恋愛小説 坂道の少女

テーマ:
沢田聖子forever


3年間、毎朝行き交う少女がいた。

帰りは、活水女子大のお姉さんたちで賑わうオランダ坂も、朝はひっそりとしていた。

高校入学当時から、毎朝同じ時刻に同じ場所ですれ違う。
ただそれだけの関係だった。


毎朝すれ違うだけだが、最初と今は微妙に違う。

ただ、黙ってすれ違っていた頃、
目礼を交わし始めた頃、
そして笑顔ですれ違うようになり、
今ではおはようの声を掛け合うように。

だが、今でも名前も知らない者同士、
ただ行き交うだけの関係。


僕は何時しか、少女に恋をした。

坂道の少女…

僕は少女をそう呼んでいた。



「おい、碇!お前誰ば好いとっとや!教えんね!」

いきなり、親友の森に問い詰められ僕は答えに窮した。

「なんで隠しよっとや!おいたちは、親友やろが。」

意を決して答えた。

「やかましか!おいが、誰ば好いとってもよかやろが!ほっとかんね!」

「なんねー。けちかねぇ。ああ、よかばい!そげんこと言うとなら、よかこと教えんけんね!」

「なんね?よかことって!教えんね!」


親友の森は、実の所僕が誰を好きなのか知っていた。
密かに、坂道の少女の名前を調べてそれを僕に教えてくれた。
持つべき者は、良き友だ。


卒業が間近に迫り、僕は遂に決心した。

告白…する。


ある日の朝。

少女がいつもの笑顔で坂道を下ってくる。
僕は、大きく深呼吸して一気に言った。


「ずっと好きでした。これ、読んで下さい。」


人生で初めてのラヴレター。


少女は、ハニカミながら…


「ありがと…」


そう言って、手紙を受け取り、駆けて行った。














次の日から、

坂道の少女と行き交う事は、

二度となかった。


休題
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