2008-09-21 06:12:39

おくりびと

テーマ:映画

繋がって 今を生きて 繋げてく



 ひとえに広末涼子って、こんなに可愛かったんだ、そう思ってずっと観ていた。チェロ奏者としての職をオーケストラ解散で失う夫の小林大悟(本木雅弘)。その妻、美香として「夫は納棺師なんです」と言うまで。


 大悟の会社NKエージェンシー社長佐々木生栄を演じる山崎努の、河豚の白子を食べるシーンがいい。そして、クリスマスに社員全員(と言っても社長と大悟にプラス余貴美子演じる上村百合子の三人だけ)でチキンをむしゃぶりつくのもいい。美味しいんだよなあ、困ったことに。
 この前テレビで美味しい駅弁紹介が流れてて、豚丼の、その美味しさの理由として素材が生きたまま映された。生きた豚ちゃんまで流すなよお。でも、それが現実。食物連鎖。生きるとはそういうことなんだ。


 さらに脇である平田正吉を演じる笹野高史。吉行和子演じる山下ツヤ子が一人で守り続ける銭湯の常連さん。お風呂に入り牛乳を飲み将棋盤に向かう日課。彼も実は、もう一人のおくりびと。門をくぐる人たちの門番。いってらっしゃい、ありがとう、また会いましょう。山下ツヤ子を送るシーンで初めて語られる、クリスマスの逸話も輝いている。そうやって、生を全うするんだな。
 
 いくつかの様々な納棺のシーンも用意されてたけど、その中ひとつ、山田辰夫が残された夫役をやってた。5分遅れたNKエージェンシー二人に八つ当たり。でも、帰りにはお土産つきの感謝の言葉。これまででもっとも一番美しい妻だった、ありがとう。確かに、遺影の写真と比べると、最後の化粧をした妻は美しかった。妙に艶めかしかった。
 実は、最近お通夜があったばかり。私は出席していない。出席したのは息子。彼の友人が交通事故で亡くなった。まだ二十歳そこそこの彼。息子が「行ってらっしゃい、また会おう」なんて言ったか否か定かではないが、「まだ生きているみたいだった」という感想。


 監督の滝田洋二郎もさることながら、この映画の要所要所で静かに笑い静かに泣いた、その抑揚を支援していたのは、大林宣彦監督作品や宮崎駿アニメで有名な音楽担当の久石譲だ。主人公の前職のチェロ奏者という設定が生きている。チェロの調べが、私たちの生きている証である感動や共感の源を、コトバに変換することなくダイレクトに揺さぶってくれてた。


 私たちは、いったい何処から来て何処へ行くのだろう。それは誰にも分からないが、その間である今を生きている。ただ、ずっと生きているわけではなく、遺伝子を授かって生まれ、そして次の世代に遺伝子を残し、そして何処かへ去っていくのだ。
 生まれるのはゼロ歳だ。用意ドン。でも、逝くのは決して用意ドンではない。息子の友人のように早々に逝ってしまわれる方もいるのだ。遺伝子も残せずに。誰もがいつかは遅かれ早かれ、おくられる人。そう考えれば、みんな誰もが「おくりびと」。納棺師という転職も得られず、つまんない仕事についている人も、つまんないと思わずに一生懸命生きねばならない。そして、困ったことに美味しい食べ物を喜んで食べて食物連鎖を行わねばならない。おくられる人になるまでは、次の門をくぐるまでは、私たち全員「おくりびと」なんだ。死と接することは少しも汚らわしいことなんかじゃない。だって、私たちは、いつも死と背中合わせで生きてるじゃないか。


 今更ではあるけれど、広末涼子みたいな奥さんが欲しい。やっぱ胸を張って「夫は納棺師なんです」と言われたら、旦那も本望だなあ。自分だって、最後まで自分自身、曖昧だったわけなんだし。しかも、これ、どんな仕事であっても、いいはずなんだよね、世のご主人方。




おくりびと (2008)

【監督】滝田洋二郎
【出演】本木雅弘 / 広末涼子 / 余貴美子 / 吉行和子 / 笹野高史 / 杉本哲太 / 峰岸徹 / 山田辰夫 / 橘ユキコ / 山崎努


★★★★★ [100点]「誰もがみんな、おくりびと。」

誰もがいつかは遅かれ早かれ、おくられる人。そう考えれば、みんな誰もが「おくりびと」。おくられる人になるまでは、次の門をくぐるまでは、私たち全員「おくりびと」。
死と接することは少しも汚らわしいことなんかじゃない。だって、私たちは、いつも死と背中合わせで生きてるじゃないか。


Posted by 裏木戸楽子 on 2008/09/21 with 映画生活




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