められる

 

数学IIや数学IIIで、関数の極値を求めなければならないことがありますね。大雑把に言うと、微分してできた導関数の値が0になる点においてその関数は極値をとるのでした。

 

ただ、高校数学で行う微分の対象はただのxの多項式であって、まるで意味がある関数には思えませんよね。たとえば f(x)=x^3+x^2-x+5 という関数を見たときに、これが意味のある関数には到底見えないわけです。

 

しかし、高校物理以上の物理を学んでいくと、微分が大活躍することがたくさんあります。その一つが、極値がわかるということです。

たとえば、次のようなレールがあったとしましょう。

このレールの上に球を乗せて静かに離したとしましょう。球は運動を始めますが、摩擦があればいつかは静止することでしょう。さて、どの点で静止するでしょうか。

もちろん、下の二点です。

当然ですね。

ただ、物理ではこうした「当然のこと」を、数式でうまく記述してやる必要があります。さて、これら二点に共通する数学的性質があるのですが、それは何でしょうか?

 

正解は、曲線を関数と見たときに、微分係数が0になり、かつ二回微分が正になるということです!

微分係数がゼロかつ二回微分が正になるということは、その点付近で谷になっているということですから、物体は安定して存在することができます。このような点を安定な平衡点と言います。ちなみに、微分係数が0で二回微分が負になっている点(つまり、部分的に山になっている点)は不安定な平衡点と言います。

 

上の例からわかるように、物理や化学の世界で安定して実現する状態というのは「平衡点」、つまり何らかの微分が0になる点であるということが言えます。

今回は曲線の微分を考えれば良かったわけですが、他の例、たとえば化学の世界などでは何の微分を考えれば良いのでしょうか。

それについては次回述べたいと思います。

 

 

今回はここまでです。

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微分はなんのためにあるか

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高校数学の大きな分野のひとつに微分があります。微分というのは、いままでの計算とは毛色の異なる演算ですね。なかなか馴染めない、という人も多いことでしょう。

 
微分というのは科学の世界でものすごく重要な数学です。私は科学者ではないのでエラそうに語るつもりはありませんが、私なりに感じた「微分の意味」をこれから数回に分けてお話ししようと思います。
 
1. 位置と速度、加速度がつながる
高校物理では微分を用いないという暗黙のルールがありますが、これは現在の高校物理の最たる欠点だと思います。というのも、位置と速度、加速度の関係はまさに微分だからです。
 
たとえば、ある物体の位置が時間の関数(注:「函数」が正しいが、教科書の表記に沿う。)としてのように表されたとしましょう。この物体の速度を求める際にはどうすれば良いでしょうか。
 
ある微小時間の間に物体がどれだけ移動するかを計算するには、にその瞬間の速度を掛け算すればよさそうですね。つまり、
となります。これを変形すると次のようになります。
この式を見ればわかるように、物体の速度というのは変位の時間微分であることがわかります。また、速度とか速度についても同様に
という関係式が成立します。これらの式を利用すると、運動方程式は
という微分方程式になります。高校物理では運動方程式はF=maという形で習いますから、微分との結びつきを感じられないことでしょうが、実は運動方程式というのは時間に関する微分方程式だったのです。
 
とくに力学では様々な公式を覚えさせられますが、微分(や積分)の考え方を用いると、覚えるべき公式は実はほとんどゼロであることがわかります。大げさかもしれませんが、微積分を用いた形式こそが「本質的」と言えるのではないでしょうか。
 
いまのところ物理の教科書で微分や積分を用いるのは(残念ながら)ご法度になってしまっていますが、ぜひ自分で積極的に微積分を用いて問題を解いてみてください!
 
 
今回はここまでです。
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