香織にはアイツたちが見えている。
危険すぎる…香澄の両親も強い力を持っていた。持っていたが為にこの世に留まれなかったのだ。
あちら側の力に引き寄せられある日突然姿を消した。
香澄は初めて自分の血筋を呪った。

(もうここにはいられない!)

香澄は出て行く事を決心して、アイツたちに悟られないようにさり気なく貴重品をバックにしまった。
その夜は部屋の中に残っていた数人…のアイツたちの気配に注意しながら香織を寝かせ付け自分も寝たふりをして夜が明けるのを待った。

夜が明けるとすぐに香織に身支度をさせ、外で朝食を済ませて幼稚園へ送り届け自分は金策へ走った。
夕方までかかって、なんとか金策が上手くいきホッとしながら香織を迎えに幼稚園に着いた時、香澄には絶望が待っていた。

「こんにちは。何時もお世話になります。」

「あら?川原さん。どうされました?」

「はあ…。あの香織を迎えに伺ったんですが…。」

「えっ!香織ちゃんなら、もう帰りましたよ!」

「どういう事ですか!!誰が香織を連れて行ったんですか!!」

「あ、あの、いえ、誰かが連れて行ったんではなく、香織ちゃんがシロー君と云うお友達と一緒に帰ると言うもので…。」

「そ、そうですか…。すいません、その四郎君のお宅を教えて頂けますか?」

「えっ?うちの園の子ではありませんよ!」

「なんですって!じゃあ、一体どこの子なんですか!」

「そ、それは…わかりません。」

「そんな、無責任なー!!」

香澄は先生に善後策の相談をする事もなく、とにかく自宅への道を脱兎の如く走り出した。

四郎君……しろー……死霊!
香織が鏡に向かって笑った…その相手が…お友達が出来たのって…。

「うそーー!!」

走りながら絶叫した。
【逃げたら、その子はもらう。】

「やめてーー!!」

恥も外聞もなかった。泣きじゃくりながら走り続けた。
全力でマンションの階段を駆け上がり自宅のドアを開けた。

「香織ーー!!」

居間の襖を開けた時、壁にあの文字が浮かんだ。

【お前がわるいんだ~】

「キャーー!!」

香澄は有らん限りの力を振り絞り叫び続けた。
香織の消息は絶えた。

その後香澄はこの部屋から越す事はできなかった。香織が帰る部屋はここだけだから。
部屋中に目張りをして気配に怯えながら、部屋の隅で息を潜めてじっと娘の帰りを待っている。

アナタのそばにも…ほら、後ろに…。

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