曇「座右の銘」森村誠一著より。ストロールクローバー椰子

ここでの座右の銘は「辛いという字がある。もう少しで幸せになれそうな字である」というものだった。これは兵庫県のある町で募集されたときの一作品だった。

長年生きていれば辛いことも多いものだが、それは人それぞれの境遇にもよるだろう。不公平だと感じることもある。また、いったん辛い目にあって初めてそれまでが幸福だったと気付くことのほうが多いかもしれない。

ここでは「幸い」と「辛い」の文字の比較から来ている言葉だった。一語より短い一画によって、まったく逆の意味になってしまう。ある意味両者は隣接しているともいうが、かなり距離が遠いと感じることもある。

かつて似たタイトルの短い舞台を観劇したことがあった。「棒を一本足すだけで」というものだった。芝居の内容はすっかり忘れてしまったがこの言葉だけは忘れられない。同じく「幸」と「辛」の比較だった。

文字では簡単だが、辛いから抜け出し幸いに転ずるのは、自力だけでは無理なことも多い。とくに今年3月11日の東日本大地震からは、それを強く感じる次第。一日も早い復興を願うばかり。