2007-12-07 06:35:50

転々

テーマ:映画

転々と 地踏みしめて 黄葉拾う 



 最近映画に出ずっぱりのオダギリジョー。いい加減お休みしなされという不完全燃焼続きの中、これはいい。この「転々」彼の持ち味はコレかもしれないよね。なんで大学八年も通わねばならないのか知らないけど、役の竹村文哉は、小さい時ホントの親に捨てられ、育ての親の具体的な情報もいただけないので、なんで80万円の借金をしてるのかはよくわかんないけど。ただ、しているから借金取りがいきなり闖入してくるのだ。
 大学生のくせして借金取りに追われいるオダギリもステキだが、借金取りであるいかついオヤジ福原愛一郎を演じる三浦友和は、もっとステキだ。しかも、借金取りで登場の彼が、或る日突然借金取りでなくなる。これが味噌だね。原作もあの「子宮の記憶 ここにあなたがいる」の藤田宜永もさることながら、脚本と監督さんの三木聡、うまいね。借金取りも青空パーキングもビジネス業務。彼が借金取り屋を退職した契機で、東京散歩に付き合ったら100万円の報酬などと、二人の関わりが一転する。
 そう、転々の始まりだね。さて、久しぶりに思いっきりネタバレと行くかいな。
 そうして始まる二人のお散歩ムービー。日本版ロードムービー? ジム・ジャームッシュやヴィム・ベンダースの仲間入り? 大きく捉えれば、それもよかろう。しかし、作り手は明らかに、そんじょそこらのロードムービーとは一線を画したがっている。散歩は車を使わない。ロードムービーの基本が車を使った目的地までのプロセス。しかし、車は所詮、効率的な移動手段。それを明らかに否定している場面がある。チャリンコに乗る横柄なおばさん。そして、そのおばさんがぶつかる車のドライバーである横暴な兄ちゃん。そこで、チャリンコおばちゃんが生身の人間に横柄なのに、車運転のドライバー兄ちゃんに平謝りする。それをあっけらかんと見る散歩の二人。誰が普通の人間であろうか。
 もう、このあたりで、ロードムービーというジャンルなんかはいらない、でしょ。輪をかけて言いますれば、歩いていたから見つけたコインロッカーの鍵。物語の展開面白くするなれば、現金わんさか。なのに、何よ、達磨だらけ。その後に、たかだか銀貨一枚拾う。そんな散歩。そんな中で、もっと違う発見、もっと毎日の味わい。
 しかし、実はそんなのんびりしたこと、言ってる場合じゃない。人を殺してきたのである。夜な夜な男漁りをする福原の妻(宮田早苗)を。そう言えば、文哉は逆に人妻から漁られ経験者。殺人そのものよりも、相手が同じだったら、そっちの方を心配する。奥様の写真に自分の相手(石井苗子)ではなかったことにほっとする。そういうものなのだ。それが現代社会の現実。殺人事件や名鉄電車の人身事故など日常茶飯事。けど我が身とはかけ離れたドラマであり、電車の遅れが一番の一大事。自殺する若者のことよりも傘がないことのが大切。
 でも、懐かしの愛玉子(オーギョーチィ)を食べる場面でのお店のおばちゃん(鷲尾真知子)と息子(石原良純)の親子喧嘩。時計屋の主人(津村鷹志)や畳屋のオヤジ(笹野高史)などとの小競り合い、などなどもあって、転々は次第に二人の関わりを転がしていく。転ばぬ先の杖などなしに。そうして、後半の疑似家族物語へと速やかに滑らかに展開していく。
 疑似家族の前に、死んでベッドに横たわる福原の妻サイドの関係人物を。福原の妻が働いていた職場の落ちぬお笑いトリオ。国松(岩松了)と仙台(ふせえり)と友部(松重豊)。先の現代社会の現実ではないけど、このずっこけ三人組、無断欠勤する福原の奥さんを気にはするが、「死んでんじゃないの」という非リアリズム。私たち観客が「ほんとに死んでるよ」と叫んだって「まっさかあ」に違いない。それでも気になり、三人はお見舞いがてら様子を見に行くことに。しかし、ご近所で撮影ロケ。そこにあの、彼を見ると縁起がいいらしい著名俳優に出くわす。岸部一徳演じる岸部一徳だ。いやあ、いいね彼。何がいいって、いいからいいんだけど。さて、お笑い三人組は、エキストラが足らなくて参加して欲しいという助監督の要請に、ふらふらと、そちらへ付いていってしまう。興味は一転していっとく~(一徳)。岸部一徳と同じロケバンに。福原の妻は相変わらずベッドに横たわったまま。それが私たちの好奇心というものだ。
 さて、かつて福原が詐欺紛いに偽夫婦を結婚披露宴で演じた相手、麻紀子の店に、福原と文哉は転がり込む。小泉今日子演じる麻紀子の家に二人はしばらくご厄介。さらに、そこへ麻紀子の親戚の娘のふふみ(吉高由里子)が転がり込む。ふふみの手前、偽夫婦だった福原は麻紀子の旦那、そして、 文哉はその夫婦の息子を演じることに。この疑似家族がいい。赤の他人なのに、素晴らしい家族。そういえば、小泉今日子が出てた「空中庭園」という顔族をテーマにした映画を思い出した。そちらは実際の家族。中身はその裏腹。お出かけの際の小泉のもたもた度、いいなあ、リアリズムだねえ。
 ふふみのオマヨ大好きもよろしい。スキヤキにもオマヨ。エセ母も試してみる。意外といけると。エセ息子のスキヤキの上にもオマヨが。一口してエセ息子の不味くてかなわんという大袈裟な振舞い。そんなに不味いと思ったわけじゃない、大袈裟にしたかった。もう、エセはここにはない。この一家団欒に目頭が熱くなってくる。いつまでも続いて欲しい、団欒風景。でも・・・。
 お散歩の目的地はここではないのだ。麻紀子とふふみが料理をする。カレーを作っているのだ。最後に娑婆で食べたいものはカレーライス。福原が言っていた。最後の晩餐はカレーライス。ちっとも辛くないのに「かれ~、かれ~」と涙ぐむ文哉。まるで日曜日の夜の食事。これ以上転がれば月曜日が来てしまう。ブルーマンデイ。しかし、翌日二人は、最後のお散歩。麻紀子とふふみは、相変わらず、残ったカレーで、夕食のカレースパゲティの支度。ああ、切ないね。心憎いね。
 私の知り合いだが、かつて、ある転勤族が言っていた。新天地に行くたびに、必ず歩くって。知らない土地を知るのに、車であちこち回っても、その土地を何も知ることが出来ない。自分の足で歩かないと、その土地ならではのものは何も発見できない、と。かもしれない。車で移動するだけならカンタンだ。でも、視野は風景を舐めるばかり。自分の足でその土地を踏みしめる。いつの間にか、目の視野とは別に足の目が付いていて、日常という新たな世界が見つかるのだろう。そして、もしそれが一人でなく、二人で歩けば、それを共有することで二人の関係は密になるのだね。人生って、大袈裟なものじゃない。そういうものなんだろうね。
 私も転々しよう。地を踏み締める足が落ち葉の香りを嗅ぐ。一枚の黄葉を拾い上げ、人生の色合いを噛み締める。


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