閑話 天使 #4

テーマ:
夕陽に染まる遊歩道


佐知と正史は、
無言の儘歩いていた。


周りに人影がなくなり、
佐知はやっと落ち着きを取り戻した。


「あの、…ありがとう、…?」


まだ名前も知らない。


「ああ、そうだね。自己紹介もまだだった。」


正史は手を差し出しながら、


「白河正史です。宜しく。」


微笑みを絶やさず言った。


「三日月佐知です。」


手を握り返して応える。


不思議な感覚だ。


まるで昔からよく知っている手の感触。


「あの、… 前、何処かで会った事が…」


「ああ…まだ思い出せないんだ?」


「えっ?」


ふと、

遠い記憶…

そう、

遥か昔、

まだこの地が楽園だった頃


【会った事がある。】


佐知は、
自分でも信じられない記憶の情景を、
瞳の奥に映し出していた。


「あれ?思い出しちゃった?」


正史の笑顔から、
暖かさが消え氷の様な冷たさが顔を覗かせた。



「それは、マズいなぁ~。もう少し楽しみたかったのに。」



佐知は恐怖で体中の血液が逆流するのを感じた。


正史はいきなり佐知の首に手をかけ、容赦なく力をこめる。


殺人鬼は正史だ。


【でも…、正史からは悪意が全く感じられないのに…。】


「ははは…。当たり前じゃないか」


薄れゆく意識に正史の笑い声がこだまする。


「またな、ミカエル。ガブリエルとラファエルは先に行ってお前を待ってるさ。」


佐知は全てを思い出した。


【私はミカエル。三大天使の一人】

天使は私だった。正史ではなく…。



こいつは…、

ルシファー。

堕天使…、

悪魔だ。


悪意が無いんじゃない。


存在そのものが悪だったのだ。


薄れゆく意識の中で、ミカエルはこの世を憂いた。


ルシファーが君臨するこの世を…。


休題
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