2017-03-23 13:20:47

<Medical Dynamic Stretchingの実際⑦注意点>

テーマ:医学

 

本当の治療とは
近年、インターネット上では柔道整復師たちが異口同音に、筋力強化が治療法として間違っていることを堂々と宣言し始めている。彼らは整形外科学に染まっていないので、自分たちの実感に基づいて筋力強化が間違っていることを悟ったのだろう。まじめに治療家として研鑽を積んでいれば、気づいて当然の話。本当は筋力強化ではなく、筋肉の弛緩を促すことの方が治療になるのだ。

排尿過多でも飲水を
今回のシリーズでは、MDSを有効に用いる条件として、水分摂取の重要性を繰り返し述べた。筋肉内に十分な水分が確保されるようになると、MDSの効果を得やすくなるだけでなく、その持続時間も長くなるのである。しかしながら、患者に水分摂取を促してしばらくすると、決まって「トイレに行く回数が増えて困る」というクレームを頂戴することになる。血管内脱水を生じると、人間の体は筋組織から水分を引き出して循環血漿流量にあてがうホメオスタシスが働く一方、水分を補給して血管内のオーバーフローを招くと、人体は直ちに排尿によってそのバランスを保つようになるためだ。かくのごとく、水分摂取に努めたからといって筋組織内の脱水が直ちに改善されるには至らず、日にちを要することになるので、本当は「トイレに行く回数が増えて困る」くらいでちょうど良いのである。但し、高血圧症を患っている患者の場合は注意が必要だ。頻回の水分摂取によって血圧が上昇してしまう場合があるからだ。このあたり、日本の政治と同じで、あちらを立てればこちらが立たずという具合に、人体のかじ取りをするのは困難を伴うといえるだろう。

嗜好品の害
また、コーヒーや緑茶のようなカフェインが脱水を招くという指摘に対し、アンダーバランスを補うべく、次々とカフェインを摂取すればそれで良いではないかという意見があるかも知れない。しかしながら、次々に飲み続けても、次々に体から水分を絞り出してしまうのがカフェインの怖さである。結局、眠っている間に水分を補うことができないので、慢性的に脱水が進み、筋組織内脱水に至るわけだ。それは勿論、アルコールの摂取も同じである。
経験的な話で恐縮だが、カフェインの摂取は脱水だけでなく、石灰沈着性腱板炎をも誘発する。石灰沈着性腱板炎の治療にはタガメットが有効であることは周知の事実だが、カフェイン摂取の制限を同時に行わないと難治化してしまう場合があるのだ。ゆえに、石灰沈着性腱板炎の場合、カフェインの制限と薬物療法に加え、二次的に生じた肩関節周囲筋の弛緩不全を水分摂取とMDS で軽減せしめる治療が必要となる。

生活習慣の改善を
総じて、カフェインやアルコールを嗜好する傾向があり、一日の摂取水分が各々の必要所要量に比して少ないタイプが整形外科の患者になりやすい。そこに喫煙習慣が伴えばなおさらだ。喫煙は筋組織内の血流不全を招くからである。筋肉に生じた弛緩不全が整形外科疾患を引き起こすという視点があれば、それらは至極当たり前の話ではある。しかしながら、今日の整形外科学にはそういう視点が欠けており、このために整形外科疾患を患う整形外科医も後を絶たない。ゆえに、ロコモの予防などと騒いでみたところで、整形外科医が筋力強化を治療だと盲信し続ける限り、今後も患者は順調に増え続けるに違いない。
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