2007-03-16 23:17:34

パフューム ある人殺しの物語

テーマ:映画

香りたつ 匂いの存在 永遠なれ 



 いやはやあ、久し振りに面白い映画を観させていただきました。「匂い」を存在のテーマにしたらしい、そんな曖昧な前置きだけで観に行ったので、どこの映画かも知りませんでした。まさか、これがアメリカ映画なら、アメリカもやるじゃんね、そう思って、後で調べたら、な、な、なんと、制作国はドイツ/フランス/スペインなんですと。だって、ドイツ語もフランス語もポルトガル語も喋ってないじゃないですかあ。そうかあ、三国共通というと、英語なのかア。
 全然話は、この映画とは違いますが、最近フランス映画とかイタリア映画とか東欧映画とか、どうしちゃったんでしょうね。ひょっとして、私たちが、どうしちゃったと思うだけで、恐らくは、がんがんいい映画、作っているのかもしれませんね。
 でも、映画館に人が入らないと儲からない、だから、多くに人が観てくれそうな映画、だから、日本で掛かる作品は、アメリカ作品と最近テレビと連携を図っている邦画、そして韓国と中国、そういう風に配給会社が絞っているのかもしれませんね。もし、そうなら、つまんないです。
 かつては、イタリアとか、オランダも、当然イギリスも、欧米なら、欧州の映画はいろいろあって面白かったですねえ。最近、金太郎飴が多いような気がします。配給会社さん、映画ファンを裏切らないで下さいな。
 して、この映画、ギャガユーセンさんですか、よく日本での上映、やっていただけました。ありがとうございます。ほんと、面白い映画。やってくれましたね、そういう感覚です。
 特に自分にとっては、この作品、涙がチョチョギレ的なんですよね。つうのも、人間って、こうなんだと思うもの。表立って、感動や感情って、最近整理されすぎてると思いませんか。ここに描かれている主人公への感情移入、本当に観た人、ありませんか!?
 題名どおり、パフューム、香りというか、匂いがテーマ、いやモチーフ。で、いきなり、18世紀のパリ、どうしようもなく臭い街。内臓やら蛆虫のようなものまでが映像で出てくる。その映像だけだけど、まさに匂いまでが劇場内に広がってきそう。そんな中で産み落とされた主人公ジャン=バティスト・グルヌイユ。彼自身が臭い存在。いや、そうじゃない、何も匂わないのですよね。これ、あとから、そういう場面が出てきますよ。じっくり観ててくだしゃんせ。つまり、存在感がないということです。その存在感の希薄さをベン・ウィショー、うまく演じてますね。
 そんな彼が、匂いの魔術師になる。その過程がまたよろしい。その師匠が、あの、つまんない映画には適当な出方をしなくなったダスティン・ホフマン。例え、儲けるために主人公の彼を必要としたかもしれないけど、彼を認めた唯一の存在だったのですよね。でも、つまんない死に方をします。前触れの建物の崩壊がありましたが、あっけなく崩れましたね。彼がこの映画にとって重要な存在かどうか分からない、それ自体が、主人公の存在不安に同化して、また面白いですね。もう、このあたり、この映画の仕組み、すんごく考えられてて面白いです。
 さて、それから、匂いを自らの生き甲斐として求めるものがいいですね。ペーター・キュルテンの話、手塚治虫氏も描いていましたが、それを想起します。その人間の生きる性がさせる人生でもありますが、社会的な反抗にも思える、そういう点が似ていますね。そういえば、花の代わりに人間が大きなシリンダー所の筒に入っているシーン、あれも、なかなかですね。手塚氏の「火の鳥」の未来編の生物創造を思い出します。
 さらには、そういった彼の人生の顛末を描きながら、彼自身の生き甲斐、その最終の香りの素材にレイチェル・ハード=ウッド演じるローラがいますね。そして、彼女までが結局餌食になります。他の女性が裸体で横たわるのに対し、彼女はベッドの上のシーツでうつ伏せシーン、余り悲惨さがないのは残念ですが、丸坊主は逆に凄かったですね。その父親リシ(アラン・リックマン)が徹底した解明をすることにより、犯罪者として死刑になりますね。はい、それだけでも映画としては成立するはず。死刑でおしまい、なのに、彼が作ったパフューム、そのせいで、死刑になるべき大衆の前で、彼はエンジェルになってしまうんです。人々からエンジェルだ、無罪だ、と言われる彼、何故かナザレのイエス、そして人々の宗教心をふと想起しました。
 さて、その死刑になるべき場所でのシーン、彼の作った香り、殺人を犯してまでも作った香水、これ、現在のパリ発のブランド化された香水を想起させますね。そして、作り手の主人公は、その香りの中でエンジェルに。腐った匂いでいっぱいのパリが、今では多国からどんどん、ファッションや芸術など、一種のブランドの芳しい匂いで幸福になる人たちがいっぱいですね。
 ほうら、人間って、こういうもんなんでしょうねえ。死刑執行の広場で、集まる人々がみんな、愛と平和の中で衣服も脱いで愛しあいます。もし、このエキストラも含めて大量動員の映像をグロテスクかつ馬鹿馬鹿しくに思えるとすれば、その映画そのものの設定を批判するのではなく、なんのことはない、パリ発で作られるブランドなるものの裏に潜む極めて曖昧な私たちの幸福、そう私たち人生が、おそらくそういうものに虜になっていることで上手くいっていることをちゃんと顧みるべきでありましょうね。私だって、愛しい人の記憶には、なにかしら匂いとしての記憶が脳味噌ではない場所に残っていますしね。
 それにしても、広場の群集シーン、なんとも、イタリア的な風刺も感じられ愉快なシーンでもあります。が、その大衆の愛と平和の営みに何故か悲しくも涙が零れます。広場の空気に流れる香りが匂ってくるからでもありましょう。主人公が死刑執行されるよりも、こちらの方がより以上のどうしようもない涙でもあります。
 そんな非現実的な銀実を置いてきぼりにしながら、主人公は自らの拠り所であるはずの懐かしの故郷、悪臭に満ちたパリへ戻ります。今では花の都といわれるパリです。
 彼が始めて、崇高な香りを求めながら永遠を手に入れるために一人の女性に接近した映像が再度甦ります。ああ、この彼女、誰ですか。役者としての彼女の情報が入りません。残念です。そりゃ、ローラの方がいい、そういうのは分かります。でもね、この時に、やっと分かるんですね。自分自身が存在の香りがしないことに対し、自分が求めて一人の女性の匂いを嗅ぎつけた、それは、おそらく生みの親が逃げて不在であることによる、自分のアイデンティティとしての母親代わり、それがパフューム、自分にとって最も匂いの最終形であったもの、それが、一番最初に出会った彼女であること、そうしたことがいっぺんに理解できてきましたよね。
 そして、主人公本人もそれを納得した時、つい涙を流すんですね。はじめて、自分を人間だと思うんじゃないでしょうか。それとともに、彼自身が、そんな初めての彼女、それと同じ存在になるべきだと判断したんではないでしょうか。
 彼が戻ったパリの街角では、彼が創りあげた永遠の香り、それを自らの頭上から振り掛ければ、まるでマルミヤのノリタマをかけたご飯を漁るように、人々は愛と平和の安らぎ求めて彼に群がります。よっぽど、愛すべき美味しそうな匂いが彼から立ち込めていたんでしょうね。
 そして、彼は身も心も骨もすべて、みんなに食べ尽くされるわけです。いやあ、なんと象徴的で存在論的な結末でしょうか。また、そこで、ひとしお涙が零れます。
 こんな映画、ほんとに久し振りです。こんな面白い映画、ほんまに久し振りです。こんな面白い映画が世の中にいっぱいあるのなら、もっと私たちに紹介してくださいな。そうでなければ、映画は単なるテレビで終わってしまいます。劇場でお金を払って観たいのは、こういう映画なんですね。
 映画に携わる人たちへ、映画が好きな人に応える映画、もっと紹介してくださいな。映画ファンは、この「パフューム」を待ち望んでいるんですよ。

AD
いいね!した人  |  コメント(3)  |  リブログ(0)

shisyunさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントをする]

3 ■今まで感じたことのない面白さ

shisyunへ

実は、ずっとこの映画のコメントを書きたかった。
でも、shisyunのブログはどんどん更新されるし、次から次へと書きたいコメントは出て来るし、shisyunからのコメントの返信はスローだし、なかなか書き込むことができなかった。

あっ、別にスローであることを責めておるわけではないんじゃよ。
shisyunがマイペースでコメントを返すなら、わしもマイペースで書かせてもらってもいいのではないかということ。

まずは、本文よりも、↑のコメントから

>>「パフューム』の最初の犠牲者のプラム売りの少女、私も気になっているのですが情報が無いですね。
>
>でしょでしょ、私も気になって気になって・・・。

わしも同じことを思ったけど、単に映画の予告編で繰り返し観ていたために、「どこかで観たことのある女優さん」になってしまったんじゃなかろうか。

さて、本文を読ませてもらったけど、shisyunの興奮が伝わって来るようなレビューじゃった。
わしも、この映画は本当に面白いと思った。
今まで感じたことのない面白さじゃった。

しかし、shisyuのレビューを読んで、映画に対する自分の読みが足りんなあと感じたのは、

> それとともに、彼自身が、そんな初めての彼女、それと同じ存在になるべきだと判断したんではないでしょうか。

この解釈はお見事。
わしは、何故、あそこで彼が香水を振り掛けたのかわからなかった。

広場で大多数が裸になるシーンで映画が終わっても良かったのに、まだ続きがあったのは、shisyunの解釈の通りなんじゃろうね。

実は、わしも、広場で大多数が裸になるシーンが気に入った。
どこかのサイトで、あの壮大なシーンのメーキング映像を見たけど、何であのシーンが気に入ったかわかった。
わしは、自分と他者との区別がなくなっているから気に入ったのだと感じた。

2 ■masalaサマ

>「パフューム』の最初の犠牲者のプラム売りの少女、私も気になっているのですが情報が無いですね。

でしょでしょ、私も気になって気になって・・・。
・・・、あ、あれプラムなんですね。キンカンかと・・・。キンカン塗って、また塗って・・・。失礼しました。

1 ■TBありがとうございます。

こんにちは。
「パフューム』の最初の犠牲者のプラム売りの少女、私も気になっているのですが情報が無いですね。
どこかで見た事ある顔なんですけどね。
またお邪魔します。

コメント投稿

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。