三茶狼のクリスマス



三茶狼の誕生日は  こちら


続・三茶狼の誕生日は  こちら




私はみんなから、三茶狼と呼ばれ恐れ…忌み嫌われている。

こら!

三茶楼ではない!

中華屋じゃない!

狼だ!お お か み と書くのだ!


この道では、知る人ぞ知る偉大な…伝説的人物なのだ。



しかし、そんな私も毎年誕生日が近くなると気が滅入る。

どんなに人に恐れられ…私が歩くと川が割れたように人並みが一本の通り道を作る。

私が睨むだけで、人々は縮み上がり、私が怒鳴ると人々は地べたにひれ伏してしまう。

そんな私でも…

いや、そんな私だからこそ、毎年の誕生日を傍で祝ってくれる人が誰ひとりいない。

これは、結構キツいもんだ。



・・・・等と毎年誕生日に愚痴を言っていたら、ちょっとした商売仇を消した次の年からそいつの女から毎年ナイフでブスりと血染めのお祝いを貰うはめになってしまった。

最初の年はまあ、俺も後ろめたい気持ちもあって警察沙汰にはせずそのまま放っておいたがさすがに2回目は(ちょっと重症で意識を失った事もあり)店の主人が警察に通報して、その女はお縄になってしまった。

もっとも俺としては警察なんぞに関わる気は無かったのだが、行き掛かり上止むを得ずといった感じで事情聴取に応じたのだ。

しかし、これがまずかった。

叩けば埃が出る身の上としてはやはり警察沙汰は避けるべきだったのだ。

事情聴取の途中から雲行きが怪しくなり、最終的にはこっちもお縄を頂戴するハメに陥ってしまった。

警察署の廊下ですれ違った奥菜の女が俺を見て甲高い笑い声を上げるのを俺は苦々しく睨みつけるしか無かった。

俺を刺した奥菜の女も、刺された俺も仲良くブタ箱で3年を過ごす羽目になった。


3年ぶりに戻った三茶は殆ど変わりが無かった。

相変わらず昼と夜では違う顔を見せる。

勿論、俺の住む世界は夜の顔を見せた三茶だ。

夕暮れを迎えた三茶の街を悠然と歩いた。

そこ、ここから懐かしい奴らの挨拶が飛んでくる。

しかし今日はいつもの三茶の夜では無かった。

クソ忌々しいクリスマスだったのだ。

街はカップルで溢れかえり道端でイチャつくばか者だらけだった。

けったくそ悪い、3年振りでシャバに戻った俺を待っていた女は一人も居なかった。

まあ、自業自得だと言われればぐうの音も出ないが、結構いい思いをしていた女どもが懲役をくらった途端に蜘蛛の子を散らすようにこの三茶から姿を消して誰も居ないとは・・・・

まあ、そんなこんなで侘びしく一人で一通り街を歩いて最後は行きつけのバーに立ち寄るしかなかった。




(チャリン…バタン)


「おー!久しぶりですね~ダンナ!」


「ちっ!この店は客にいらっしゃいの一言もねぇのか!」


「あはは…いらっしゃーい…なんにしやすか?」


「バーボンだ」


「はい…。」


「どうだ景気は…。」

「ええ…ダンナのおかげでボチボチです。」


「ダンナはやめろ!」


「あ、すいません!ちょっと癖で…藤田社長のおかげでボチボチ儲かってます!」


「チッ、俺のおかげって・・・それは嫌味か!」


「いやいや、そんな。ここいらは社長の威光だけでもってるようなもんですよ!ホントです!・・・ところで、暗い顔してますがなんかあったんですか?」


「…いや、別になんでもない。」




その時、店のドアが開き誰か入って来たようだった。

私はいつもなら、決して注意を怠らない。

しかし、今日はやっぱりどうかしていた…。

その人物が背後に近づくまで全く気がつかなかった。



「ふじたー!Merry Christmas!」


ん?クリスマスを祝ってくれる…しかも女の声だ。


私はゆっくり振り返った。



《ブス!》



鈍い小さな音が腹部からした…。


<うっ!!まさか・・・・>


「ふじた~!出所おめでとう!・・・どうせクリスマスも誰も一緒に祝ってくれる人なんか居ないだろ~!私が祝ってやるよ~!!ほら!ナイフでクリスマスケーキ切ってやるよ~!!」


《ブス!》



またしても床が私の鮮血で染まった。



「うっ・・・・く・・・・・」


「キャハハ・・・Merry Christmas!!ふじた~」



また奥菜の女だ・・・・くそ・・・まさか先に出所していたとは・・・

・・・しかし・・・まあ・・・確かに祝いの言葉を掛けてくれる女は誰も居なかったな・・・・



「・・・・く・・・・そうだな・・・・メリークリスマス・・・・」



女の笑い声を聞きながら私の意識は遠くなった・・・




閑話休題


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